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だいたい俺のせい

 辿り着いたのは大きい岩がゴロゴロと鎮座しているところで、その奥に隠されたように生えたデカイ赤い木の元だった。

 葉っぱは無く、木全体が血でも吸い上げたのかってくらい真っ赤である。


「うわぁ、真っ赤」

「凄いなこれ」


 ドルチェットと二人して木を見上げた。

 角度によっては燃えているようにも見える。

 ジルハが訊ねた。


「なんて名前の木なんです?」


 その問いにクレイが答える。


「紅玉木だ」


 クレイが答えた瞬間、「は?」とアスティベラードが変な声を出した。


「どうしたの?」


 俺の質問に答えずに、アスティベラードは驚いた表情のまま木を凝視していた。


「これがあの宝石になるのか?木ではないか」


 アスティベラードの言葉で俺は改めて木を眺めた。

 木が宝石になるなんて事があるのか。

 あ、いや琥珀があったか。

 でもあれは樹液だったはずだから木ではないのか?

 一人うんうん唸りながら考えていると、アスティベラードの反応にクレイが得意気に説明する。


「実はこいつは木のようで木じゃない、アスティベラードの言う通り“宝石”だ。地中で結晶化したものが押し出されて出来るものなんだ」

「へぇー、面白い」


 そんなことがあるのかと感心していると、クレイが続ける。


「これは人間界ではめったに出ない宝石なんだ。まぁだからこそ魔界では価値がないけど、人間界では相当な価値があるんだぜ」

「ふーん」

「そんで?これをどうすんだ?」


 ドルチェットの問いに答えるように、クレイが小型のハンマーを取り出した。

 しかも人数分。


「もちろん、これを少しだけ収穫していくんだよ」


 なるほどと、先ほどの情報と照らし合わせて思い当たった。


「あ、もしかして金欠とか?」


 俺の言葉に、ふ、とクレイが静かな笑みを浮かべていた。

 それに俺は「あー……」と返す。


 俺のせいで、ことごとく稼ぐ機会が潰れたからね、ごめんね。





 皆で叩いて収穫した。

 なかなかに大きい木だったので、一枝だけを頂戴しただけでも結構な量になった。

 その宝石を入れた袋はずっしりとした重さを感じる。


「これでしばらくは良いだろう」


 いそいそとハンマーを仕舞い、小袋をいくつか取り出したクレイに訊ねた。


「ところでさ、ここって魔界じゃん。そんで更に中心へと進むんでしょ?人間はいるの?」


 これからどんどんと魔界の奥の方へと進んでいくのに、魔界で価値の無い物を持っていてもしょうがなくないか?という疑問だ。


「次の目的地が魔界だけど人間も半数いる地域だ。そこで売り捌く」


 そう言うクレイは悪い顔していた。

 久しぶりに見る顔だな。


「と、言うことだ。一応これも各自少しずつ持っておいてくれ」


 と小袋で渡された。

 なんとも無しに中の宝石を見る。

 色と良い、形と良い、かスクアドに貰った薬と間違いそうに似ている。

 気を付けないとな。


「ん?」


 アスティベラードのマントのフードに収まっていたクロイノが身を乗り出してフンフンと宝石の入っている小袋を嗅いでいた。

 何か匂いはしていなかったと思うけど。

 ためしに嗅いでみたけど、無臭である。


 未だにクロイノは小さいままで、可愛い反面、このまま戻らないのかと心配だ。


 クロイノを撫でながらポツリとこぼした。


「それにしても戻らないねぇ」

「うむ…、ここまで戻らないのは始めてでな、正直どうすればいいのか検討も付かん」

「アスティベラードも初めてなんだ」


 自分から頭を差し出すクロイノの様子からして、具合が悪そうではない。

 とするならば、何かを消耗したのだろうか。

 そう、例えば魔力とか。


「あ、そうだ」


 宝石の袋を鞄に仕舞い、代わりに俺のお気に入りを取り出した。


「ニンジンゴ食べてみる?」


 ニンジンゴドライフルーツだ。

 なんとなくニンジンゴが癖になってしまい、村の人に分けて貰ったのだ。

 スクアドの回復飴よりは効能が薄いだろうけど、ちゃんと魔力を回復してくれる。


「はい」


 ニンジンゴドライフルーツを差し出すと、クロイノはぷいっとそっぽを向いた。

 予想外の反応だった。

 魔力が足りないわけではないのだろうか。

 それとも苦手なのだろうか。

 ニンジンゴは独特の酸っぱい匂いがする。

 そういえば猫はレモンとか苦手だったなと思い出した。

 クロイノは猫なのかはさておき、ダメなものは仕方がない。


 残念に思いながら俺が代わりに食べた。



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