ちゃんとロエテムも回収されてます。
逃げる間もなく、視界いっぱいのビームが迫ってきた。
こりゃこの前の比じゃないダメージだろうなと覚悟をしていたが、ビームが俺に到達する前に何者かが視界に飛び出してきた。
ロエテムが割り込んできたのだ。
手にはでかい中華鍋みたいなものを持って。
え、もしかしてそれで防ごうとかしてます???
あの特大ビームを???
あまりにも危機的状況過ぎて、逆にそんなギャグじみたものを見てみたいという謎の好奇心が浮かび上がりはしたが、現実はそう甘くはないと思う。
多分少しは堪えるか、いや、堪えられるか??
無理だろ。
コンマ数秒の思考が「無理」という一言を叩き出した瞬間に、遂にビームがロエテムに直撃した。
───ように見えた。
すんででクレイの盾が間に合った。
三重になったクレイの大盾がアドラファレルの特大ビームを防いでくれている。
結構距離が離れていたと思っていたけど、間に合ってくれて良かった。
ホッと息を吐いたのも束の間、ビリビリと凄まじい振動と共に一番外側の盾が弾けん飛んだ。
次いで二枚目。
残された大盾もミシミシと嫌な音を響かせながらヒビが入った。
無理なのかッッ!!
「ロエテム交代だ!!!」
その瞬間、黒い影がロエテムを弾き飛ばして入れ替わった。
見覚えのある後ろ姿がすぐさま前方のビームを見据えて盾を構えた。
「クレイ!?」
クレイだった。
クレイは残った盾を補強して強化して堪えようとしているが、アドラファレルのビームの威力は桁違いで、クレイが押されている。
再び盾に大きなヒビが入った瞬間、クレイが雄叫びを上げた。
「こんなビームごときに負けてたまるかァァァァァ!!!!!」
最後に残っていた盾が黄金に輝き始めた。
大きく膨れ上がって姿を変えていき、アドラファレルの特大ビームを押し戻していく。
裏側だからどうなっているのか解らないけれど、不思議と向こう側が見える。マジックミラーのようだと思っていると、クレイが一歩踏み出す。
しかしアドラファレルの方も更に火力を上げたのか、クレイもこれ以上前に出られないようだ。
硬直状態のまま、あとは持久戦に持ち込むことになるか。
俺のスタンももう解ける。
指先が自由になり次第すぐに援護を──
「!」
アドラファレルの背後に突然三つの影が出現した。
誰だと思い目を凝らすと、ルカとジルハ、そしてラピスだった。ルカとジルハの二人には人間ロケットのエフェクトが付与されている。
すぐさまラピスが身を翻して再び姿を消し、残ったルカとジルハがアドラファレルへと攻撃を仕掛けた。
二人の投げた短剣やクナイがアドラファレルの飾り羽根へと直撃する。
その瞬間、アドラファレルが悲鳴を上げた。
「攻撃が効いた…!?」
アドラファレルのビームが二人の攻撃を受けた反動で軌道が逸れ、盾を滑るようにして空へと飛んでいった。
遥か遠くの方から、ビームが着弾したのか鈍い音が響く。
その音を聞きながら、俺は疑問を口にした。
「…再生しない?」
二人の攻撃を受けた羽根は破壊された状態のまま再生されなかった。
何故だ?
ビームが終息した。
攻撃が終わったのかと思った次の瞬間、アドラファレルの身体に夥しい数の目玉が開いた。それらはみな赤く発光し、狙いを定め始めた。
クレイが焦りの声を上げる。
「まずいっ!!」
アドラファレルの目玉から四方八方へとビームが一斉に放出された。一つ一つは細いが、なにせ数が多く、アドラファレルを身を捩りビームの軌道を不規則に変化させた。
それらのビームは当然後ろに居る二人にも襲い掛かる。
クレイが即座に盾を飛ばすためのアンカーを飛ばしたが、間に合いそうにない。
「ジルハ!!ルカ!!」
思わず叫んだ。
ビームが当たる寸前、二人の姿が掻き消える。
消える前の一瞬だけ功太の姿が見えた気がした。
「っしゃあああ!!間に合ったぜぇ!!」
ドルチェットがクレイの盾へと滑り込んできた。
「ドルチェット!」
「ギリギリセーフだ!」
次いで激しく息切れを起こしているルカと、功太が隣に出現した。
「功太!ルカ!それに──」
功太の腕にはジルハが抱えられており、どこも怪我をしている様子は見られない。
「──ジルハも。良かったぁー…」
どうなるかと思った。
功太がジルハを下ろし、ジルハはホッと息を吐きながらこんなことを言った。
「作戦成功して良かったです」
「作戦?」
なんだそれ。と問い掛ける前にはっと思い出す。
アスティベラード達の姿が見えない。クレイの盾の外は地獄のようになっており、俺は慌てて声を上げた。
「待って!他の皆は!?」
「案ずるな。皆ちゃんと回収しておる」
足元からアスティベラードが出てきた。
悲鳴を上げそうになったけど、クロイノ収納を思い出して飲み込んだ。
その証拠に影からノクターンと脇腹を押さえているロエテム、泣きそうになっているラピス、そしてアリマが出てきた。
心なしかアリマは興奮している様子だけど、どうしたんだろう。
半泣きになって「怖かったでス……」と言っているラピスの背中をバシバシ叩きながら、ドルチェットが賞賛していた。
「でもお前のおかげであんなに近くまで接近出来たんだぜ!誇れって!」
「痛い…、でも、ありがとうございまス…」
どうやら俺の知らないところで仲良くなっていたみたいだ。
息切れが回復した功太が狂ったようにビームを撒き散らすアドラファレルを見上げながら「なぁ、朝陽」と声をかけてきた。
「さっきから観察していて思ったんだよ。あいつ、炎属性だから水や冷気の攻撃は効くみたいだろ??」
「そうだね。……動きを止めてただけだけど」
動きを止めただけで、結果はご覧の有り様だ。
だから実際に効いているのか不安ではある。
そんな俺をよそに、功太は意外な事を言い出した。
「いや、あれで色々解ったんだ。あいつ、本当は炎属性なんかじゃない」
「ん?どういうこと?」
意味が解らないと首を捻ると、功太がこちらを見て問い掛ける。
「朝陽、ブリオンでの亜種炎属性って覚えている?」
「いやまぁ覚えているけど。……あ」
ようやく功太が何を言いたいのか解った。
「溶岩属性か」
思い返せば確かに“見たことのある”性質をしていた。
炎属性のような振る舞いでありながら、氷がそこまで効果的じゃないのも含め、納得した。
なら、倒し方は知っている。
─────────
新年明けましておめでとうございます!!!
今年もよろしくお願いいたします!!!!
─────────