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選ばれたのは、密入でした。

「なんだ?」

「行き先は何処なんだ?」

「ああ、そういやノクターンにしか言ってなかったな」

 

 クレイは盾を横に置き座り直して答えた。

 

「アオゾアだ」

 

 アオゾアは、山脈近くに位置している大きな街だ。

 別称空の街とも言われ、ここから山脈を越えるための飛行船を飛ばしているのが由来だった。

 クレイの答えに納得したが、話を聞いていたジルハが疑問を投げ掛けた。

 

「山脈越えの為ですよね?でもそれは危険じゃないですか?」

 

 一旦納得はしたものの、ジルハの言葉で何故なのかと俺はジルハに訊ねた。

 

「なんで?」

「アオゾアの空の港は所謂隣の地域との行き来が出来る関所なようなものです。そこは警備が厳重で、教会関係者も多く利用するのでディラさんが利用とするのは危険だと思うのですが」

 

 教会の単語で俺の体に拒絶反応が出た。

 なぜそんな危険な場所に向かっているのか。

 俺はクレイに当然ながら抗議した。

 

「俺そんな危ないところに行きたくないよ!」

「まてまて、早とちりするな」

「じゃー、どういう意味だよ。ニンジンでも納得できる答えじゃなきゃ自分も反対だぞ」

 

 ドルチェットがどういう意味だと質問すれば、クレイは地図を鞄から取り出して広げた。

 

「正確に言えばアオゾアの周辺に用がある。山脈を越えるのは間違っちゃいねーが、その手段が違う。そもそもリーダーのオレが仲間をそんな危険な事をするわけ無いだろう」

 

 この言葉に俺は安堵した。

 もうあんな事はこりごりだ。

 

「じゃあなんだ?抜け道でもあるって言うのか?」

 

 ドルチェットがそう言えば、クレイは「いや」と否定した。

 じゃあなんだとクレイの次の言葉を待っていると、クレイは今まで見た中で最も悪そうな顔でこう言った。

 

「昔の伝を使って、密入するんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 途中の町や村で依頼をこなしながら南下していく。

 ついでに制作したアクセサリーも試しに売ってみれば、手軽に町に出掛けられない村人達に飛ぶように売れた。

 やはり手に職は持っておいて損はないらしい。

 

 

 

 

 

 数日降り続いた雨も止み、ノクターンがロエテムに御者が務まらないか実験をしている最中、突然馬車内で変な音が鳴り響いた。

 

 当然の異常事態にみんな武器を手に警戒体制を取る中、俺だけは何故か音の出所を必死に探していた。

 ある意味それは反射的な行動だった。

 何故ならその音は俺のスマホの着信音に似ていたからだ。

 

 耳に手を当てて必死に探し、それが自らの鞄からだと気が付くと、すぐに鞄をひっくり返して中のものを出すために振った。

 そんな事をしなくとも手を突っ込めば目的のものは出てくるのにひっくり返たのは、あり得ない現象に軽くパニックになっていたからである。

 振っている途中でその事を思い出して逆さのまま鞄の中に手を突っ込むと、鞄から小さなものが落下した。

 

「何か落ちたぞ」

 

 その落ちたものをアスティベラードが拾い上げた。

 音はそれから鳴っている。

 

「ほれ」

 

 アスティベラードに手渡されると、音が止まった。

 

「おい、なんだよそれ」

「……さぁ。なんだろう?」

 

 ドルチェットに訊ねられても俺も知らないので答えられない。

 音の鳴っていた物は見たことのないアクセサリーだった。いや、魔石が付いているから魔道具だ。

 しかし、なんだろう。と、俺はその魔道具をまじまじと見つめた。

 

「指輪?……にしては余計なものが付いている……。なんだこれ??」

 

 リングのようなものが二つで、そのうちの一つはピアスのような飾りが付いている。おまけにそのリングは細いチェーンで繋がっていた。

 なんとなく指に嵌めてみようとしたが、小さくて付けられない。

 それを見ていたドルチェットが一言

 

「…………、…イヤーカフじゃね?」

「なるほど」

 

 試しにそれを耳に着けてみると馴染んだ。

 とするならば、きっと耳や感覚系の補佐をしてくれるもの。

 何か起動するスイッチがあるはずだと右手でサワサワ触っているとまたしてもコール音。

 

「うお!?」

「どうした?」

 

 だが、今度は俺にしか聞こえていないようだ。

 何がスイッチだとイヤーカフに触れると、コール音が止んだ。

 

「もしもーし」

「『はーい!やっと出たね~!』」

 

 俺が予想していた位置ではなく、予想外の方向からマーリンガンの声が聞こえてきた。

 

「『やあ!』」

 

 すぐ目の前の床に、500mlペットボトル程の大きさの半透明かつ水色がかったマーリンガンが出現していた。

 予想外の小型マーリンガンにみんなが驚いて慌てて後ろに下がる。

 

「…なにしてんのマーリンガン」

「『ええー、感想ひどーい。せっかく君のところで言うホログラムを使ってみたんだけど、どう?』」

「なんだホログラムか」

 

 それならば恐れることはないと俺がマーリンガンの前に座り直すと、危険ではないと判断したみんなも座り直す。

 

「これも魔法なのか。すげーな」

 

 クレイは感心し。

 

「妖精かと思いました」

 

 ジルハは勘違いし。

 

「触れるのか!?これ!触れるのか!?」

 

 アスティベラードは興味津々で。

 

「うおおおお!!透けるぞこれ!!」

 

 アスティベラードが触れる前にドルチェットがミニ・マーリンガンに平手打ちもどきを仕掛けて空振りしていた。

 そしてそんな様子を御者として手が離せないノクターンが遠くからチラチラと見ている。

 

「『ふむ。動作確認は大丈夫そうだ。ノイズはないかい?』」

「オッケーだよ。にしてもなんでこんなの入れたのさ」

「『なんでって、これならどんなに遠くても分からないことがあったら相談できるだろ?お手軽マーリンガン電話相談~♪」」

 

 ホログラムのマーリンガンが歌いながら踊り始めたが、もしや、ツッコミ待ちだろうか。

 


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