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やっと稼げました

 

 ここには、ギルドは無いが似たような依頼を受理して配布する相談屋というものがあるらしく、それを通じてクエストを受けることになった。


「なんの依頼を受けたの?」

「討伐か?」


 ドルチェットがウキウキと訊ねるが、それをクレイが、いや、と一言否定した。


「今回は採取、いや、他パーティーの尻拭いの依頼だ」

「尻拭い?」


 クレイによると、この街の名物である温泉卵の回収をして貰う際、近くを縄張りにしていたモンスターに襲われてしまい回収が出来なかったらしい。

 結構な凶悪モンスターなので困っているという事と、温泉卵なのでこれ以上煮たくないとの事だった。

 トロトロが売りの温泉卵が台無しになるのは確かにいただけない。


「昨日の夜失敗したから、昼前にはどうしても回収したいんだと」

「ねぇ、さすがにそんなに時間経っているのならダメになってるんじゃない?」


 卵なんてものは一分単位で固さが変わるのだ。

 さすがにカチカチになっているんじゃないかと指摘するが、クレイはそこは大丈夫と言いきった。


「卵は普通のやつじゃなくて、岩炎鳥(フィロック)の卵だから熱に耐性があるから大丈夫だ。知ってるよな?」


 脳内にブリオンのフィロックが思い浮かんだ。

 やつは確か、溶岩近くに巣を作って子育てをする巨鳥だったはず。

 それなら大丈夫かと納得した。


「知ってる。けど、それならそんなに焦ることはなくない?」


 そんな俺の疑問にクレイは答えた。


「問題は味が変わるからなんだと」

「味?」

「卵の味??」


 ドルチェットと共に味ってなに?と詰め寄ったが、味の情報はさすがになかった。


 どんな味なんだろう、気になる。


「んじゃ早速行くか」






 ずずんと音を立てて大蛇が倒された。


「厄介なモンスターって、鮫刺蛇(シャズネーク)だったのか」


 やつは確かに厄介なモンスターの一つだった。

 鱗が刺のように鋭く、そのせいで刃が通りにくくなっている。

 何よりも嫌なのがその顔だ。

 倒して動かなくなった奴の前方に回り込む。


「……うーん、こわい」


 この蛇、顔が鮫なのだ。

 しかも牙が何度でも生えてくる仕様になっているから、噛み付かれたまま歯が抜けて次の攻撃に移れる三段撃ち状態。

 とはいえ、どんだけでかくても、どんだけ鱗が尖っていようと聖戦のボスに比べればなんてことない。

 なんせうちには斬撃が飛ばせるドルチェットと、的確に急所を見付けるジルハと、どんなものでも止めるクレイがいるのだ。

 正直言って敵ではない。


 実際ジルハがシャズネークの目と顎の腱を切断し、クレイが盾で動きを止め、そのままドルチェットが一刀両断にして仕留めたのである。

 ちなみに俺は何をしていたかというと、後方で応援してた。

 万が一もう一匹いた時の戦力としての予備だったわけだけど。


「なーんか、大袈裟に忠告されていた割には、何てことなかったな」


 そんなことをクレイが言った。

 うちのパーティーは聖戦に参加しすぎて認識がバグり始めているようだ。


「そんじゃ、一応倒した証明取っていくか。報酬上乗せにはなるだろ」


 ごりごりと鱗を剥いで鞄に放り込む。鱗単体でもまるでナイフだ。

 手を突っ込むときに切らないか気を付けないとな。






 そのまま地図の指示通りに進んでいくと、湯に漬かったデカイ卵があった。

 黒地に赤い模様、間違いなくフィロックの卵だ。

 その卵は太い網に入れられており、その編みは近くの岩に滑車を挟んでくくりつけられていた。


「網に入れられてるね」

「これがないと湯から引き上げられないからな」


 足元に気を付けつつ移動をする。

 近くの穴には煮えたぎったお湯がボコボコと泡立っていた。

 こわ。


「おい、ディラ!そっち持ってくれ!」

「あ、へーい」



 水蒸気で濡れた縄のせいで手こずったけど、無事温泉卵を回収することができた。

 卵回収に必要だろうと貸し出された荷台に乗せる。

 まさか滑車が横移動まで対応しているとは思わなかったが、定期的に出す品ならシステム化しててもおかしくないかと納得した。

 荷車にも卵を安定して乗せるための工夫も施されていて、備え付けのベルトを巻けば、悪路でも問題なさげに見えた。

 といってもフィロックの卵は高熱に耐えられるように殻が分厚いので、恐ろしく固いから心配はないとは思うけど。

 なにせ、こいつ悪のに釘とトンカチ使うらしいし。


 よし、頼んだぞグラーイ

 ぎ、といとも簡単に荷車が動いた

 どうやらキノコリアンと同化したことによって、パワーも上がっているらしい

 キノコリアンの肉付けのお陰でルンルンで運んでいるのがよくわかる

 久しぶりの荷台で嬉しいらしい

 たまにはこうして運ばせてあげないとな

 そういえばグラーイの口の件、キノコリアンと同化したから勝手に出来ちゃったけど、どうしよう

 一応後でグラーイに聞いた方がいいのかな


 そんな感じで何の問題もなく街まで運んでくれば、待ちきれずに街の入り口で待っていた依頼人達が俺達を見るなり全力疾走でやって来た。

 その顔たるや、獲物を見つけた肉食獣のようで少しだけビビった。


「人間も、あんな顔出来るんだな」

「怖かったな」

「な」


 後ろでドルチェットとジルハがこんな会話をしていて、同感してしまった。


 ちなみにその後、シャズネークを討伐したことを報告し、証拠を見せると報酬をがっぽりと上乗せして貰った。

 しかもこの卵を少し分けてくれるらしい。

 ラッキーである。


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