いわゆる修練の間
「じゃあさっそく」
「待って、行く前におばあちゃんに挨拶してから」
「え、あ、うん。じゃあ早く行っておいで」
「あいあいさー!」
ということで、俺はおばあちゃんと無事再会して軽くお喋りしてから、マーリンガンに連れられてきた。
どう見たって洞窟である。
「洞窟やんけ」
そう言えば、マーリンガンがニヤリとした。
「ただの洞窟じゃないよ。中を凄い弄っているからね。ほら」
マーリンガンが指差す方向、洞窟の側にはマーリンガン特製の杭が打ち込まれていた。
なるほど、空間拡張でもしてるんですね。
ならば慣れている者が先導を切るのは道理だろう。
「じゃあ、試しに俺が先に行くよ」
「え」と、クレイが突然間抜けな声を出した。
みんな洞窟を前に躊躇しているなら、毒味役ではないが、安全を保証してあげた方が手っ取り早い。
「マーリンガンが作ったものだし、お試しして安全確認できたら教えるよ」
「ディラくん酷いなぁ」
「信用問題だから仕方なくない?」
「むぅ…」
じゃあ行ってくると、マーリンガンの洞窟へと足を踏み入れた。
するとそこは、俺にとって面白い空間が広がっていた。
なんとなしに発動した【千里眼/感知】で視てみたら一面魔法陣がびっしり刻まれていて、そのどれもが“この事を予想して作った”かのようなものだった。
さすがはマーリンガンである。
報告するために戻ると、皆ホッと息を吐いていた。
「大丈夫そうだったよ。修練の間みたいな感じだった」
「修練の間?」とドルチェットが首を捻る。
しまった。そういう概念は無かったか。
「とにかく、防御系の魔法陣だらけだったから、暴れても大丈夫そうだったよ」
「まあね。普段は僕の大型の作品を造るときに使う部屋だから、君達が全力出したって屁でもない」
「はいこれ」と、マーリンガンから渦巻きの丸い玉の付いたアクセサリーを配られた。全員分。しかも戦闘に参加しないトクルの分もある。
トクルは流石にネックレスは出来ないので、足に付ける飾りだったけど。
「なんですか?これ」
クレイが訊ねるとマーリンガンが答えた。
「簡単にいうなら復活の魔法具かな?」
「それ、違法じゃ…っ!」
「しーっ」
ジルハの口を遮りマーリンガンが首を横に振った。
「なにもこれで商売をしているわけでもなければ、流してもいない。あくまでも私有地で遊ぶだけだ。いいかい?」
「やっぱりそんな人間だったんだなマーリンガン」
「過去にも同じようなものでレベルアップしていた君に言われたくないね」
「本当にどこまで俺の記憶を見たんだマーリンガン」
これ幸いと弄ろうとしたのに、なにも言えなくなってしまった。
こんなことなら記憶見せなければ良かった。
嘘だろお前と言いたげな視線を向けられて泣きそうだよ。
やめてみんなもそんな顔しないで。合法のゲーム内でのやつだから。
「それ、中に入ると消えちゃうけど、死んじゃってもここに戻ってこれるから安心して戦ってくれて良いからね」
「死んじゃっても!!??」
「マジかよ!おもしれぇな!!」
「し…しん……っ」
「………」
クレイが突っ込み、ドルチェットは面白がり、ジルハはアクセサリーを無言で見つめ、ノクターンは青ざめ、アスティベラードは虚無な表情でこっちを見ていた。
様々な反応ありがとう。
「レベルは、そうだなー。まずは君が見たレベル30からにして、回復したら君の想定するレベル40、50って感じにしていこうか」
疑問があるので挙手をした。
「ねぇねぇ質問して良い?なんで毎回俺の記憶から引きずり出すの?」
「だって君の方がモンスターのバラエティー豊かなんだもん」
マーリンガンに、当たり前じゃん?みたいな顔された。
いや確かにブリオンの敵は個性豊かですけれども。
「ああ、そうだ」と、マーリンガンが情報を付け加えた。
「ちなみにみんな死に戻りすると君だけ強敵と戦う羽目になるから気を付けてね」
「はぁ」
強敵か。なんだろうか。
脳裏に過るブリオンでの様々なモンスター。
さすがに度を越したやつは寄越さないだろう。
「これもって、ほらほら。中で遠くに投げてね」
そう言って身覚えのある四角いゼリーを手に乗せられ洞窟へと促される。
始める前に一応聞いておいた方がいいだろう。
「ねぇ、やっぱりこれって──「ささ!入って入って!」
言葉を遮られ中に押し込まれた。
なんだか流されたようで腑に落ちない。
「やっぱり見たことあるよこれ」
手のひらの四角いゼリーが揺らせばブルブル震えている。
そうしている間に次々に皆も洞窟へと放り込まれてきた。
「きゃあ…っ」
「何をしておるのだノクターン」
中に着いたときに躓いたノクターンをアスティベラードが立ち上がらせている後ろからドルチェットが現れた。
「へぇー、なかなか広いんだな」
「先が見えない…」
最後にクレイが入ってくる。
これで皆揃った。
「みんないるか?」
「うぃーす」
みんな揃ったのを確認して、ゼリーを投げる体勢にはいる。
「すぐに武器用意しておいて、多分すぐに襲ってくるから!!」
思い切りソレを投げ、すぐに弓を構えた。
俺の行動で、皆も次々に武器を構える。
(もしアレが俺の知っているものだったなら…)
投げ飛ばされたゼリーが三度地面をバウンドし、突然輝き始めると一気に膨れ上がった。
「やっぱり、ビグ・マネーバじゃんかよ!!!」




