レベル40
訓練の最中は、みんなマーリンガンの作った謎空間である炎の中の部屋に増設された寝室で雑魚寝をしている。
今日の訓練で疲れ果てて皆あっという間に寝てしまった。
スヤスヤと寝息を立てて寝ているなか、俺は一人起きて暖炉のある今でエクスカリバーの手入れをしながら考え事をしていた。
「うーん…」
そもそも上限突破ってなんだろう。
「なんか普通にレベルとか馴染み深すぎて流してたけどわりと謎なんだよな」
聞くところによるとこの世界の住人はギルド登録して能力を数値化するとレベルが出てくるらしいけど、ギルド登録しなくても強い人はいないのだろうか?
こればかりはみんなに聞かないとわからないけれど。
レベルリセットのシステムもよくわからない。
クレイによればレベルリセットしても元のレベルまではわりと簡単に上がれるらしいが、何にもしていない一般人は最初の上限で止まる。
そして戦闘職についている人はだいたいレベルリセットして上限を上げていく。
上限突破すると確かギルドから特殊な支援があると説明を受けたけど。
寝室で寝ている皆に視線を向けた。
現時点ではギルドから支援を受けているような感じはしない。もしかしてそれらも“聖戦の特典”とやらで何とかなっているのだろうか。
疑問は尽きない。
なにせ、ブリテニアスオンラインでは単に上げれば上げるだけゲームが楽しめるようになるって感じだったから変に思ってしまう。
「んーーー…。ダメださっぱりわからん」
考えれば考えるだけ良く分からなくなっていく。
もともと俺は頭が良い方ではない。むしろ悪い。だからこういった頭を使うことは苦手分野だ。
考えたところで答えなんか出ないだろうと早々に結論付け、俺はさっさと片付けを済ました。
「さっさと寝よう。そのうち分かるだろう」
寝転がるジルハを跨いで自分の布団へと潜り込み、寝た。
翌日。クレイがマーリンガンのレベル測定器を覗きながらぼやいた。
「やっぱり止まった」
「前回のレベルで止まったの?」
「そう。上限解放してからがキツいとは聞いていたけど、びくともしないとは」
「ほーん」
軽い気持ちで周りを見ると、みんな同じスランプに陥っていた。
しかし、ノクターンは人形にマーリンガンに頼み込んで鎧の作り方を(魔法具)伝授してもらったり、アスティベラードはクロイノに乗ったりお手させたりと気にしてない様子。むしろ楽しそうだった。
するとマーリンガンは想定内だったようで、次の提案をしてきた。
「そろそろどうだい?レベル40に挑戦してみるとかは?」
マーリンガン曰く、これを倒せて始めて、聖戦での使い物になるレベルになるのだ。
そのマーリンガンの提案に、クレイが俺に訊ねてきた。
「…いけると思うか?」
俺は即答した。
「いけんじゃね?」
現にもう俺抜きでも全然いけると思っている。
連携は更に磨かれ、新たなスキルも習得しているらしい。
マーリンガンに目配せすると、頷いて立ち上がった。
「とにかく何事も挑戦だ。なにせ死ぬことはないんだ。思う存分当たって砕けてくると良い」
砕けては駄目なんじゃないかな。
なにせ、砕けたらペナルティを受けるのは俺である。
そう思いながらマーリンガンを見ていると、何を勘違いしたのか最近ハマっているウインクを飛ばしてきた。
やめろ。
ということで現在、俺の記憶によって引き出されたレベル40のモンスターと対峙中である。
ウネウネとしている紫色の長い触手が10本。頭、もとい腹が膨らんだ独特なフォルムは皆が知っているあの生き物。
怪訝な顔をしてクレイが言う。
「タコ?」
「って思うじゃん?」
大体の人はそう言う。実際始めて相対したときの俺も「なぜタコ????」と疑問を口にした。
すると二人の言葉に反応するかのようにタコが突然立ち上がる。そりゃもうスクッと軽快に立ち上がる。これが本来の姿だと言いたげに。
このタコの名前はバルブボンオクトパス。皆からは40レベルのボスだからシオ(40)と呼ぶべきだろうが、あのタコ、呼ばわりされている。
「タコって立つっけ?」
突然立ち上がったタコを見てクレイが疑問を口にする。
だが、そんな事、ドルチェットにしてみれば些細なことらしい。
「斬りやすくて良いんじゃね?」
と言いながら、ドルチェットはバルブオクトパスの切り方を指でシミュレーションしていた。
確かに切りやすくはある。だが、それは今だけだ。
早速いつものように特攻を掛けようとしたドルチェットが姿勢を低くして狙いを定めた時に、タコに変化が起こった。
タコの膨らんだ部分がまるで風船のように膨張していく。
その様子を見て、マーリンガンに作って貰った耳栓をするジルハ。
また麻痺させられると思ったのか。
賢明な判断だけど、今回はちょっと違う。
「クレイ」
「なんだ?」
「あれ、爆発する」
そう警告すると、クレイはニヤリと笑ってタコを見据えた。
「よし!わかった!」




