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それぞれの戦闘スタイル


「しゃあ、いくぜ!来い!ジルハ!」


 大剣を引き抜きつつドルチェットが駆け出し、その後をジルハが追い掛ける

 速い。

 あんな重そうなものを担いでよくあんなスピードが出せるものだ。

 そう感心している間にもドルチェットはその大剣を唸らせ、一匹二匹と次々に屠っていく。


 その横をジルハが滑り込み、取り逃がした個体に複数の小刀を飛ばして動きを封じ、すかさずドルチェットの大剣によって切断される。

 とてもレベル1とは思えないし、あのコンビネーションは流石としか言いようがない。


「うわっ!」


 だけど一瞬の隙を突かれ素早い個体がドルチェットへと襲い掛かる。

 だが、その個体は分厚いクレイの盾によって防がれた。

 ガントレットの一部が変形して盾のようになっていて、俺のテンションが急上昇した。


「おお、変形して盾に成るのか、あれ。かっけー!」


 クレイの盾によって弾かれた個体を俺が射った矢で仕留めた。それをクレイは確認しながら懐から小さな笛を取り出して息を吹き込む。

 音は聞こえなかったが、その笛を吹いた瞬間にドクガオオカミの耳がピンと立ち、クレイを凝視した。

 なんだろうか?


 次の瞬間、クレイが盾を殴る。

 信じられないほどの大きな音が鳴り響き、その音に一瞬怯んだドクガオオカミが次の瞬間には牙を剥き出してクレイに襲い掛かっていった。


 もしかしてあれ、ゲームとかで見る【挑発】スキルだろうか。


 クレイが集まってくるドクガオオカミを盾で防いでいる後ろからドルチェットとジルハが集中攻撃を仕掛けた。

 後ろから回り込もうとするドクガオオカミを移動しつつ地道に穿っていると、三匹程がクレイの防御を抜けた。

 ドクガオオカミ達の行き先はノクターン達だった。

 クレイが焦りの声を上げる。


「まずい!そっち行ったぞ!!」


 牙を剥き出して掛けてくるドクガオオカミにノクターンは顔を青くして「ひいいいい…っ!」とか細い悲鳴を上げた。

 結界系の魔法等を使おうとする様子はない。

 もしや使えないのか。


 援護に入るかと方向転換をしようとしたその時、アスティベラードがノクターンの前へと出てきた。


 何の武器も持っていないアスティベラードは、臆することなく駆けてくるドクガオオカミを腰に手を当てたまま、ただ見ていた。

 一体どうする気なのだろうか。


 すぅ…っ、とアスティベラードが胸一杯に空気を吸い込んだ。


「  下がれ!!!  」


 凛とした声が響き渡る。

 思いもよらない声量に驚いた。

 見た目から想像もできない声量だったのは勿論そうだが、そう発言した瞬間に先行していたドクガオオカミの体がビクンと跳ねて地面へと転がったからだ。

 ゴロゴロと転がりピクリともしない。


 意味の分からない出来事に唖然とするしかなかったが、更に意味の分からない事態が発生した。

 後方を走っていた二匹が転がる仲間を飛び越えアスティベラードへと迫っていく。

 だが、そのドクガオオカミよりもヤバイものをアスティベラードの背後で発見した。

 のそりと起き上がった影だ。

 光を反射することもないほどの黒い物体は大きく膨らんで動物を象る。

 猫のような鳥のような犬のような…。


「 無礼者め 」


 とにかくなんだかよく分からない物体がアスティベラードの背後からのそりと身を起こし、迫ってきているドクガオオカミをその鞭のようにしなる尻尾で一撫で。

 次の瞬間にはドクガオオカミ二匹は力を失ったように地面を転がっていった。


「……こわ……」


 何のジョブか分からないけど、怒らせないようにしようと心に刻んだ。



 小高い岩の丘を駆け上がりながら残党処理していると、突然後ろからグオオオオンと大型の獣と思わしき咆哮が上がる。

 咆哮によって足元の小石がジジジと細かく振動する。


 たらりと汗を流しながら振り返った。

 すぐ後ろに逃げたはずの雌ドクガオオカミ達と、赤紫いろの毛色をした巨大なドクガオオカミがいた。


 もしや逃げる振りしてボスを呼んできたのか。

 思ったよりも知能が高いらしい。


 ボスはすぐ近くにいる俺を見付けると体勢を低くした。


「おっとー…」


 どうやらロックオンされたらしい。

 これはもう逃げられそうもない。


「ディラ!一旦引け!」


 クレイがそう言うものの、すでに目が合っている上に攻撃範囲内。

 今から回避行動を取るにしても背中を見せれば格好の餌食だ。


「まぁ、引くつもりは無いけど」


 もともとボスを倒したいと思っていたところだ。

 ちょうどいい。


 牙を剥いて飛び掛かってきた瞬間、矢筒から矢を三本引き抜き、狙いを定め射ち放った。

 時間差で飛んだ矢はまずボスの眉間へと突き刺さり、次いで首、最後に地面へ背中を打ち付けながらも放った矢は心臓ど真ん中を射ち抜いた。


 地面に仰向けで倒れた俺のすぐ上をボスが飛び越えたが、ボスは着地することなく地面へと転がり、泡を吹いて事切れた。

 本来なら歓声を上げるところだが、その前に俺は恐怖の声を漏らした。


「ひいい、こっわぁ…っ!」


 想定よりも低い位置を飛ばれ、危うく下敷きにされるところだったと今更ながらに冷や汗を流しながらも、追撃を警戒してすぐに矢をつがえた。

 だがボスの周りにいたはずの雌はみんないなくなっていた。

 逃げたらしい。


「……ふー…っ…」


 息を吐きながら転がるボスの様子を見に行った。

 逆立っていた毛が寝ている。

 これでもう安心だ。


「ボス討伐できたよー!」


 固まっている仲間に声をかけると、凄い勢いでドルチェットが駆けてきた。

 そして思い切り背中を叩かれた。それも一度ではなく何度も。


「すっっっげーなお前!!!見直したぜ!!!」

「いたっ!いたい!いたいですドルチェットさん!!」


 ドルチェットを皮切りにぞろぞろとみんなやってきた。

 顔を青くしているジルハがホッと胸を撫で下ろしている。


「死んだかと思いましたよ」

「ホントだよ。心臓止まるかと思ったわ」


 クレイの言葉にこくこくと頷くノクターンに、「やるではないか」という言葉が顔に出ているアスティベラード。

 そして、その背後の黒いのから何故だか視線を向けられていた。

 正直何処に目があるのかも分からないけれど、確実に見られている。

 なんでみんなこれに突っ込まないの?


 何となく見つめ返していると、クレイが腰の鞄からナイフを取り出して言う。


「よし!討伐完了の証拠剥ぎ取ってから戻ろう」


 なるほど、クエストもそういうシステムなんだな。

 黒いのから視線を外し、回収するためのナイフを取り出した。


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