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人間ロケットを応用した

 

 バルベーラの説明が始まる。


 一つ。

 決闘の時間は無制限。

 決着がつくまで時間の限り戦うことが出来る。

 二つ。

 いかなる者も決闘の妨害はしてはならない。

 したものは切り捨てて構わない。

 三つ。

 事前に宣告しなければ他の者の支援を受けてはならない。

 したものは支援者と共に切り捨てて構わない。

 四つ。

 魔法具の使用はしてはならない。

 使った場合、訓練生送りとする。

 五つ。

 使い魔の介入は妨害と見なす。

 介入してきた使い魔は処分とする。

 六つ。

 相手の武器を破壊しても構わない。

 しかし破壊されたものは即敗北と見なす。

 七つ。

 武器破損、もしくは敗北と宣言しない限りは敗者ではない。


 計七つの簡易ルールの確認が完了した。


「どう?これでさすがに下民の頭でも理解できたかな~?これで出来なかったらさすがに産湯からやり直せって感じだけど~?」


 バルベーラが煽るが、クレイだって負けちゃいない。


「ちゃんと復唱してもらったので、これですぐ手が出る皆様にもルールを再認識していただけたようで安心ですね」


 そうクレイが煽り返す。


「言うじゃない~、亀(※)の癖に。ひっくり返して剣山のようにしてやろうか~」

(※)亀、盾職に対しての蔑称。

「爪楊枝みたいなその剣で刺さりますかね、オレの盾に」


 クレイとバルベーラの間にバチバチと火花が散っていた。

 穏和そうに見えるけど、クレイも結構好戦的なんだよなぁ。


「なァー、いい加減にさっさと戦ろうぜェー!!!待たされんの嫌なんだけどォー!!!」


 痺れを切らしたプルチアが割り込み、バルベーラは気を取り直したように鼻で嗤った。

 せいぜいイキっていられるのも今のうちだ、みたいな感じか。


「そうだな」と、今まで黙っていたサンジョヴェーゼが口を開く。


「ここで言い合っても結局は剣がモノを言う。さっさと始めよう」


 サンジョヴェーゼが仕切り、レッドジュエル家の対戦順を伝える。

 そこはやはり年齢の下なプルチアから始めるようだ。

 さっさと下がれと命令するサンジョヴェーゼに、クレイはパーティーのリーダーだから、近くでドルチェットの勝敗を確認する権利があると主張した。

 それにサンジョヴェーゼは「勝手にしろ」と一言だけ言うと、踵を返した。





 ドルチェットだけ残してクレイとジルハが下がる。

 下がると言っても最低ラインまでで、俺達のところ迄は下がらない。

 万が一に備えてだ。

 レッドジュエル家も反対側の最低ラインまで下がっていた。


 真ん中に残されたのはドルチェットと対戦相手。

 ドルチェットの初めの相手は双子の兄、プルチアだ。


「あいつは確か、功太みたいな高速剣を使ってた奴」


 プルチアは速度重視の剣士だ。対してドルチェットは大剣だ。

 普通に考えるならば機動力はドルチェットの圧倒的に不利だけど……。


 ドルチェットを見る。

 小型の体躯である彼女は身の丈近くもある大剣を構えていた。


 ドルチェットの強さは、そんな常識が通じない事だ。


「へっ、一気に終らせてやるぜェ」


 プルチアも剣を構え、互いに臨戦態勢に入った、次の瞬間プルチアの姿が消えた。

 再び現れた時にはドルチェットのすぐ目の前で、このままの勢いのまま猛攻を加えるのだろう。

 だが、プルチアは次の瞬間には空へと飛ばされていた。

 プルチアは何が起こったのか分からぬ顔のまま地面へと叩き付けられ転がっていった。


「…………」


 気まずい無音の時間が流れる。


 早すぎて何が起こったのか把握が出来ていないんだ。

 動かないプルチアに向かってドルチェットが歩いていくのを眺めながら、俺はさっき目撃した一連を思い返す。


 まずプルチアがドルチェットに一気に距離を詰め、猛攻を仕掛けようとした瞬間。

 プルチアの動きを完全に見切っていたドルチェットがプルチアの接近に合わせて大剣をフルスイングしており、大剣によってプルチアがホームランされたのだ。


 考えてみれば当然の結果とも言える。

 なにせドルチェットは自力で人間ロケットもどき(人間を上空へと叩き飛ばす技)を生み出したのだ。

 どれくらいの距離、速度、タイミングを合わせれば飛ばせられるかを熟知している。

 しかもプルチア自体は直前に気が付いて防御していたが、あいにくドルチェットは大剣を縦ではなく横でスイングしており、回避じゃない限りどうやったって打ち上げられるのは確定していた。


 良かったな、横面で。

 刃の縦面だったら真っ二つだったぞ。


 そんなことを思っている内にドルチェットが大剣の柄で大剣スイングと落下の衝撃で動きが鈍っているプルチアをボコ殴りにしており、剣技とは??と疑問が沸き上がった頃にドルチェットが容赦なくプルチアの剣を折っていた。

 容赦がない。

 なんとなしに兄達は一体どういう顔をしているんだと盗み見れば、ネビオーロは爆笑しており、アリアーニコとバルベーラは冷めた目で見て、サンジョヴェーゼに至っては剣の手入れをしていた。


「おい!」


 クレイが兄達に呼び掛ける。


「武器が破壊されたからドルチェットの勝利でいいよな!!」


 そういえば武器が破壊された場合は即敗北のルールがあったかと、先ほどのルール確認を思い出す。


 するとめんどくさそうにバルベーラがクレイを見て。


「そうだね、いいよー。ダーシェットの勝ちで」


 と返答した。

「ま、あいつは一番下だしね」と、小さく言っているのも聞こえた。

 負け惜しみはみっともないぞ。


 ドルチェットが準備運動してやったぜと言わんばかりの顔で戻ってきた。

 殴られ過ぎて気絶したプルチアはそのまま放置らしい。

 なんつー家族だ。

 ともかくもこれでドルチェットは一勝したわけだ。


「ヘッヘェー!」


 定位置に戻ってきたドルチェットに向かってネビオーロは鞘から剣を抜き放つ。


「さぁーてと!!そんじゃあ次はお兄様が相手してやんぜぇ!!」



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