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盛大に墓穴を掘っていた

 遠くの青空に、大輪の花火が咲いた。

 赤金緑と色様々に輝く火がまるで花のように美しく広がり、その欠片が地上へと次々に落ちていった。

 それを見上げて目を見開いた。

 なんだアレ、綺麗、魔法?と騒ぐ人達の中で一人だけ、一人だけが、花火と呟いた。


「見付けた」














 出来上がった装備を身に付けて鏡の前で色んな角度から眺めてみる。


「凄い、かっこいい…っ!」

「サイズはどうだ?」

「ぴったりです!」


 手触りもいい。


「これ素材なんですか?」

「お前らの倒したツクギーバだ」

「ほーう」


 一体なにで出来ているのかと思っていたらツクギーバの革で出来ていた。

 ドワーフが説明する事によると、ツクギーバの革は外鎧よりも防御力は劣るもののそこらの革よりも遥かに頑丈で、火にも強く、瞬間的な衝撃に大して優れた特性を発揮するらしい。

 普段使いでは分厚い布と変わりはないが、例えば噛み付きや鉤爪なんかの瞬間的の通常よりも強い衝撃を受けた場合に瞬時に高質化して鎧のようになるらしい。


「試してみたい」

「は?」


 ノクターンも近くにいるから試してみようって言って、試しに装備屋のドワーフに腕に模造剣を振り下ろして貰った。嫌がってたけど何かあっても治るからと説得してやって貰った。

 本当に高質化して痛みも少なかった。

 少なかったとはいえ衝撃は普通に貫通してきたから肩がイカれるかと思ったけど。


「本来は直で受けるもんではないからな」

「理解しました」


 ちなみに胸回りはちゃんとツクギーバの外鎧を使っていたりする。

 俺達が破壊したアレだが、ドワーフの謎技術で加工され、薄くてもちゃんと外鎧と同じような性質を持った鎧へと生まれ変わった。

 無論、流石に俺達の攻撃とドワーフの加工のせいで完全に無効化とはいかなくても、一度割れた際に何かが変化したのか急激な温度変化にも対応出来るようになったとか。

 ツクギーバ、恐るべし。


 さて、俺の方は完璧。

 次はクレイよ番である。


「クレイ!そっちはどう?」


 店の反対側で同じく試着していたクレイに声をかけた。

 ちょうど着終わったタイミングだったのか、クレイがやって来た。


「良い感じだ。軽いし動きやすい」


 クレイも俺と同じく装備を新調したのだが、俺のとほぼ同じ素材だけどクレイの場合はタンカーの為、俺よりも外鎧を多く使って防御力を上げていた。

 元々クレイの耐久力は高い方だし、それ用のスキルだって持っているのに更にツクギーバの外鎧。

 一体どれ程防御力が上がってるのか。


 ブリオンだったら防御力高めの人が防御力試しが出来るヤツがあったのだが、今こそアレをしてみたい。

 この世界にもあれば良いのにとか思ったけど、字面がただの人間ゴルフなので無理だろうな。


「なんか変なこと考えてるだろ?」

「大丈夫、今諦めたところだから」


 ドワーフが職人ハーフマンを連れて戻ってきていた。


「ふむ、良い感じだな!ワシらも大満足だ!」

「ああ!」

「良い仕事だった!」


 ハーフマン共々満たされた顔をしている。

 お互いWin-Winな仕事は最高だ。







 これでやるべき事は全て終わった。

 店を出て皆を集めてそろそろ次の行き先を決めようと、軒先にいたトクルに声をかけようとした時、


 殺気が突き刺さった。


「クレイ!!!町の西側に大盾を出して!!!早く!!!」

「!?」


 クレイが大盾を出した直後物凄い風と共に細かい斬撃が飛び散って辺りの木々に切れ目をいれた。

 瞬間的に竜巻に襲われたような衝撃で砂埃が舞う。


「なんだ!?自然の風じゃないぞ!!」

「攻撃か!!」


 ドワーフとハーフマン達が騒いでいる。

 そりゃそうだろう。

 俺達が来る前に襲撃を受けたって言っていたもんな。

 それにしても、この攻撃…。


「おおおおおーいい!!!お前ら無事か!?

 」


 モンドが慌てて走ってきた。


「何者かは分からんが攻撃された!!ここは危険だからすぐにお前らは地下の部屋に──」

「待ってモンドさん」


 探知を発動して確認した。


「ディラ」

「うん、間違いないと思う…」


 一体何を話しているのかという顔のモンドに謝った。


「ごめんなさいモンドさん。あの攻撃は多分俺を狙ったものです」


 なんで忘れていたんだろう。

 あの時功太はちゃんとエクスカリバーが狙われているって忠告してくれていたのに、従う気はないと言っていたから完全に忘れていた。

 でも功太は言ったことは守るヤツだった。

 そんな功太が言った事を反故にしたということは、そうせざるを得なかった何かがあったんだろう。


「おい!お前らぁ!!」


 ドルチェットが皆を引き連れて走ってきていた。

 肩にはトクル。

 俺が声をかける前に自ら報せにいってくれたらしい。


「行くぞ!」


 クレイを先頭に攻撃方向である町の入り口へと走った。

 着いてきたモンドが訊ねてくる。


「どういうことだ?」

「……あれは、俺の友達なんです」


 壊れた門に辿り着くと、視線の先には一人の青年がこちらに向かって歩いてきていた。


「おい!お前らあぶねぇぞ!」

「戻れ戻れ!!」


 ドワーフ達の制止を聞きながらも、それを振り切り功太の前に出た。

 俺に気が付いた功太と視線が合い、少し嬉しそうな顔をした。


「やっぱりあの花火は朝陽だったんだな」


 剣を仕舞う様子はなく、剥き出しのままで歩いてくる。


「ずっと探知掛けてたんだけど、なかなか補足できなくて困ってたんだよ」


 そこで急に思い出した。

 あの謎にチクチク刺さる感覚お前かよ!!


「あんなに目立つ攻撃をしてくれて、ありがとう。

 おかげでこうして見付けられたしさ」

「えーと、つまりは俺は何かしらの“墓穴を掘った”ってこと?」

「そういう感じかな」


 相変わらず功太の武器からは攻撃用スキルのエフェクトが漏れ出ている。

 これは、話し合いをしようとした訳じゃなさそうだ。

 でも一応確認だけはしたい。


「……従う気はないって言葉はウソだったとか?」


 功太の足が止まった。


「…………。嘘じゃなかったさ。でも、そうも言っていられなくなってしまう事だってあるだろ?

 ほら、お前だって盗賊になって人を殺めたじゃないか」

「……! ちがっ!あれは…ッ!」


 功太の剣から攻撃が発射された。

 すぐにクレイの盾が現れて攻撃が空へと流される。

 盾には軽くヒビが入っていて、後ろでは余波で町が被害にあっている。

 功太のこの攻撃は本気ではないものの、“お遊び”ではない威力だった。

 それに、先程から向けられている敵意のようなものは本気でやりあおうとしているのが痛い程伝わってきた。

 なんだか心臓が痛い。


「……わかった。とりあえず場所だけ変えて良い?此処だとさやりづらいじゃん?」


 提案をすると功太の武器から攻撃エフェクトが消えた。


「そうしよう。僕だって無闇に殺したくはないし」

「……着いてきて、ちょうど良いところがあるから」





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