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追い掛けっこをしてみました

「……あ」


 順調に作っている途中で、結束部分に使う部品が切れた。


「あちゃー、買いにいかなくちゃ」


 昨日行った道具屋で見掛けたからあるのは知っているのだが、わざわざ町に行くのがめんどくさい。

 けれどこの部品が無ければ完成はしない。


「よいしょー」


 再び【隠密】を発動し、財布と弓を持って俺は町へと向かった。






 フードを被って【隠密】を発動しているから、それに対するスキルが無ければ“ディラ”だと特定するのは難しい。

 何でもない一般人と認識されれば害されること無く過ごすことが出来る。

 が、一つだけ例外があるとするならば、強くなさそうな一般人をターゲットにしている場合だろう。


 ドスンと前方からやってきた男に肩をぶつけられて俺は軽くよろめいた。


 む、と男を見れば、男は「すまんすまん!急いでて!」と言い訳しながら小走りしながら去っていく。

 それだけならまだ良いが、次の瞬間、俺の千里眼が特定条件発動をした。

 千里眼は男をマークして居場所を知らせている。

 特定条件発動とは、ある条件が満たされた場合にのみ、自動で発動して敵をマークして追跡出来るようにする事だ。

 ちなみに条件とは、俺にとっての大切な物が第三者によって紛失する、こと。


「……」


 俺は何となくポケットに手を突っ込んで納得した。

 村人の証と、財布をスられていた。両方とも俺にとっては大事なものだ。

 まったく、なんでこの世界はこんなにも治安が悪いんだ。

 早速、【身体機能向上】を発動すると、男の追跡を始めたのだった。





 ◼️◼️◼️





 ヒィヒィと男が躓きながら逃げ惑う。


「なんなんだ!なんなんだよ!!」


 いつも通りの完璧な仕事だった。

 一目で分かった。弱い奴だと。なのに、どうしてこの俺が哀れな虫のように追い回されているんだ!!!






 男はスリ師だった。

 人混みに紛れて、盗れそうな奴からひょいと盗む。

 そうして生きてきた。


 今回の獲物はパッとしない貧相なガキだった。

 いっちょまえに弓を持ってはいるが、筋肉のない腕を見れば駆け出しだってのはすぐに分かる。

 おまけにフードを深く被って気配が薄ければ、絶対に反撃してこない良い鴨だと踏んでちょろまかしてやった。

 異変に気が付いたのはすぐだった。

 標的にした奴の気配が薄くなったところで戦利品を確認するのだが、どんなに足を進めても一向に薄まる気がしない。

 いや、むしろこれは濃くなっている。

 濃くなっている理由は明白。

 追ってきている証拠だった。


「チィッ!」


 生意気にも追跡を出来るらしい。

 だが、と男は笑う。

 こちとら伊達に長くスリ師をやっていない。

 痕跡を残さないように人混みに紛れて気配を分断し、すぐさま裏道へと潜り込む。

 ここは迷路のように入り組んでいて、地元民でも慣れてなければ道に迷う。

 これで安心だと足を緩めた。その時。


「ねえ」


 すぐ後ろから声がした。

 ゾワリと背中が総毛立つ。


 気が付かなかった。いつの間に追い付いていたんだ。


「そろそろ返──」


 近くの乱雑に積まれていた積み荷を蹴り倒して男は駆け出した。

 うお!と後ろで声がした。当たっていればいいが。

 男は本気で逃げた。

 あまりにも予想外すぎた。

 読み違えた?あんな弱そうなガキだったのになんだこの気持ち悪い感覚は。

 男は更に難解なルートを駆け抜け、逃走するのに専念した。

 男の勘が警鐘を鳴らす。捕まればきっとただじゃすまない。


 塀を飛び越え空き家を通過し持てる手を持って男は逃げぬいた。




 どのくらいの時間逃げていたのだろうか。

 足は鉛のように重くなり、激しく息切れをしている。

 だが、ガキの気配は完全に消えているのを確認すると、男は安堵の息を吐いた。

 良かった、これでもう安心──


「!!!!?」


 再びの悪寒に男は勢い良く振り変える。

 だが、其処には何もいない。

 早鐘を打つ心臓を他所に、気のせいだと思い込み前を向いた。


 心臓が止まるかと思った。

 男の目の前には、完全に巻いたはずのガキが困った顔で立っていた。


「いい加減返してくんないかな?買い物したいんだけど」


 男は身を持って痛感した。

 容姿で侮ってはいけない類いの者もいるのだと。





 ◼️◼️◼️





「傷付くわぁー」


【千里眼/見通し】のマークを追い、屋根を使ってショートカットしてくれば、男は俺の顔を見た瞬間に悲鳴をあげて気絶してしまった。

 まるで幽霊か化け物を見るような顔だった。

 俺が一体何をしたってンだ。

 そう思いながら男の身ぐるみ剥ぎながら探すと、一番下の服の隠しポケットに財布と村人の証を発見した。


「あーあ、無駄な時間使った。早く買って戻らなきゃ」


 気絶した男をそのままに、俺は道具屋で必要なものを買い揃えると、中断していた作業を再開したのであった。



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