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館を燃やしたのは後にも先にもコイツだけ

 三人が風呂にいっている間に三人+ロエテムででちょっと雑談することにした。

 お腹すいたので軽食を食べながらだ。

 アスティベラード達が買ってくれた軽食を食べながら、俺は疑問に思っていたことをジルハに訊ねてみた。


「……あのさ、ちょっと聞きたいことあるんだけどいいかな?」

「なんですか?」

「ドルチェットの事をさ、なんでダーシェットって呼んでたの?」

「それオレも気になってた。なんで?」


 ずっと気になっているダーシェット呼び。

 もしかしてドルチェットは偽名なのかと思ったからだ。

 この世界では偽名を使う者は珍しくない。

 魔術師ならば真名を隠すし、盗賊の人達だって本名じゃない人が大半だった。

 それに、なにより俺自身が“ディラ”と名乗っている。


 いや別に偽名を使おうとは思ってなかったけどさ。


 んー、とジルハは少し悩んだ後、ドルチェットに話したってことは内緒ですよと前置きをしてから話し始めた。


「さっきも言いましたが、ドルチェットは双子で生まれたんですよ。プルチア様、一番下の兄とですね」


 あの顔が激似の人である。


「産まれる前、ドルチェットは男だと思われていたんですよ。それで、男名の“ドルチェット”と名付けられました」








 しかし実際に産まれたのは“女”だった。


 レッドジュエル家では一度付けた名前を変えられない。

 本来ならば女用の名前を付けなければならないのに、男用の名前を付けてしまった。


 苦渋の案で、ドルチェットの綴りのまま捻った呼び方、つまりダーシェットとなった。








「そういうのって普通、産まれてから名前付けないの?」

「産まれる前に性別を判断する占い師がいるんですよ。

 レッドジュエル家では男児一人に付き獣人の付き人を付けないといけないので、おそらくその準備や授ける初剣の用意もありますから」


 剣はともかく、獣人を探すとなると大変だろうな。


「まぁ、外したことで重罰を課せられて即解雇にされたそうです」

「可哀想に」

「それにしてもそんなに準備しないといけないなんて大変だな」


 クレイも同情している。


「その占い師の間違いのせいでドルチェットが大変な思いをしたのは事実ですし、僕的にはちょっと恨んでますけどね」

「大変?」

「ドルチェットだけレッドジュエル家の女名じゃない事での見下しや嫌がらせも結構ありましたし、剣を持った頃で自分の名前の秘密を知っちゃったので、まぁ荒れましたね」


 ジルハが遠い目をしている。

 相当に大変だったんだろうな。


「その荒れようのほとんどが剣技に向いたのであれで済んでますが、ドルチェットなりに目標はあったみたいなんですよね」

「目標?」



「“ドルチェット”の名前を認めさせる

 つまりは剣士として認められるということです」



 意外だった。まさかそんな目標があったなんて。


「いつも自由奔放に生きているように見えるドルチェットの過去がこんなにも複雑だったなんてな」


 クレイも同意見なようで驚いていた。

 だけど、その目標はある意味ドルチェットらしいとも思った。


 この流れなら、アレも聞けるかもしれない。


「……、ちなみになんだけど、その…気のせいかもしれないんだけど…、“最下位”って……?」


 ピクリとジルハが反応し、困ったように笑んだ。


「聞こえてましたか。

 はい、最下位っていうのは僕の事です」

「最下位ってどういうこと?」

「僕ら狼系の獣人は上下間系が厳しいんです。それは主に主人の強さに左右されますね。

 ほら、ドルチェットは女の子ですから…」


 それで全てを察してしまった。

 あの兄弟も、それに従っていた使い魔も嫌な顔をしていた。


「獣人なのも大変なんだね」

「そうなんですよ」


 だからあんなにもジルハが怖がっていたのだと納得した。

 狼じゃないけど、犬にも厳しい上下関係があると聞いた。きっとあんな感じなんだろう。

 そこでふとある言葉を思い出した。ついでに聞いても良いかもしれない。


「そういえば話しは変わるけどさ、なんか館燃えたとか言ってなかったっけ?」


 結構前、確かマーリンガンと初めて会ったときにボソリと聞いたような気がする。

 火事にでもあったのかなと思ってたけど。

 ジルハは死んだ目で答えた。


「いえ、燃えたのではなく、ドルチェットが“燃やしました”」

「ん?」


 クレイが聞き直した。


「燃やしました?」

「燃やしました」

「……なんで?」


 クレイが困惑している。俺も困惑した。

 まさかドルチェットが放火犯だとは思わなかった。


「強制レベリセ後、ドルチェットは別館に監禁されたんですが、普通にぶちギレて装飾品を使って扉を壊し大暴れしたそうで、使用人を外に皆追い出した後に放火したんです。

 凄く燃えてて、さすがに長いこと付き合っていた僕もドルチェットに恐怖しましたね。

 とはいえドルチェットがやらかした以上、僕も道連れでしたけど」


 再び遠い目。

 なんだかジルハが可哀想になった。

 たぶん、誰よりも苦労してる。


「…………、でもドルチェットだって勢いで放火したわけじゃないんですよ」


 どういうことなんだろうか。


「自分はこの大火よりも強く大きくなってお前らを飲み込んでやるってメッセージを込めて、とか言ってましたね」


 そういうジルハは心なしか誇らしげだった。

 なんだろうな、ジルハのこの表情。

 ……わかった。これあれだ。保護者の顔だ。


「剣士の家系って面倒くさいんだな」

「いやぁ、うちだけだと思いますよ」


 ジルハ少し笑っている。

 ともかくも俺達はドルチェットが負けるだなんて思ってない。

 少し怖いのはあの一番上の兄だけど。


 寒気のするような気配だった。


 だけど、ドルチェットだって恐ろしい速度で強くなっている

 それこそ、功太に迫る勢いで。


いつも読んでいただきありがとうございます!!

この物語が面白い!!!ディラの活躍がもっと見たい!!という方は、ぜひ「ブックマーク」「評価」をぽちっとお願いします!!

作者のテンションと自信が上がります!!!



宣伝とかではないのですが、作者、Xやpixivでも活動しています。

Xでは主にこの弓の裏話や落書きをランダムで投稿。

pixivではこの弓の落書きまとめや宣伝画なんかを載せております。

気軽にお越しください!

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