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やっと体が治りました

 あの事件の後、意識が行ったり来たりして、ようやく落ち着いたのが四日目の朝だった。


「……あー酷い目に遭った…」

「起きて第一声がそれとか神経図太いなお前」


 目が覚めてはじめに聞こえたのはドルチェットの声だった。

 どうやら高熱を出していたらしい俺の看病をしてくれたらしい。

 額から温くなったハンカチを取りつつ辺りを見回すと、ドルチェット以外には誰もいなかった。


「あれ?クレイ達は?」


 そう訊ねたら、ドルチェットが俺の掴んでいるハンカチを取りながら答える。


「食料調達だ。急いで町を出てきたから携帯食料を補充する時間もなかったからな」


 なるほど。


「それは、申し訳ない」

「ほら、お前の荷物だ。なんかすごいアクセサリーばっかだが、お前の持ち物か?」


 投げて寄越された鞄を受け取り、中を確認した。

 もっぱら中身はマーリンガン作の魔法具ばかりだが、売ればかなりの値が張る物ばかりなので面倒くさがらずにきちんと数えると、ちゃんと全部揃ってた。

 よかった。


「そうそう。俺の、うーん、師匠?みたいな人のと俺の作ったヤツ」

「お前が作ったのか!?」


 思いの外ドルチェットが食い付いてきて驚いた。


「うん、そう。得意なんだよ、こういうの」

「へぇー、器用だな!自分にも教えてくれよ!」

「いいけど、これ一歩間違えたら爆発するよ?」

「じゃあやらねぇ」


 意見の切り替えが早すぎて面白かった。

 予想はしていたけれど、やっぱり不器用だったらしい。


「ただのアクセサリーなら爆発しないから、それならどう?」

「じゃあ、やる。簡単なのからな」


 じゃあみんなが戻ってくるまでの暇潰しとして適当なビーズの入った袋を引っ張り出していると、ガサガサと茂みが揺れる。

 思わず身構えたが、現れたのはアスティベラードだった。


「おお!起きたか!」


 後ろにはクロイノ。上からはトクルが降りてきた。


「よぉ、お疲れ。んじゃ、見張り交代だな。自分ちょっとジルハ達んところ行ってくるわ」


 よいしょとドルチェットは立ち上がり大剣を背負った。


「アイツらもけっこう抜けてるからな。あとお前が起きたっての伝えてくるわ」


 そう言ってドルチェットがアスティベラードと入れ替わるように行ってしまった。

 ドルチェットが行ってしまうと結構静かになってしまった。

 存在だけで賑やかだからな。


 アスティベラードがドルチェットの座ってたところへ座り、無言の状態で時間が流れた。

 あんなことがあったから、少し気まずかったのだが、始めに口を開いたのはアスティベラードだった。


「……私が付いていながらすまなかったな」

「いや、大丈夫だよ?てか俺の自業自得だったし!」


 クロイノは止めようとしてくれていたんだ。

 それなのに自ら毒を飲んで動けなくなってしまったのだ。

 むしろ大馬鹿者となじってくれた方が良い。

 そんなことを思っていると、様子見とばかりにアスティベラードの影から顔を出す黒いのを見て、ディラはそういえばとアスティベラードに訊ねた。


「ところで、本当に名前クロイノでいいのか?もっとカッコいい名前のが良いんじゃ?」

「何を言う。クロは愛しいの意。イノは鬼神の如く強さの意。まさにぴったりである。よく我が国の古語を知っておったな」


 いや知らなかったけど。


「なら良いのか」


 結果オーライって感じ。本来の意味は言わないでおこう。






 遠くから再び茂みを掻き分ける音がだんだんと近付いてきて、三人が飛び出すように現れた。


「起きたか!体はどうだ?」


 クレイとジルハ、そしてドルチェットだ。

 改めてみんなの顔を見てディラは心底安心した。


「もう大丈夫ー!」

「そうか、良かった。でも最後まで油断はできないからそこの薬飲んどけ」


 クレイが指差すのは俺の横におかれた水筒。

 中身は意識がグラグラな中何度も無理矢理飲まされた超苦い薬だ。

 人間嫌なことは嫌でも記憶に刻まれるようで、記憶が曖昧ながらもこいつの不味さだけははっきり覚えているだけに体の拒絶反応がすごかった。

 まだ飲んでないのにえずきそう。


「これ……。飲まなきゃダメ…?」


 飲まなくて良いなら是非とも飲みたくない。

 そんな一抹の希望を胸にそう訊ねたのだが、クレイは容赦なかった。


「ダメだ。飲め」

「うえええ」


 クレイに出された水筒を手に、俺は躊躇していた。

 飲みたくない。例えるならばこれは青汁とゴーヤーとピーマンを磨り潰したみたいな味で後味もドロリとしていて体が飲みたがらない。

 いつまでも水筒両手にウダウダしていると、クレイが助け船を出してきた。


「ノクターンが果実を持ってくるから、それ飲んだら褒美としてお前にその七割あげよう」

「いただきます」


 呼吸を止めて一気飲み。

 ゲロるゲロる堪えろ俺!!

 うっぷっ、と口許を押さえて必死に飲み込んだ。


「よしよし、よくやった」


 クレイに誉められたけど苦味に耐えているので嬉しくない。

 えずく俺の背中を擦るクレイの後ろでドルチェットとジルハがコソコソと薬の事について話している。


「あの薬、クレイが作っているときに摘まんだが恐ろしい味したぞ。やべーよな」

「僕も飲みたくないから毒に気を付けるよ。飲ませ方もヤバかったもん。プロだよね」


 口直しと水を飲みつつその会話を聞いていた。

 あの薬クレイが作ったんか。次があったら言わなくちゃ。せめてバナナかハチミツを入れろと。

 そもそもバナナあるんだろうかとの疑問はさておき、必死に口の中の苦味を消すことに集中したのだった。


 その後、ノクターンが持ってきた果実を本当に七割くれたのでありがたく貪った。甘い美味い。



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