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そのままだと流行り病が出るらしい

 クレイが完全に復活したので、翌日から街の復旧作業に加わることになった。

 グラーイに2人乗りするディラとドルチェット、そしてケンタウロスに貸してもらったケンタウロス用の荷車にクレイと様々な道具が乗っている。

 今回はドルチェットが手綱を握ってくれているから、俺は首だけ振りかえって景色を堪能していたクレイに訊ねた。


「ねぇ、本当に大丈夫??」

「大丈夫大丈夫」


 クレイはへらへらしているけど、君、パーティーで二番目の重体だったの分かってるかな。


「無理そうだったら、そっこー帰らすからな!ディラ!そんときは頼んだぞ!」

「うっしゃ!任せろ!」


 少し間をおいてクレイがもしやとばかりに訊ねてきた。


「ん?もしかして人間ロケット使う気か…?」


 あからさまにクレイの嫌そうな声音が聞こえてきた。


「我が儘言うな」

「これが一番早いんだよ」


 スクアド曰く、救うなら早ければ早いほど良い、らしいからな。




 今回ジルハは別動隊と共に周辺の異常がないかの確認をしに行った。

 一緒に街に来てもまだ悪臭が凄いので、結局動けなくなるよりは別行動で役に立とうという感じになったのだ。

 つまるところ適材適所という訳だ。

 本人申し訳なさそうにしていたけど、こればかりは仕方がない。


「おはようございまーす!」

「おお!ワンド達か!待ってたぞ!」


 今回はサイではなくウロが担当していた。

 どうやらサイはジルハが混ざっている別動隊の指揮を執っているらしい。

 辺りを見回すと、明らかに昨日とは様子が違う。


「なんか人多くないですか?」


 昨日よりも作業をしている人数が多い。

 ケンタウロスだけならず、様々な種族が一緒になって働いていた。

 それにウロがうむ!と頷いた。


「昨日先駆けしただろう?そこの連中が来てくれた」

「頼もしいですね」

「だな、さっさと終わらせないと大変なことににるからな」


 大変なことって何だろうか。

 ウロは俺の後ろの二人に視線を向ける。


「君たちも無理しない程度に頑張ってくれ!」





 スコップを入れて脇へと退かすという作業を繰り返す。

 単純な作業だけど、未だに灰や瓦礫がずっしりと水分を含んでいて重たく、足場も滑りやすい。

 けれど昨日よりも人数が増えたお陰で少しずつ片付いてきている実感が持てているお陰でモチベーションが保てている。


「ふーっ。それにしても…」


 退かして寄せた泥の山を見やる。

 それをケンタウロスがやってきてせっせと荷車に積み込んで差込んでいくのを見送る。


「あの泥の山どうするんだろう」


 どっかに捨てるにしたって流石に多すぎるし、埋めるにしても難しそうだ。

 疲れた身体を解すために軽くストレッチしていると、ウロが様子を見にやって来た。

 こうして巡回するのも、現場監督の仕事なんだろう。


「よ!おつかれさん。大丈夫か?疲れてないか?」

「まだ平気です。ところで訊きたいことがあるんですけど」

「なんだ?」

「集めた灰の山はどうするんですか?湿ってますけど」


 俺の質問にウロは答える。


「まぁ色々だな。石鹸なり、ガラスなり。加工すればどうにでもなる万能素材だ。放っておけば病の元になるし、なによりもご遺体も回収してやれんしな」

「ああ、そうか。そうですね」


 見えてないだけで、まだあちこちに居るのだ。


「んー…、にしても重労働だ。せめて水分がなければまだやりようがあるんだがな」


 二人して「んー」と言いながら辺りを見回していると、ふと、あるものを思い出した。

 

「……あ。俺それできますよ!」


 勢い良くウロが振り向いた。


「なに?できるのか?」

「はい、そういうスキル持ってたんで」


 アレならば何とかできるかもしれない。


「じゃあ、ちょっと頼まれてくれるか?」

「了解であります!」


 腕の見せ所だ!頑張るぞ!!




 今まで集められた灰の山と対峙する。

 街の外に集められた灰の山はかなりの量で、積み上げられた山の下からは重さで押し出された濁った水が染み出していた。


「よーし!」


 やるぞ!とエクスカリバーを手にした所で慌てて後ろに居るウロ達に忠告した。


「ちょっと熱いので下がっていて下さいね!」


 エクスカリバーを展開して、スキルを付与した矢を生成した。

 スキルの名前は『無慈悲な太陽』。

 射ち込まれた対象の水分を強制蒸発させるという火と風の複合型スキルだ。普段はスライムなんかのモンスターに使うスキルだ。

 悲しいことに俺の天敵のあのスライムには効かないけどね。


「せーの!!」


 一旦上へ向けて射ち上げ、矢が放射線を描いて落下し、灰の山に突き刺さった。

 一瞬にして灰の山から大量の水蒸気が放出される。

 先日の聖戦の攻撃よりはマシだけど、それでもかなりの熱気だ。

 蒸気が収まると、そこには完全に水分が無くなって更々になった灰の山が形成されていた。

 おおーと歓声が上がり、ウロが乾燥しきった灰を掬って状態を確認していた。


「それ、地面に直接ってのは出来ないか?いや難しいならいいんだが」

「多分できるとは思いますね。とりあえず試さないと分からないですけど」


 エクスカリバーを折り畳む。

 実は弓職というのは剣と違ってそれぞれの役割が分かれている。

 矢は「属性」「特性」「効果」をメインで担当し、弓は「補助」「威力」「範囲」「速度」等をメインで担当している。

 回復の矢は例外として、攻撃系の矢は弓とセットになっているから、矢の状態だけだと威力がだいぶ落ちてしまう。

 さっきは結構な山を一気に乾燥させるために矢を使ったけど、今回はそれがいいのだろう。


 えい、と地面に突き刺すと5㎡程の範囲が一気に乾燥した。

 いけはする。範囲はだいぶ狭いけど。

 とはいえ大量に作れば何とかなるだろう。


「ウロさん。これから大量に矢を作るのでみんなに配ってもらえますか?」









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