サナーマフォン戦
サナーマフォンの腹から飛び出しているハルピーの大軍が、笑いながらこちらへと急降下してきていた。
「あれはまずいッ!!」
タワレアルなんかよりもとても厄介な奴らだった。
人を喰う化け物なのは同じだが、あれの牙には毒がある。
まさに最悪の組み合わせだった。
一咬みでもさせるものか。
集中し、頭を猛回転させた。
これを無力化するのはこれしかない。
「すぅ…。……、…………スキル発動!」
ぶわっと俺の周りの空気が振動して次々にスキルが発動を開始した。
──【身体強化】発動【筋力強化・大】発動【同時標的捕捉】発【攻撃力増大】【雨状放射】【衝撃受け流し】【弓矢改造】【切り替え/弓/白雪の六花琴】発動──
持っている弓が一瞬にして変わり、複数の弓が重なりあったような大弓へと変化した。
弦は一本だが、その弦には見えない弦が複数複合している。
──【弓矢生成】発動──
「【属性付属/爆裂】発動…」
手の中に現れた矢の形状が変わる。矢尻は弾丸のようなものになっていた。
俺はは弓、白雪の六花琴に矢をつがえた。
「ふぅーっ…」
息を吐きながら集中力を上げていく。
この弓を扱うのは難しい。強力だが、恐ろしく弦が固いのだ。
矢先をハルピーの大軍へと向けると、【複数標的捕捉】が見える範囲でのハルピーへとマークを施していく。
だが、それだけでは終わらない。
何せ俺は【千里眼】シリーズを所持しているのだ。
「【千里眼/見通し】」
【千里眼/見通し】によって視界いっぱいに広がるハルピーを全て視界に納めた。
それこそ通常であれば見えない範囲のハルピーまでも。
目視することによって全てのハルピーにマークが付き、俺は弦を引き絞る
ギチギチと音を立てて弦が引かれる度に周りに矢が増えていく。
数センチ引く度に倍で増える矢は全て爆裂の属性が付属している。
「せぇー……のッッ!!」
手から矢が離れると同時に周りの矢も発射された。
凄まじい速度で飛んでいく矢は、【雨状放射】スキルによって発射された矢が更に増え、まるで豪雨のような密度でハルピーの群れへと襲い掛かった。
空が真っ白に染まった。
続いて爆発による轟音が鳴り響き、衝撃波が俺達に降り注いだ。
「ふぅ、よしこれで見通しがよくなった」
清々しい笑顔で額の汗を拭った。
唖然とする皆の中で、功太がいそいそと攻撃用のスキルの展開を始めながらGJサインを俺に向ける。
「ナイス朝陽!じゃあいつも通りに!」
「おーけーおーけー!」
元に戻った弓を片手に流れ矢を食らったらしいサナーマフォンに追撃をするべく走り出した。
まずは先手必勝と【攻撃力増大】を発動。
「おらぁ!!」
まずは牽制の意味を込めてサナーマフォンの顔面へと撃つ。
まっすぐとんだ矢は、顔面を覆う翼に阻まれて弾かれた。
矢先は潰れ、ポッキリと折れたのを見て俺は呆れた。
予想よりも装甲が厚い。
「うーわー、固いなあれ…。鉄みたいな音がしたぞ」
それとも馬鹿みたいに防御力があるのか、それとも噂の無敵シールドとかでも張ってたりするのか。
「おい!横から来てるぞ!!」
「横?」
ドルチェットの警告に横を向くと、木の根っこに似た蔦が物凄い勢いで迫ってきていた。
「うわっ!」
津波のような蔦が大量に襲い掛かってくるのを見て、必死に回避する。
四方八方から襲い掛かってくるそれを避けながら、功太のスキルを待つ。なんとかそれまで時間を稼ぎたい。
功太が使おうとしているのは特殊なスキルだ。
時間が掛かるが、完成してしまえばこちらが有利になる。
「ま、ちょっ!数多い!!」
「だりゃああああ!!!」
ズバンとドルチェットの大剣が大量の蔦をぶつ切りにした。
「ドルチェット!?」
「この蔦相手なら自分だって手伝える!!ただの木偶の坊だと思ったら大間違いだからな!!」
言いながら更に襲ってきた蔦を次々にその大検でぶつ切りにしていく。
ドルチェットが参戦したことにより、負担が軽減された。
「そうですよ!」
上空から来たハルピーの群れをジルハの短剣が穿つ。
「僕もこれくらいなら出来ますから!」
「おうとも!」
着地したジルハに飛び掛かってきたタワレアルをクレイが盾で殴り飛ばした。
「お前が強いのは分かってる!援護くらいは任せろ!」
「──母成る大地よ 天よ 始まりの火よ 我等に立ち上がる勇気と力を、聖なる戦斧でもって、我等に害為す敵を討ち滅ぼさん…
[エーアン・ウコースト・オヤラーキト・ィヤド]」
ノクターンの詠唱。
体が熱を持ち、力が溢れてくる。
「見よ、この美しき暁よ。燃え盛る汝は全てを癒し、全てを許し、全てをかえす揺りかご。微笑みを見せておくれ、この指先まで愛して…
[ウパーノホスネート]」
疲れがぶっ飛びやる気が出てきた。
なんだこれは【加護付属】的なやつか??
サナーマフォンがゲラゲラと汚い笑い声を上げながら腹を大きく開き、いっそう多くのハルピーを放出した。
「いっ…!?」
さすがに多すぎない??と空が多い尽くされるほどのハルピーを眺めた。
先ほど倒した数の二倍はある。
倒せなくは無いけれど、無傷ではいかないだろうなと冷や汗を流しながらスキルを展開しようとした時。
「 散れ 」
黒い帯が空を撫でた。
たったそれだけでハルピーの群れは半壊し、なんとか出来る数までには減った。
カツンと、アスティベラードの靴が瓦礫を踏み締める。
空を見上げるアスティベラードの後ろには黒いのが同じく空を見上げ、尻尾を蛇のようにうねらせていた。
「上の奴らは任せよ。飛べば有利になると思い上がる無能らに教え込んでくれるわ」
「アスティベラード…! 助かる!」
再びスキル多用して猛攻を仕掛け、すり抜けた奴らをジルハとクレイに任せた。
俺は振り返り、背後の功太へと問い掛けた。
発動完了までの時間がやけに長い。一体どのくらいの範囲指定をしているのか。
「功太!!あとどれくらい??」
「あと十秒で広範囲攻撃のチャージが溜まる!!」
後十秒か。
「りょーっかい!!!」
功太の方へと向かう蔦をドルチェットが切り刻み、別方向から伸ばそうとした蔦を矢で貫いて地面に縫い付けた。
そして、待ちに待った功太のスキルが完成した。




