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初クエスト開始!


 そこからダラダラとお喋りしつつ歩き、森の中から目的地である岩場が見えてきた。


「着いたな。じゃあ依頼内容を確認するぞ。ドクガオオカミの討伐。推定50頭が群れを成し、近くの道で旅人や商人を襲う事件が多発。全滅させるか、この場所から移動した方が賢明と判断させるほどのダメージを与えて欲しいとの事。

 ボスを討伐すれば追加報酬あるが、それは今回は無視していい。

 次にドクガオオカミの情報だが、聞くか?」

「ください」


 昨日図鑑で見たが、情報の擦り合わせとして聞いておきたい。

 いわれるまでもなく皆円形になると、クレイが早速説明を始めた。


「ドクガオオカミ。青紫色の体毛で、牙に麻痺毒がある。ボスは体毛が赤紫に代わり、毒も麻痺以外にも、出血毒や幻覚が付いてくる。連携で襲ってくるから、絶対に無理な単身突破はやらないようお願いしたい。

 ノクターンは解毒が出来るんだったか?」

「はい…。念のために戦闘前に補助魔法を掛けておきますが…ワタシ自体の戦闘能力は殆んど無いので…、こちらに来たら助けてください…」


 攻撃系魔術師ではなかったか。でも補佐は助かるな。

 結構魔法職ではこういった補佐系が軽視される傾向があるけれど、なんでなんだろうな。

 立ち回りが地味になるとかなんだろうか。


 ノクターンの要望にクレイは悩んでいた。

 クレイの立ち回りは前線よりのシールダーだったからだ。


「オレはシールダーだから守っても良いが…。そうするとヘイト集めがやりにくいな」

「すみません…」


 いわゆる戦士なんかの立ち位置で、いうならば壁、囮、陽動と呼ばれるヘイトを集めるのに特化しているらしい。

 聞くところによるとノクターンは機動力が低いらしく、もしクレイが近くで守るとなると立ち回りが大幅に制限される事になる。

 とはいえ、守って欲しい人のところに魔物が集まってくるのは可哀想だ。


「助けなど要らぬ」

「!」


 突然アスティベラードがそう言った。

 いや、でも、本人助けてって言ってるしと視線を向けると、その後の言葉で違う意味なのだとわかった。


「私の近くに居れば良かろう。何か不満があるのか?」

「いえ…」


 目が泳ぎ、汗も凄いノクターン。

 なんだかとても心配になってきた。

 大丈夫かな。


「私も戦えぬ事もないが、この通り後方でこやつの守護に徹する事になった。異論はあるか?」

「………ないです」


 アスティベラードの圧に負け、ノクターンが青ざめた顔でこくこくと頷いた。

 やっぱり圧が凄いなこの人。怖いよ。

 俺は初めて女性に恐怖を覚えた。


 まぁ、それはそれとして、ここまでの情報を整理することにした。

 それぞれのジョブと武器を照らし合わせてポジション確認をするのだ。

 アスティベラードはわからないけれど、大まかに決まればどうにかできる。


 戦闘要員は俺、ドルチェット、そしてジルハ。

 防御がクレイ。

 補佐がノクターン。

 そして、補佐の補佐がアスティベラード。


 ひとまずこれで形が整った。

 後は動いていればどうにかなるだろう。

 まずは軽く手慣らしだ。





「! 皆さん、来ましたよ」


 ジルハがドクガオオカミの群れを発見した。

 成体の数、幼体の数が一致した。

 あれだ、あれで間違いない。


 この依頼レベルは初心者からやや上程度で、依頼内容は討伐だが、群れに半分ほど損害を与え、このエリアから追い出すだけで良い。

 でもせっかくならボスを討伐して追加報酬を貰いたい。

 だけど、独断で動くのはダメだな。

 パーティーは協調性が大事。


「じゃあ、早速だがノクターン、頼む」


 クレイからの指示に頷いたノクターンは、詠唱を開始した。


「守れ 護れ 汝の子らを 硬い殻にて お守りください…

[エーアン・ウカターク]…。

 母成る大地よ 天よ 始まりの火よ 我等に立ち上がる勇気と力を…

[エーアン・ウコースト・オヤラーキト]…」


「お?」


 体の周りに幕のようなものが張り、すぐに馴染む。

 これもしかして防御力を上げる魔法なのか。

 ゲーム上ではエフェクトとステータス上昇でしか判断しなかったけど、実際か体感するのは始めてだ。

 まるで分厚いコートを着たみたいな感じだったが、今は重さも何も感じない。

 むしろ次に唱えられた詠唱で体が異様に軽くなった。

 これはなんだろう。攻撃力関係とかか?


「何もない何もいない 感じない

 そこにいるのは空気 石 草 無害なものなり…

[ネスーグミ・イノコーク・アウィーサタゥ]…」


 追加でノクターンが詠唱したが、体には何の変化もない。

 何の魔法だろうか。

 気にはなったが、まぁいいや。と気持ちを切り替えた。

 準備は整った。


「ディラ、いけるか?」

「まっかせてー」


 矢筒から矢を引き抜き、狙いを定める。

 狙うはでかい個体から。


「しっ!」


 バンッと、小気味良い音と共に矢が飛んでいく。

 矢は狙いどおりに群れの中で一番大きな個体の首に突き刺さる。

 あれがボスなら良いんだけど、たぶん違うな。毛の色違うし。


 矢が突き刺さった個体はよろめいて倒れ、突然の事態にが一瞬混乱に陥ったが、すぐにこちらに気が付くと戦闘体勢へと切り替わった。

 大人の雄がこちらに向かって唸り、その隙に若い雄が雌と幼体らを率いて逃げていく。

 これがゲームなら全個体襲ってくるんだろうけれど、そうはならなかった。

 なるほど、半分で良いというのはこう言うことかとディラは納得した。


 殿を勤める雄の一匹が咆哮。

 次の瞬間一斉に襲いかかってきた。


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― 新着の感想 ―
補佐はゲームだと不人気ですよねぇ。やっぱ地味なのと雑魚戦で立場が微妙だからですかね? でも小説だと重宝するポジション。 最後、とても上手い気になる引きです。 しかし休憩時間が終わるジレンマ(苦笑)
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