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功太の選択

「本当にゴッズなのか?」

「だと思うよ。俺のと同じだし」


 功太のゴッズを見ての感想を聞いてのルカの質問がこれである。

 まぁ、ゴッズが見えるというからどんなものかと思えば高級な鉄パイプなもんだから疑いが出ても仕方ないとは思う。思うけど、高級な鉄パイプなのは事実なのだから仕方がないだろう。


「うむ、高級な鉄パイプが何なのかはわからぬが不思議な迷彩の金属製の棒であったのはこの目で見た。それが高級な鉄パイプというものならば間違いがなかろう」


 のう、とアスティベラードがクレイに同意を求めた。

 それにクレイは頷く。


「これくらいの棒だったな」


 と、おおよそバット程の感覚を腕を広げて示した。

 その長さはちょうど功太の剣から現れたモノと一致している。

 アスティベラードとクレイがそれぞれ言ってくれたことでようやくルカも納得したらしい。俺だけの意見で納得するまでの信頼はまだ無いようだ。それはそれ、これはこれと言うことなんだろうか。


「それにしても、なんで自分達には見えないんだよ」


 お前のは見えたのに、とクレイが溢す。


「なんかあるんじゃない?条件みたいなのが」


 その条件が何なのかはわからないけど、多分その条件はきっと単純なものな気がする。とりあえず俺が見えているのはゴッズ所持者だからと考えるのが普通。功太はゴッズから気に入られているみたいな感じだろう。


 相変わらず功太は真剣な顔でゴッズを見詰めてる。

 これに直接触れれば、恐らく功太に合った武器になるだろう。だけど、再びこれを武器として使うのかどうかは功太自信が決めることだ。

 今後の人生に関わることだ。

 マーリンガンの面白半分で薦められてノリで抜いちゃった俺はさておき、今度こそ誰かが押し付けたことではなく、功太自身で選んでほしい。

 その為には、一人でゴッズと向き合って欲しいものだけどと思っていると、突然ルカがこんなことを言い出した。


「あの、私なにか食べに行きたいです」


 それにラピスが首をかしげた。


「でも果物はあるヨ?」


 そう言って山になったウサギリンゴを出してきた。

 まさかあのリンゴの山を全部ウサギにしたのか。いや、よく見たらリンゴだけじゃない。この子、ありとあらゆる果物をウサギにしていた。

 そのウサギの山を見てルカは動揺した。

 そして慌てて取り繕う。


「あ…その……、お、お肉!そう!お肉が食べたいです!疲れたので!」

「そうなのですカ?ではすぐに持ってきまス!」

「じゃなくて、その、お外で食べたいです!」


 訳がわからないとはてなを飛ばすラピスにアリマが優しくルカの助け船を出した。


「外の空気を吸いに行きたいのよ。ルカはお外が好きでしょう?」

「なるほど!それならお手伝いしますね!」


 言うやラピスがルカの服を持ってきて、着替えを手伝おうとしていたので俺は慌てて視線を明後日の方へとむけた。

 先程のやり取りから諸々を察したクレイがアスティベラードとノクターンに声をかけて外へと促していた。

 着替えの最中にラピスが「果物切ったけどもう必要ないですカ?」と悲しそうにしていて、ルカが「お肉を食べた後にそれも食べたい」と言っていた。

 村から提供される肉はツクバーグだ。結構ボリュームがあるのだが、頑張って果物も食べきってくれ。


 簡単に着替えたルカがややふらつきながらも外に出るとホッとしたような表情をした。外が好きというのは本当の事らしい。


 俺も部屋を出るかと一歩踏み出し、すぐに功太に振り返って声をかけた。


「功太もお肉が食べられるなら来なよ。ここのお肉凄く美味しいからさ」


 パタンと戸を閉じる。

 これで功太はゆっくりと選べるだろう。


 扉の近くで待っていたらしいルカに俺はお礼を言う。


「功太を一人にしてくれてありがとう」

「いえ、お礼をいわれる程では…」

「でも功太自身に判断を委ねてくれたって事でしょ?誰の意見も入れず、立場に縛られることなく考える為には一人でゴッズと向き合った方が良いって思ったからだよね」


 ルカは意外そうな顔で俺を見上げる。


「…………、貴方って、結構バカそうなのにそういう考えも出来るんですね。ほんの少しだけ見直しました」

「そんなに俺バカに見える????」


 おかしいなぁ。そんなにアホそうなキャラデザにはしてなかったはずなんだけど。

 俺の問いにはルカは答えず、いたずらっぽく笑った。まさか俺にそんな顔をするとは思わなくて驚いた。

 ルカは先程よりもしっかりとした足取りで歩き出す。


「さ、お肉を食べに行きましょう!お腹が空きました!」

「あ、お肉食べたいってのは本当だったんだ」

「貴方言いましたよね、ここのお肉は凄く美味しいと」


 功太に言ったやつか。


「期待してますからね」というルカに俺は「もちろん」と返した。






 ツクバーグを皆で食べ、ウサギフルーツを摘まみながら雑談をしている皆とは離れて、俺は一人で散歩していた。

 今まであった事の整理と、わからなかった事に関する情報をマーリンガンに聞くためにゆっくりと纏めるためだ。

 色んなわからないことがあって何から聞けばいいか迷う。


「よし、とりあえずはこんなもんか」


 まずは教会の聖具の事、ゴッズが自分と功太しか見れなかったことは何故か、と、教会を通じてではない元の世界に戻る方法はあるのか。以上の三点を先に聞こうと決めた。

 多く質問しても、返ってきた問いに俺が全て理解するのは難しいだろう。なら、三つに絞ってちゃんと理解するべきだ。


 町外れの人気のないところに行くと、マーリンガンを呼び出そうとした瞬間。


「朝陽」


 声を掛けられた。

 誰なのかはわかっている。知っている声だ。だけど俺は返事をせずに声を方向に視線を向ける。そこには、覚悟を決めた顔をした功太が、武器化したゴッズを携えていた。




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