イベント配布ではなく、カスタマイズ武器
ふ、と、ネビオーロから声が発せられた。
何だか嫌な予感がする。
その予感は的中し、ネビオーロは即座に足元の折れた剣を引っ掴んで吼えた。
「ふざけんじゃねーぞテメェ!!!!俺はまだ負けてねェ!!!!」
ドルチェットに向かって剣を投げた。だが、その剣はドルチェットに届く前にクレイの出現させた盾で弾かれたけど。
剣が弾かれた事にも怒り、次は刃を投げ付けようとした時。
おい、と、ただ呼び掛けただけの一言がやけに響いた。
威圧するような低い声でもなく、かといって大声でもない。
強いていうならば、誰もいない暗闇の、それこそ真っ暗な洞窟のような場所の奥で水面にモノが落ちたような、静かだが寒気がする声だ。
「負け犬は潔く下がれ」
サンジョヴェーゼだった。
何を考えているのか分からない表情は変わらないが、明らかに声は不快感を孕んでいた。
固まるネビオーロ。
「聞こえなかったのか」
「……、はい、兄上…」
絞り出すように答えながらも、ネビオーロは恨むようにドルチェットを睨み付け、歯を食い縛りながら兄達の方へと戻っていく。
サンジョヴェーゼが今度はクレイを見る。
「私の愚弟は下がらせた。君の方も下がらせるべきでは?」
クレイが盾を消し、俺の方を見る。
「ディラ!大丈夫だ!」
俺はクレイの指示通りに弓を下ろした。
投げこそはしなかったけど、もし投げてたら撃ち落とそうと思っていた。
その時、クレイの目にギラリとしたものが見えた気がした。
何かするつもりだ。
クレイが戻っていくネビオーロに向かって言う。
「音読させてもこれとはな……。決闘のルールは重んじるって言葉は嘘だったのか??お前でこれなら次の対戦も怪しいな!!最終的には全員で、っていう可能性もあるよな??違うか??」
ネビオーロがカッと目を見開いて怒鳴り付けようと口を開いた次の瞬間。
「ネビオーロ」
と、寒気のする声がネビオーロの動きを止めた。
慌てたようにネビオーロは声の主、サンジョヴェーゼへと顔を向ける。
サンジョヴェーゼは続けた。
「負け犬の遠吠えは止めろ。見苦しい」
ようやくネビオーロは言葉の意図を理解してかグッと拳を握り締めながら去っていった。
一応これは牽制になったのかな。
それともドルチェットへと向いていたヘイトをクレイへと向けさせる作戦だったのか。
もしそうなら作戦は大成功と言えよう。
その証拠にアリアーニコとバルベーラはクレイに視線を向けていた。
そんな中、ひとりサンジョヴェーゼだけは常に落ち着いているように見える。
本当にレッドジュエルなのか疑うほどだ。
「盾」
と、サンジョヴェーゼがクレイに向けて声をかけた。
「ここで少しばかり休息を挟む事にする」
「自分は全然疲れてな───「良いのか?二戦ぶっ通しのドルチェットなら貴方の番には好都合でしょう?」
クレイの言葉にサンジョヴェーゼは口許に緩く笑みを浮かべた。
「戦うのなら、万全な状態の方が───」
サンジョヴェーゼの視線がドルチェットに向けられる。
「───切り刻みがいがあるだろう?」
その言葉でドルチェットがサンジョヴェーゼをヤバイやつと言っている意味が嫌というほど理解できた。
「怪我は?」
「無い!!!」
ドルチェットにしてみれば、ようやく体が温まってきたのにって所だったのだろう。
大層不満そうだった。
「疲れも無さそうだよねぇ」
「あるわけねーだろ」
「だよねー」
そもそもこれで疲れていたら聖戦を生き残れてない。
ドルチェットを万全な状態に戻す為の口実で、本当はクレイに煽られて頭に血が上った残りの奴らを冷静に戻すため、なんだろうなと思う。
実際にクレイが残念そうにしていたから、その可能性もあるだろう。
「一応回復してもらえ」
アスティベラードが促す。
「だから疲れてないって」
「やっておけよ。せっかくだし」
クレイに言われて渋々とドルチェットが折れた。
「……わぁーったよ」
失礼しますとノクターンがドルチェットに回復魔法を施した。
さて、とドルチェットが立ち上がる。
少し休憩をしたが、温まった体はそのままにコンディションはノクターンのおかげで向上した。
次の対戦相手であるアリアーニコも位置についており、見たこともない変わった形状の剣を手にしていた。
束の部分が上下二つあるように見え、見方によっては剣の柄と十文字槍が合体したようにも見える。
そして柄頭には飾りなのか短い鎖が垂れ下がっていた。
「変な剣」
「あれは二柄剣です」
ジルハが答える。
「剣でありながら槍でもある特殊な剣で、扱い方次第で干渉範囲を大きく変えます。特にアリアーニコ様は更に改良していて、攻撃範囲を見誤るんです」
「へぇ」
世の中色んな武器があるんだな。
ブリオンでも様々な武器はあったなと思い返す。
俺の印象で一番だった剣は冷凍本マグロ剣というネタ剣だったが。
なんのイベントで獲得したんだろうな、あれ。
「そんじゃ行ってくっぜ!」
ドルチェットがストレッチしながらアリアーニコの元へと向かい、クレイとジルハが先ほどの位置へと着いた。
さて、三戦目だ。




