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戦士と剣士は違うらしい

 ジリジリと睨み付ける二人。

 ドルチェットは低く構え、アリアーニコはまるで槍のような構え方をしている。


「フッ!!」


 先に仕掛けたのはドルチェット。先ほどの二人とは確実に違う、準備運動ではなく本気でとりに行く踏み込みだ。

 一気に距離を詰めた理由は、相性だ。

 ブリオンであれに似た剣はあったかと考え、ツヴァイヘンダーが該当する事に気が付いた。

 あんな感じにしっかりと柄が2つではないけど、特徴は同じような感じだ。

 なら取り扱いもある程度なら予測がつく。そして弱点もだ。

 ああいった長剣、二柄剣だが長めの武器というものは、リーチの利があるが、大概懐に入られると弱い。

 弓もそうだけど、リーチが長い武器にはどうしたってそうなるのだ。

 それを言えば大剣のドルチェットもそうだが、ドルチェットは体が誰よりも小さいから、それを活用して上手くカバーが出来るのだ。


「ぬぅン!!!」


 アリアーニコが上段から振り下ろされた大剣を上手く受け流し、がら空きになったドルチェットの体へと信じられない速度で水平斬りを繰り出すが、剣の重さを利用してドルチェットはそれを飛び上がる事で回避した。

 着地後に即座にアリアーニコに攻撃を繰り出すが、それをアリアーニコも跳んで回避、その時、柄から手を離し、柄頭から伸びる鎖を握る。


「!!」


 ブゥン!!!と業務用扇風機から発せられるような音がなり、ドルチェットはその場から素早く離脱した。

 今までドルチェットがいた地面は深く抉られ、周囲に抉り返されて飛び散った土が散乱している。


 ドルチェットが笑みを浮かべる。


「へぇー、前見たときよりもリーチが伸びてんなぁ」


 まるで鎖鎌のように二柄剣をブン回しているアリアーニコに、俺は少し引いた。

 リーチを伸ばすにしたって限度があるだろう。

 ただでさえ長剣、しかもツヴァイヘンダーに似た二柄剣が鎖でブン回されている光景は俺でも恐怖を覚える。

 おおよそ剣の発する音ではない。

 飛行機のプロペラまではいかないが、それに近しい音をさせている物体に近付けば容易に胴体がまっぷたつになるだろうということを理解させる。

 というか。


「……鎖、伸びてない?」


 初め見たときはせいぜい掌サイズだったのが、今は腕ほどの長さになっている。

 一体どういうことかと目を凝らすと、アリアーニコは狙いを定めるように姿勢を低くし、二柄剣をドルチェットに向けて発射した

 ぶん投げたのかと思ったが、そうではない。

 鎖鎌の紐分銅のように長剣が真っ直ぐに飛んだのだ。


「!」


 二柄剣の鎖が更に伸びている。

 とっさに千里眼で確認すると、柄頭から鎖が排出されていた。

 まさか巻き尺みたいになっているとはと感心した。


 二柄剣がドルチェットの居る場所に突き刺さる。

 すでにドルチェットは回避済みだが、地面の抉れ具合をみると受けても結構なダメージが入ることがわかる。

 二柄剣はすぐに引き抜かれ、ヨーヨーの様な軌道を描いてアリアーニコの手に戻った。


「日々進化を続ける。これがレッドジュエルの剣士だ」

「剣士っつーか、戦士じゃね?」

「…………」


 ドルチェットの含み笑いの言葉にアリアーニコの雰囲気が変わった。


 ドン!という音を残して二人の猛攻撃が始まった。

 アリアーニコの攻撃はまるで大蛇のようで、予測不能な起動を描きながらドルチェットへと襲い掛かる。

 剣形態、槍形態、鎖鎌形態と目まぐるしく変わる戦法に、まるでそれぞれ違う武器を持った三人を相手にしているようだ。

 先のプルチアやネビオーロなんか比べ物にならない。

 次々にリーチを変え、軌道をねじ曲げてどんな角度からも咬み突いてくる。


 しかしその猛攻をドルチェットはいなしていく。

 普段なら問答無用で切り捨てるドルチェットが一つ一つ丁寧に、それこそ踊るように。

 さすがに予想外だったのかアリアーニコの顔に焦りの色が滲み始めた。


 そりゃそうだろう。

 いくら強くなったからといってドルチェットは少女で、しかも背丈ほどの大剣でこれ程までに立ち回れるなんて思わないだろう。

 俺もドルチェット知らなかったら少し吃驚する。

 ブリオンは普通だけど、現実にいるとは思わないから。


 そんな感じでどんどんアリアーニコは追い込まれていく。

 体力オバケのドルチェットとこんな速度で斬り合うのはさすがに疲れてくるのか、アリアーニコの息が上がっていた。

 ドルチェットの大剣なのに超接戦気質でやりにくいからっていうのもあるだろう。

 その証拠に、アリアーニコは徐々にドルチェットから距離を置こうとしてきた。

 そりゃリーチがある分遊離になるのはアリアーニコの方だ。

 その意図を感じたドルチェットは、何故か自ら距離を取れるように、アリアーニコを大剣の重さを利用して蹴り飛ばしてやった。


 何か企んでいるなと思っていると、となりのアスティベラードも。


「何か企んでおるな…」


 と見事心の声とハモった。


 上手く距離を取れたアリアーニコは二柄剣を再び回し始める。

 おそらく接近されない戦法にするのだろう。

 観察していて分かったのだが、アリアーニコの二柄剣の鎖は回転速度、もしくは負荷によって内蔵されている鎖が出る仕組みらしく、ゆっくりと鎖が伸びていくのを見て今までよりも威力を出そうとしているのがわかる。


 突如としてアリアーニコが大きく踏み込み、凄まじい速度でドルチェットへと二柄剣を発射した。

 一射、二射、三射と、剣というよりは投擲槍だ。

 いや、水平に飛んでくるから矢の方が的確か。

 アリアーニコは完全に遠距離戦法に切り替えたようで、次々に二柄剣を繰り出していく。

 遠心力と重量で威力を増した二柄剣は受け流されたり受け止められたりする度に轟音を響かせ、受け続ければ大剣が折られてしまうのではないかとハラハラしていれば、今までその場から動かなかったドルチェットが当たる直前で横に跳んで回避し、標的を失った二柄剣がドルチェットの横を通過する。

 柄頭まで通過した瞬間に、ドルチェットは大剣を振り上げた。


「おっらァ!!!」


 振り下ろした先は二柄剣に繋がる鎖。

 突然横から加えられた力に二柄剣の軌道が大きく外れて弧を描く

 このままでは鎖が大剣に巻き付くぞと危惧したが、ドルチェットはそれこそが目的とばかりにわざと大剣を上へと動かして巻き付かせた。

 驚きに目を見開くアリアーニコを横目にドルチェットは勢いを無くした二柄剣を捕らえ、思い切り引っ張った。


「ッ!!!???」


 アリアーニコがドルチェットの方へと飛んだ。

 引き寄せられるレベルではなく、文字通りに飛んだ。

 人間、予想外の事が起きると咄嗟に動けなくなるものだ。

 例えば、鎖から手を離すとか。


 だがそんな判断すら出来ずにアリアーニコは無防備にドルチェットの目の前まで飛び、顔面にドルチェットの拳が叩き付けられた

 なんとか腕でガードしたアリアーニコだが、その際に鎖から手を離した為に今度はドルチェットの拳の勢いで逆方向へと飛ばされた。

 さすがに拳程度ではあまり飛ばなかったが、それでも地面に背中を打ちつかせることには成功した。

 背中を強打して咄嗟に動け無いアリアーニコの胸元をドルチェットは踏みつけ、顔の横に大剣を突き刺した。

 耳元数センチだ。刺した時の振動すら感じるだろう。


「降参か?」


 大剣にもたれ掛かるドルチェットが、動けないアリアーニコへ問い掛ける。


「ンな訳……、!!!」


 抵抗しようとした時、アリアーニコは気が付いた。

 自らの剣が遥か遠くへと転がっていることに。


「………、…………」


 今の状況をどうやったら打破できるかを一瞬考えたのだろう。

 しかしすぐに無理だと悟ったアリアーニコは力を入れていた拳を緩めた。


「………降参だ」



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