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毒と薬は紙一重

 

「よし!やるぞ!!!」


 ドルチェット達が陽動をしている間に俺達はせっせとお金を稼ぎ、安静期間中のアスティベラードとノクターンが食料と、買い足せなかったものの補充──主に石鹸や調味料──をしていく。

 俺達は隠密とアスティベラードから借りた姿変えの魔法具を活用して手っ取り早く片付けられるクエストをこなしているのだが、特に妨害もなく実にスムーズにいっていた。

 アスティベラード達の宿探しもすんなりと上手くいっているし、ドルチェットとジルハが気を利かせてわざと匂いの強い温泉地帯や関係ない場所をうろついてくれたからだろうか。


 ちなみに、なぜさっさと街をでないのか?という理由としては今の状態で街を出れば匂いであっという間に追い付かれ、真っ只中の荒野で襲撃を受けることになってしまうから。

 ジルハ曰く、ここはありとあらゆる匂いが渋滞しているから特定の匂いを追いにくいのだそうだ。

 なのであえて街を出ずに人に紛れて準備を進めている。

 幸いにもあと数日で一般用の馬車が出るらしいので、それに乗るために費用を稼いでいる、というわけだ。


 しかしそれは運が良い場合だ。

 最悪の自体も考えないといけない。


 一番の問題は、荒野で匂いを残さずにどうやって逃げるか、だ、

 これが結構難しい。

 ジルハに色々聞いたけど、案外匂いって残りやすいらしく、特に獣人は知能が高いぶんどこまでも追うことができるらしい。

 その事についてはクレイと何度も話し合っている。

 一応、追跡対抗手段はもっぱら活用中の隠密スキルなのであるが、気配を薄くする効果と共に匂いも付きにくくなるらしいので、先日の風呂上がりからずっとスキル発動してるお陰で、とりあえずはドルチェットの陽動が上手くいっているっぽい。


 といってもこれも限度があるので、ダメそうならアスティベラードに香水を借りる予定である。



「ふぁぁー…」


 アクビを一つこぼす。

 追われている身ではあるが、四六時中気を張っていられない。


 気配察知スキルを活用して見付かっていない確証のある今はこうして街の外で試したい事があるというクレイの実験に付き合ったりしている。

 ていうか今思ったんだけど、クレイの職業シールダーって今更ながらに不思議だよな。

 他の職種は主に武器に能力や攻撃力を乗せる感じなのに、クレイのシールダーはもはや盾無しでも攻撃を防いでいるような気がする。

 そう言えば。


「いや無理だって。盾無かったらそもそも巨大盾出せてねーから。お前の弓と一緒」


 とのこと。

 どうやら身に付けている盾を基準、というか、砲台みたいな感じで場所指定やサイズ指定をしているらしい。

 だから盾が無かったらそもそも出せないとのこと。

 受けた重みもダメージも直に盾越しで来るからアレらは間違いなく盾で、連結していると説明された。

 どういう原理なんだろうな。

 俺がいうのもアレだけど。


 それで、実験内容はこの盾をもっと自在に移動させれるようにしたい、らしい。


 クレイ曰く、出現させた盾は地面を支点に上下左右と傾けられはするけど、基本的には出現した、もしくは配置した場所からは自発的に動けないそうで、これを動かせるようになれば盾を相手にぶつけて攻撃にできるのではないか、とのことだった。


 なるほどとは思いつつ、ブリオンでのシールダー達を思い出してみた。

 シールダーというか、タンク連中だったが、正直知ってる人が少なすぎて盾をぶんまわしている人にはあったことはなかったから、可能なのかいささか疑問である。

 とはいえ、実際にできたら面白そうだ。







 練習の結果、出来なかった。


「やっぱだめか~」


 クレイが嘆いている。

 もしできたら格好いいなって感じだったけど、残念だ。


「動いちゃうと機能的にダメになっちゃうんじゃない?踏ん張り的な?」


 俺がそう言えば、クレイは少し考えた後に納得していた。


「それもそうか。それじゃあ別の手を考えるかな」


 心当たりでもあったんだろうか。

 さっさと次に移るらしい。潔くて良いと思います。





 クレイが次の準備に取りかかっている間、俺はとあるものを取り出そうとして鞄をまさぐり、思い出した。

 数が心許ない。


「そうだ。クレイ、またアレ頂戴」

「もうないのか?」

「うん、もうこんくらいしかない」


 鞄から残り3本となった小瓶を取り出して見せた。

 中には赤みがかった液体が入っている。


「減るの早くないか?10本渡したのついこの前だぞ」

「いやー、そうなんだけど…。結構平気になってきたから飲む量増やしたし」


 そう言えば、クレイにマジかこいつみたいな顔された。

 進歩している証拠なのに。


「わかった。つっても、原液のストックないから早めに調合しておくよ」

「ありがとう」


 二本を鞄に仕舞い、一本だけ蓋を開けて中の液体を飲んだ。

 相変わらず舌がビリビリとする。

 水でも飲むように一気飲みした俺を見ながらクレイが言う。


「ちゃんと体の様子をみながら服用しろよ?薄めてあるとはいえ、毒なんだから」

「それなー」

「わかってないだろお前」


 わかっているわかってないはさておき、俺はいざという時いつも毒食らって行動不能になるので、実は少し前からクレイに調合してもらった毒を服用していたりする。

 これは【耐毒】スキルの習得の一般的な方法で、一番リスクが少ない。

 とはいえ、体は風邪引いたときみたいにだるいし重いけど、それだけでも経験値はちゃんと貯まってくれるのだ。


 さっさと耐毒スキルを獲得して、足手まといにならないように頑張らないと。


 空になった瓶を空瓶ようの袋に入れながらクレイに要望を伝えてみることにした。


「スキルさ、もう少しで発現しそうだから、濃度上げてみてよ」

「調子乗るなお前。毒だっていってんだろ」


 怒られてしまった。


 その時、突然腰に下げていたロエテムの手がバタバタしだした。


「!」

「なんだ!?どうした??」


 慌ててロエテムの手を地面に置くと、指で地面に文字を書き始めた。

 それを二人して覗き込む。

 地面には『ドルチェット、兄と接触大乱闘!!!!』と書かれていた。


「大変」

「急いで戻るぞ」


 最悪の事態が起こってしまった。


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