危うく戦闘になるところだった
鞄をまさぐり、奥の方へと仕舞っているとあるものを探す。
「どうしようか。近付いて炎に襲われてもどうすることもできねーし。…ディラ?なにしてる?」
クレイが鞄をまさぐる俺に声を掛ける。
「あったあった」
そう言いながら鞄からとあるアクセサリーを取り出した。
手作りのアクセサリーだ。
控えめに言っても高そうには見えないだろうそれには、贅沢にも魔法石が嵌め込まれていた。それを首に下げる。
「物は試しってね」
そう言い炎へと歩いていく。するとどうだろう。
先程まで感じられていた熱が全く無くなった。
やっぱりそうだ。
「おい!それ以上は!!」
クレイの焦る声が聞こえたが俺はそのまま前進し、ついに炎の中へと足を踏み入れた。
視界は真っ赤なのに熱くない。
不思議な感じだなと、そう思った瞬間に突然炎が晴れて青空が広がった。
目の前には見慣れた村が広がっていた。
何の問題もない。平和そのもの。
後ろを見ても炎は存在せず、何も無かったかのような風景が広がっている。
違う点は炎の向こう側にいるはずのクレイ達が居ない点。
何処か別の場所に移動でもしたみたいだ。
確信が持てたので戻ろうとしたところ、聞き覚えのある声が俺を引き留めた。
「おお!?ディラじゃないか!!」
「あ、おっちゃん。おひさー」
農家のおっちゃんがヨタヨタと駆け足でやって来た。
転ぶからゆっくりゆっくり。
そうだ、と、俺はついでに情報収集をすることにした。
「大丈夫だった?なんか外から見たら村が燃えていたけど」
「炎?ああ、マーリンガンが魔法の事か。ほら、あの柵だよ」
農家のおっちゃんが指差す方を見ると、見知らぬ柵がつけられていた。
ちょうど炎のある辺りだ。
あのデザインは確かにマーリンガンっぽい。
「何でも今危険な野獣が近くを徘徊しているから近寄らないように結界を張っているんだとさ」
「へぇー、野獣ねぇ」
教会関係者を野獣扱いですか、そうですか。
「今マーリンガンとマドカさん(おばあちゃん)を呼んでくるよ」
「わかった。俺も外に仲間を待たせてるからすぐに行って戻ってくるよ」
そうして農家のおっちゃんは去っていった。
一応【千里眼】を発動して一通り村を確認してみたが、特に何も以上は無さそうだった。
くらりと眩暈。無理は厳禁だ。
ひとまず確認して皆のところへと戻ると、緊張した空気が漂っていた。
一発即発のような、ピリピリとした気配に俺は困惑した。
なんだ?どうしたんだ?
「えーと、みんなただいま。遅くなっちゃってごめ──」
「あれ?ディラじゃないかい?」
「!」
隣から知っている声が聞こえてそちらへと視線を向けた。
相変わらずの年齢詐欺の人物、マーリンガンがいた。
「マーリンガン。あれ?なんで?トントさん呼びに行きましたよ?」
何故か呼びに行ったはずのマーリンガンが外で俺の仲間と睨み合いになっているのか。
「ディラ、知り合いか?」
と、クレイが訊ねてくる。
盾を出して臨戦態勢で驚いた。しかもクレイだけじゃなく、みんな臨戦態勢だった。
そんなクレイとのやり取りを見て、マーリンガンがはて?と首を傾けた。
「おや?もしやお仲間かな?」
「そうです。良いご縁がありましてー」
「そうか。じゃあ悪かったね」
マーリンガンが杖を消すと、みんなもホッとしたように次々に武器を下ろした。
「いえ、大丈夫です」
「なに?なに?なにかあったの?」
「何でもないから」
そう言われると逆に気になる。
「じゃあ、お詫びに美味しい茶菓子を振る舞おう。あ、すまないが、そこのエンジュウを入れることができないんだ。長く中に入れておくと演算式が崩れていくからね」
エンジュウ、と、マーリンガンはクロイノの事をそう言った。
種族名なんだろうか?
気にはなるが、それよりも先にやることがある。
「ねぇマーリンガン。じゃあさ、どっか休めるところとかない?俺がお願いして連れてきて貰ったからさ。あと話したいこともあるし」
「そうなのか。じゃあ、造っておくから少しだけ待っててくれないかな。あと、ディラくん?僕もお話あるから待っててね」
「はーい」
そう言ってマーリンガンが炎の中に消えた。
作ると言ったが何を作るんだろう。
珍しくアスティベラードが強張った顔で安堵の息を吐いた。
アスティベラードが緊張しているなんて珍しいなと思っていると、クレイが盾を畳みつつ肩に腕を置いてきた。
「おい、なんだアイツ」
「なにが??」
「……おい、クレイ。多分こいつに訊ねても無駄だぞ。わかってない」
「え?」
「僕もドルチェットと同意見です」
「え??」
視線を向けるとノクターンも小さく頷いていた。
ええ??なに??
置いてけぼり感凄いんだけど。




