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状況を考えろと思った

 

 ワタワタとロエテムの手の指示に従って町に戻ると、町から謎の煙が立ち上っていた。

 ロエテムは明らかにそちらを指差している。


「!」

「アスティベラード!!」

「ディラ!クレイ!!」


 到着寸前に、横道からやってきたアスティベラード達と合流を果たした。

 ノクターンの頭の上にはトクルが乗っかっていた。

 その代わりなのかロエテムらしき姿がない。

 足を止めずに二人に訊ねる。


「どうしてこうなったの?ていうかロエテムは??」


 アスティベラードが答える。


「わからぬ!トクルはただ指定された緊急事態を告げるだけ、今回はドルチェットが兄と接触、と指定しておった。ロエテムは先に行っておる!!移動した場合追い掛けられるようにな!!」


 すげえ、と俺は感動した。

 ついにロエテムは自走型GPSになったのか。


 しかしそれにしても不思議だと煙の収まった目的地を見ながら思う。


「だけどジルハがいてなんでだろう??」


 ジルハの探知能力は伊達じゃない。

 それなのに突破されたというのは正直信じられなかった。

 そんな俺の疑問にクレイが言う。


「もしかしたら複数で追い詰められたのかもしれないな。どっちにしろ急ぐぞ!」


 ロエテムの手に従って走っていると、道の先から怒鳴り声が聞こえてきた。

 大通りの真ん中を野次馬が取り囲むようにしている隙間から様子をうかがえば、真ん中にいたのはドルチェットだった。

 煙が出ていたのは近くの建物が破壊された際に生じたものだったらしい。


 あの、と、クレイが野次馬の一人に話し掛けた。


「何があったんですか?」

「あ?あー…」


 話し掛けられた野次馬の一人はクレイの質問に答えた。

 要約すると、突然男が女の子に向かって剣を振り回して建物を破壊した挙げ句、蹴りを入れようとしたり、怒鳴り付け始めたのだそうだ。

 最もその蹴りは空振りしたそうだが、それが怒りをヒートアップさせたらしい。

 今は保安士(警察)の到着待ちとのこと。

 不味いな、もし保安士が来てしまったらドルチェットも捕まってしまうなと考えていると、トントンと肩をつつかれた。

 振り替えるとノクターンだった。


「ディラさん…、ロエテムが戻ってきました…」


 ノクターンの後ろにはローブを纏った人が。

 中身はもちろんロエテムだ。

 消音の魔法を掛けて貰っているのか、鎧の擦れる音があまりないから気が付かなかった。


「クレイ、ロエテムきた」

「!、わかった」


 クレイがロエテムに手を返した。

 手を再結合し、早速ロエテムは最近持ち歩いている手帳に何が起こったのかを記載しはじめた。

 どうやら兄の一人と一人になったドルチェットが鉢合わせし、言い争いになって向こうが突然剣を抜いたようだ。

 辺りに怪しい人物は居ないという。


 改めてドルチェットと相対している人を見た。

 俺と歳が変わらなさそうな男がドルチェットを口汚く罵っている。

 恐らく兄だと思うのだが、ドルチェットとは髪の色が違う。

 ドルチェットが青みを帯びた銀なのに対して、相対している兄の髪は燃えるような赤だ。

 だけど、顔つきでドルチェットの血族なのはわかる。


「大剣じゃないのか」


 男の得物はドルチェットの大剣と違って細身の剣だった。

 てっきりみんな大剣を扱うパワー系剣士なのかと思っていたけど、違ったみたいだ。


 そんな敵意マシマシな兄に対してドルチェットは剣を抜いていなかった。

 意外だったが、とりあえずいつも短気なドルチェットが冷静で良かった。


 ところでジルハはと、千里眼を駆使して姿を探すと、近くの建物の側で両手に串焼きを持って固まっていた。

 なんであんなところにと思ったが、その姿を見て悟った。

 たぶんドルチェットに言われて買いに行った数分の間に接触されてしまったのだろう。

 じゃなかったらジルハの鼻で回避できるはずなのだ。


 今は風向きが良くなくてこっちに気が付いていないみたいだ。

 何とかして合流できたことを伝えないと。


「ケイケイ」


 トクルがノクターンの頭から俺の肩にやって来た。

 さすがは空気が読める鳥。


「トクル、ジルハに知らせて」


 すぐさま飛んでいくトクルがジルハの頭に止まって俺達の方を向く。

 それにジルハが釣られて向き、こちらに気が付いた。


 クレイが身振りで簡単な作戦を伝える。

 こくりと頷くジルハ。


 すぅ、とアスティベラードが大きく息を吸い込むと同時に耳を塞いだ。


「  逃げるぞ!!!! 」


 ギーンと音が振動し、野次馬が驚いたように身をすくめたその瞬間、這いつくばってろ!!!と兄がドルチェットに攻撃を仕掛けた。

 ドルチェットが柄に手を伸ばそうとした瞬間、兄とドルチェットの間に大盾が出現した。

 クレイの盾だ。


「あ”??なんだこれ!!?」


 兄の攻撃がクレイの盾によって阻まれた。

 すぐさまエクスカリバーを展開し、矢に【煙幕】スキルを付与した。

 視覚重視の生物には有効な煙だ。

 白い煙のなかには、光を反射する物質が含まれていて、それにより影とかを消し去る効果がある。

 それを盾と兄の間に射ち込むと、兄が反射で矢を切り払った瞬間に辺り一面に煙が吹き出した。

 斬られた衝撃で、光を反射する物質が弾けて爆竹のような音を発生させた。


 煙と音のコンボで野次馬も驚いて逃げ惑い、その隙にジルハが隠密で二人に近付いて煙玉で追加の煙幕を張るのが見えた。


「逃げるぞ!!!」


 クレイの指示によって、俺達はすぐさまその場から離脱した。



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