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ゲームでは通常仕様である


 窓の外は既に夕暮れ。

 作業を終えて寝台に横になってまだかまだかと寛ぎながら待っていると、ようやく依頼を終えた皆が帰ってきた。

 扉が開くと同時に俺は飛び起きて労いの声をかけた。

 

「お帰りっす」

「おー、ただいまー」

 

 最初に入ってきたのはクレイで、次にドルチェットが「稼いできたぞ!」とクレイを押し退け入ってくる。

 リーダーに容赦ない。

 

「おいほら、見ろよこれ」

 

 ドルチェットが勝手にクレイの鞄から報酬を引っ張り出して見せてくる。ついでに手に乗せられると、見た目とは裏腹にずっしりしていた。

 紐を解いて中身を見て、すぐに閉じた。

 相当な大金だ。

 

「すごいね!何狩ってきたの?」

 

 一度の依頼でこんなに稼ぐのなら、恐らく大物かとてつもなく厄介なものだろう。

 得意気なドルチェットが答えた。

 

「ネヴェだぜ」

「うわ、めんどくさかったでしょ」

 

 別名カマイタチモドキ。

 複数の足と鎌の前足を持った大型のタヌキで、狼のように群れで行動するモンスターだ。

 一体一体はさほど驚異ではないが、タワレアルのように群衆になると一気に危険度が増す厄介モンスターの一つだった。

 群れでも三体一組で行動し、一頭目が体当たりで獲物を転がすと二頭目が鎌で刺して三頭目が毒液を吐き出すという素晴らしきチームワークで、しかもそれが四方八方から来るので嫌いだった。

 なるほど、ネヴェなら厄介枠で稼げる。

 ブリオンでも厄介なモンスターだったけど、最終的にはウザイ蝿的な存在に収まるのだが、何せここの世界でのレベルはだいぶ初期で止まるので、ウザイだけで終わらないのが辛いところ。

 だけども、マーリンガンの元でレベルを上げた皆は違った。

 

「そうでもないぜ!アスティベラードのクロイノが尻尾で転がして遊んでただけだったからな」

「……あー」

 

 なら納得と俺はクロイノを見た。

 小型化してはいるけれど、それなりにデカイ体躯で首を「なに?」と言いたげに傾けている。可愛い。

 

 クロイノには今のところ影化と実体化の二パターンができる。

 影は全攻撃無効化に相手の魔力を全て奪うという恐ろしいモードと、攻撃は当たるけれど、その代わり攻撃力が鬼みたいにヤバいモードの二種類。

 この世界の生き物は魔力と生命力が連結していて、魔力が枯渇すると生命力が吸われる。

 しかも一気に吸われる量が多いと気絶するから抵抗もできずに生命力も残らずクロイノに吸い尽くされる。

 良かった。クロイノが味方側で。

 

「私のクロイノの敵ではなかったわ!」

 

 鼻高々のアスティベラードが二メートル程に小型化しているクロイノを撫で回しながら答えた

 後で撫でさせて貰おう。

 

 荷物を片付けてきたクレイが戻ってくる。

 

「そっちの進捗はどうだ?」

 

 クレイに訊ねられ、俺は傍らに置いてある鞄の蓋を開き手を突っ込んだ。

 

「んー、とりあえず……」

 

 鞄から作りかけの馬を引っ張り出したら「うわっ!」とみんなから驚愕の声が上がる。

 それにお構いなしに次々に馬の部品を取り出して床に並べた。

 頭、耳、首の付け根、首、首の付け根、肩回り、胴体、お尻、足の付け根、脚の細かい部分、尻尾の付け根、毛は売っていた馬の毛を使った。使った材木が濃い灰色の木だったから、明るい馬の毛が目立つ。

 

「こんな感じかな。まだ基礎だからもう少し改良しないといけないけど」

「その鞄の容量おかしくないか?」

 

 ドルチェットに言われ、ごもっともであると頷いた。

 

「うん。俺もそう思うんだけど、普通に入れてみたら入っちゃったんだよね。これ、マーリンガン製だし」

 

 駄目もとで試してみたら入ってしまったのだ。しかも重さも変わらないから便利である。

 「ほら」と実践して見せたら、ドルチェットはスンと真顔になった。何を考えてるんだろうな。

 恐らく入り口で難なく入ればどんな長さのものも入れられそうで怖くはある。


「まぁ、こんな感じでございますー。ちなみに組み立てはこうね」

 

 接続部にある留め具を連結させていき、最後に馬の毛、飾り毛を装着して完成。

 見た目は荒いけど、これから細かく調整していく予定。

 その馬を見て皆が口々に感嘆の声を漏らす。

 

「スゲー、思ったよりもちゃんと馬じゃん。な、キャベツ」

「確かに馬だな」

 

 ドルチェットとクレイが色んな方向から馬を眺める。

 

「今にも嘶きそうだ」

「わぁ…」

 

 お腹側で仁王立ちして観察するアスティベラード。

 その影から覗き見るノクターン。

 

「へぇ、良いですねこれ。完全に結合させないのはやっぱりバラバラに出来るように?」

 

 そして連結部を興味深げにしていたジルハ。

 よくぞ気付いてくれました。

 

「そう。何かあった時にすぐに分解できた方がいいかなーって思って。それにパーツ一つ一つだけだったらギリギリ鞄に入れられるし」

 

 俺がジルハに説明している横でドルチェットとクレイがボソッと言った。

 

「ていうか、馬を持ち歩く発想なんて無かったぞ」

「どっから出てきたその発想」

 

 それに俺は笑う。

 

「あはは、だよねー」

 

 とは言いつつブリオンでは乗り物(馬含め)は持ち歩けるんだよなぁ。


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