表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/215

属性的には不利な相手。

 凄まじい音が鼓膜を破らんばかりに揺さぶる。

 同時に衝撃が体を突き抜け、しかし予想外に痛みはなく、凄まじい破壊力を持った閃光は目の前で四方へと割れて流れていった。

 クレイの大盾がバルハニエルから放たれた雷を防いだのだ。


「ま、間に合ったぁ…っ!!」


 冷や汗を掻きながらクレイが言う。


「!」


 クレイの盾にビビが入っていた。

 え、どんな威力。怖いんだけど。


 こちらに向けていた槍を下げ、少しの間動きを止めた。

 何かを考えているのだろうか。

 あまりにも表情が無さすぎて良く分からない。


 バルハニエルは無表情のまま、今度は上空に槍を向けて先程のような雷を発射した。

 雷は空に吸い込まれていき、雲全体がまるでクモの巣のようにビカビカと激しく明暗。

 次の瞬間に広範囲に無数の雷が同時に落ちた。


 あちこちから一般人の悲鳴が上がっている。

 今回の聖戦は今まで以上に広範囲に被害が出るかも。

 街からは煙が出ている。


 こちらはクレイの盾で無事だけど、まるで雨のように降ってくる雷が怖くてしかたがない。

 一応ノクターンの防御魔法が効いているのは分かるけど、原初的な恐怖はどうしようもないらしい。


 街の方からフライパンのような金属を連続で叩く音がする。

 多分、緊急避難警告とかなんだろう。


 周辺が地獄絵図と化しているなか、バルハニエルは空いた方の手を空に向けていた。

 また何かするのか。

 風がバルハニエルへと集まり戦鎚が形成される。


『 Yַגרֻסה(ヤグルシュ) 』


 バルハニエルがまた言葉を紡ぐ。

 先程とは違う言葉だ。

 バルハニエルが戦鎚を掲げると空のあちこちで雲が渦を巻き始め、速度を上げていき、そしてゆっくりと下りてくる。

 竜巻だ。

 しかもひとつではなく、たくさんの竜巻が一斉に形成されていた。


「……おいおいおい…」


 今まで環境干渉タイプは居たけれど、あまりにも干渉範囲が広すぎる上に展開が早い。

 しかも雷だけではなく、風の二種類はさすがに反則だ。


「龍種かよ…」


 もしくは伝説種か。

 ブリオンのボスにももちろん環境干渉タイプがいた。

 普通のモンスターにも居はしたけど、そのどれもが龍や精霊をモチーフにした奴らだった。

 なのに、目の前のバルハニエルは人の形のままで天候を操っている。

 もしかして、俺は聖戦のボスというのを見誤っていたのだろうか。


「……」


 それならそれで、意識を切り替えるまでだ。


 戦闘な必要なスキルを即座に発動し、矢を生成してバルハニエルへ向けて射ち放つ。

 矢は一直線に飛んでいき、このままバルハニエルへ突き刺さる。


「!?」


 ───かのように見えた。

 直前で矢が強制的に進路を妨害されて明後日の方向へと曲がっていったのだ。

 結界に当たった感じでもなく、攻撃による阻害でもない。

 一体なんだ?


 確認のために再び射つと、今度はもう少し手前から進路をずらされてカーブしながらバルハニエルを避けていった。

 初めは、なんだ?結界か?と思ったが。


「───いや、違う」


 今の矢で確信した。

 バルハニエルは目に見えない竜巻のような強力な風を纏っている。

 それによって矢が逸らされたのだ。


「なんだ??なんで矢が曲がったんだ??」


 困惑するクレイに俺は答える。


「あいつ、見えない竜巻で身を守ってる。しかも結構な強さの風。多分だけど、人間なんか近付けばあっという間に吹っ飛ばされると思う」

「はぁ?そんなんヤベーじゃん!」


 ドルチェットが吠えた。


「お前の矢も届かないんじゃキツいな」


 そう言うクレイに俺は言う。


「いや、そこは大丈夫。なんとか出来はするから」


 つまり、強風に対抗するためには風の影響を受けてもびくともしない程のスピードを出すか、もしくは風の影響を受けにくい属性を付与してやればいい。

 例えば、そう、視界の端を掠めたビームみたいな。


「……って、功太!?」


 ビームはバルハニエルへと着弾し、バルハニエルの体制が崩れる。

 やっぱり風の影響を受けない攻撃は通るのか、


「?」


 ビームが当たったところが大穴が空いた。しかし、空いたというのに様子が変だ。

 痛がることも、血が出ることもない。

 ただ無機物に穴が開いただけ、そんな感じだ。


 しかし、それでも何かしらのダメージを与えられたのか、バルハニエルの動きが止まっていた。


「なぁ、今のって───」


 ビームに気が付いたドルチェットが言い終える前に、視界の端から功太が飛び出してバルハニエルへと特効を仕掛けた。


 動きを止めたまま、ギョロとバルハニエルの目が功太を捉えた。

 一瞬の耳鳴りの後に、ドカンと、まるで爆発に似た音がバルハニエルから発生し、功太が空へと抵抗も空しく巻き上げられて飛ばされた。

 微かに功太がの「うわぁぁー」との声が聞こえる。


「功太ーーー!!?」

「おいやべーぞ!!どうすんだ???」


 クレイが焦っているが、功太の近くにクレイの盾を設置できる条件がない。

 それに空中では剣士は限りなく無力に近い。

 完全な丸腰状態だ。


「!!」


 そんな功太を狙って、バルハニエルひ雷槍を向けた。


「ヤッバイ!!!!」


 慌てて矢に雷属性を付与し、バルハニエルと功太の間に射ち放つ。

 射つと同時に発射されていた雷が矢の方に逸れて身代わりになり、功太は無事。

 功太の横にルカが現れて功太を捕獲、すぐさま消え、俺の横に二人が現れた。


「びっくりしたぁー……」

「危なかったな」

「いやほんと、助かったよ。ありがとう」

「私は?」

「ルカもありがとう」

「ん」


 二人は完全に仲直りしたらしく、あのギスギスが消えていた。

 良かった良かった。


「それにしてもあんなに飛ぶんだね、人って」


 ギャグマンガのようだった。


「これじゃ近付けんな」

「ですね。ディラさんの矢も届きませんし」


 辺りに発生した竜巻も徐々に大きくなってきている気がする。

 きっとバルハニエルの周囲に有る見えない風の壁も広がってきているのだろう。

 いくらクレイの盾が頑丈とはいえ、直に突っ込んでこられたら盾ごと飛ばされそうだ。


 ビームが直撃したバルハニエルだが、欠損した部分がモヤ状になりながら元に戻っていた。

 効きはするけど決定打にはならない感じか。


「どうする?ディラよ」


 アスティベラードに言われ、少し考えた。


「……、うん。とりあえず、一通り確認してみるしかないね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ