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訓練終了です


 ビグ・マネーバを放り投げると、すぐさま膨張して見たくもない相手の姿へと変貌していった。

 ムクムクと大きく膨らんでいく液状の塊が周りの空間を触手で撫で回しながら把握していく。


 レベル88、呼び名ハッパちゃん。

 正式名、ランダンウォラー・スライム。


 何回やっても勝てない立ちはだかるレベル88の壁だ。

 なんせこいつ、斬撃無効、打撃無効、自動高速回復、分裂、形状変化、状態変化、弱点変化、さらに数種類の毒や魔法持ちで、倒すには小さくなるまでひたすら炎や氷などでちょっとずつ外壁を削り切って中の核(半透明)を破壊しないといけないというとんでもない強敵なのだ。


【千里眼】でもとらえきれない動きとか反則過ぎて此処で躓くもの多数。

 俺もその一人である。


『ゴポッ』


 スライムがこちらを確認した。

 うねうねと波打ちながら眼球の役割の核をこちらに向け始めた頃合いだ。


「さて、今回はどのくらい削れるかな?」


 戦闘開始だ。










「お前のそんな姿始めて見たぜ」


 ドルチェットが洞窟前で死んでる俺の姿を見下ろしながらそんなことを言ってきた。

 見た目的にはピンピンしているが、心は致命傷を負っていた。


「勝ったのか?」

「………負けました…」

「珍しいなおい」


 最近レベル下ばかり戦っていたツケなのか、動きの予測が遅れ、隙を突かれて今まで以上に酷い目に遭った。

 窒息との戦いは止めてくれよ…。

 相性最悪なんだから…。

 ゲームでは酸素残量でしか体感し得ないこの窒息。リアルではガチであるがゆえにただただ恐怖でしかない。

 トラウマになりそうではあるが、これを克服しなければ次のレベルには上がれない。……窒息を克服できるのか?


「風呂でも入ってくれば?マーリンガンが大浴場に更に手を加えてたぜ」

「うん、行ってくる」


 ドルチェットのありがたい助言に俺は気分転換の為にマーリンガンが特別に作ったという大浴場にむかった。







「露天風呂じゃん、すげえ」


 一面竹に覆われ、空は満点の星空。

 何故か鹿威しでお湯を注ぐという謎装置が付いていたが、恐らくこれはマーリンガンが俺の記憶を見て面白そうだからと作ったのだろう。


「……魔法使いも楽しそうだな」


 こんなに色々出来るのなら一度くらいなっても良いものだと考えて、内心首を横に振った。

 呪文が覚えられないから無理である。






 風呂から上がると、何故かエクスカリバーの模様が変わっていた。

 リム(弓の特にしなる両端の部位)に鳥の羽のような模様が薄く入っていた。

 マーリンガン何かした?それとも今まで見逃していただけだったのか。

 首を傾けながらも着替えた。


 昼ご飯食べに皆の元へ行くと途中でノクターンのパペットらしきものと遭遇し、俺は思わず二度見した。がっつり改造されていたのだ。

 これ、もう人形というか鎧一式だった。背丈も普通の人間っぽい。しかも近くにノクターンが居ないのにも動き回っているのも不思議だった。

 やっぱりノクターン、魔術師よりも人形使いのが向いているんじゃないのか?


 いつも食事を取る部屋に行くと皆もう揃ってシチューを食べていた。

 こちらに気が付いたアスティベラードとクロイノが此処に座れと空いている席を指差す。


 一汗かいて食べるご飯は最高で、一心不乱に掻き込んだ。


「さて」と、マーリンガンが話し出す。


「これで僕が出来ることは全て終わった訳だ。その選別としてみんなの武器をちょっと弄って性能を向上させておいたよ」

「ありがとうございます。何から何まで…」


 クレイが頭を下げる。


「いやいや、こっちこそうちのアホ(ディラ)が迷惑を掛けてしまっているんだ。これくらいなんでもないさ」

「いえいえ、こちらこそ」


 いつの間にかマーリンガンは俺の保護者になっていたらしい。


 それぞれお礼をし、クロイノがマーリンガンにゆったりと尻尾を振っていた。

 クロイノは特に何か変わったようには見えないけれど。


「ほら、トクルもお礼をいうのだ」


 アスティベラードがお礼を促すと、トクルはケイケイと鳴いた。

 こちらも何か変わったのかよく分からなかった。


「俺のエクスカリバーもありがとね」

「ん?君のエクスカリバーはなにもしてないよ。そもそも神具は弄れないし」

「え?」

「え?」


 エクスカリバーを取り出して、模様を見せる。それに対しマーリンガンは僕じゃない僕じゃないと全否定してきた。

 じゃはこれは一体…。

 じっとエクスカリバーを凝視する。

 相変わらずの不思議武器過ぎてそういうこともあるのだろうと納得することにした。


「これで聖戦の準備は整ったけど、改めてみんなに確認をしておきたい」


 マーリンガンがいつにもなく真剣な顔でみんなに訊ねる。


「強くはなったけれど、死ぬ可能性も十分ある。最後まで五体満足でいられる保証だって無い。それでも、ディラに付いていくかい?」


 その質問にみんな顔を見合せ頷くと、クレイが答えた。


「今さら降りるわけ無い。それに、ヤバイことに首を突っ込んでいるのはすでに理解しているし、このバカが拉致られた時も、寝込んでいる時も散々話し合ったんだ」


 クレイの腕が俺の首に回される。


「乗り掛かった船だ。最後まで付き合うさ」

「みんな…」


 クレイの言葉に思わずうるっと来た。

 良い仲間に恵まれたと思う。


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