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異常事態発生!!


「え?」


 突然画面が切り替わるように景色が森になった


「森!!?」


 突然の事態に混乱していると、すぐ近くで悲鳴が上がった

 何事だろうかとびびりつつも体は勝手に動き、弓を片手に悲鳴の上がった方向へと向かう


「おい!ディラ!何処にいく!」


 茂みを掻き分けると人が羽の生えたハエのような醜悪な生き物に襲われていた。

 ギャギャギャとセミよりもけたたましい鳴き声を上げながら人に噛み付こうとしているところを、ディラが雄叫びを上げながら弓で横からぶん殴った。

 ソイツは勢いよく飛び、茂みの向こう側へと消えた


「なんでこんなところに蝿小鬼(タワレアル)が!?」


 思わず叫んだ。

 何故なら先程の生き物がブリオンに出てくるタワレアルそのものだったからだ。

 こいつの生態は厄介極まりない。弱いくせに数がアホみたいに多くて変に消耗するのだ。


「うわ…、やっぱり…」


 危惧していると、タワレアルが四方八方から沸いてきた。

 こいつは人を食べる。故に素手でやりあうのは危険だった。


「どうしよう…」


 なんでよりによって矢筒を置いてきてしまったのか。

 手に持っている弓で殴るのだって限界がある。

 ゲームならスキルの弓矢生成で作れるのにと、後悔していると、突然空いた手の中に掴み慣れた物体が発生した。


 ──スキル【弓矢生成】発動。


 手の中で矢ができていた。それもかなりの数。

 え、まじで??

 一旦その矢を地面にさして保管。

 何がなんだかわからないが、出てきた矢を次々につがえ、見える範囲でのタワレアルを全て落とした。


 追撃はない。

 様子見をしているかもしれない。


「あのー、大丈夫ですか?」


 足元で震えている人に声をかけると、肩を跳ねさせながらもこちらを見た。

 心底怯えている。

 仕方ない。あいつキモいし。


「……ぁ…ありがとぅ……ございます……」

「うん。とりあえず近くのトワレアル全部落としたから逃げるなら今のうちだよ」

「わっ、わかりました!ありがとうございます…!」


 足をもつれさせながらも逃げていくのを見送ってから、ディラは近くのタワレアルへと近付いた。

 地面に落ちたタワレアルは、ジュワジュワと煙を上げて蒸発していた。

 死骸は残らないようだ。


 ガサガサと音がして反射的に弓を構え、すぐに下ろした。

 クレイ達だった。

 来てたのか。いや、来てたな。

 声掛けられたのを思い出した。


「なぁ、なんだこれ…?」


 困惑しているクレイに訊ねられたけど、訳がわからないのはこちらも同じだった。

 俺は肩をすくめる。 


「さぁ?わからないよ。…わからないけど」


 ゲームならば何かしらのイベントとして説明がつく。

 だけどここはゲームではない。現実だ。


「人が襲われていて、自分は武器を持っているから戦わないと、とは思う」

「同意だ!戦えるものが戦わないでどうするんだ!」


 ドルチェットが同感し、なぁそうだろ?と同意を求めた。

 それにジルハはしょうがないと溜め息を吐く。


「ドルチェットがやるなら僕もやりますよ」

「……ならオレもやらないわけにはいかないな」


 クレイも参加。


「お前らはどうすんだ?」


 ドルチェットがアスティベラードとノクターンに訊ねると、ノクターンは不安げに視線をさ迷わせ、隣にいるアスティベラードを見た。


「無論、私も参加する。無力な者共を見捨てるほど、落ちてはおらん」

「……あ…、その…アスティベラードがやるなら……ワタシも……」

「きついなら隠れてて良いから」


 一応フォローのつもりで言ったのだが、大丈夫ですと言われてしまった。

 余計なお世話だったのかも。


「よし!」


 頬を叩いて気合いを入れる。


「やるぞ!人助け!」


 ディラが先導してタワレアルを倒していく。その途中で襲われている住人達を発見した。


「みんな!今のうちに逃げろ!」

「村の端の方は数が少ない!そこまで逃げれば対処できる!」


 倒しながら教われている住人を救出して逃がす。

 村の中央近くに行けば行くほどタワレアルの数が増えていく。

 ということは外に行けば行くほど数が減り、住人が多く固まれば対処が出来るようになる。

 タワレアルというモンスターは、ブリオンでも見たことのあるモンスターだった。


 正確に言うと全く同じではない。

 同じではないのだが、その性質が驚くほど似ている。

 一匹一匹はレベル1でも素手で殴って倒せるほどの強さのモンスターだ。

 スライム的な立ち位置と言っても良いほどだ。

 数が増えると厄介極まりないけれど、対処出来ないほどでないという感じ

 これ程同じなら、きっとこの群れのボス的なものがいるはず。


「……」


 しかし気持ちの悪い空だなと見上げた。

 赤紫色の空のほぼ真上辺りにポッカリと空いた丸い空洞がある。

 空洞と表現したのはそれが真っ黒だったからだ。何の物体ならば光の反射くらいありそうなものだがそれもない。

 文字通りの空洞に等しいほどな“闇”だった。

 今にも何かが出てきそうだなと思いつつ、視線を前に戻す。

 それよりも気になることがあった。


 弓矢生成スキル使えたなら他のスキルも使えるのかな。

 試してみるかと集中する。

 いつものようにスキルを発動をしようとした。


 すると今まで感じられなかったものが次々に視覚情報として飛び込んできた。

 離れたところにいる敵の位置と距離、こちらに気づいている敵の数。そしてボスと思わしき存在がマーカーで示されている。

 この機能は知っている。


 スキル【千里眼/見通し】だ。

 もしやゲームで使っていたスキル全部使えるのか?


「……ものは試しだな!」


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