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確かにドワーフの弓兵あんまり見たこと無い

 クレイとドワーフの交渉が終り、お互い納得する形で契約完了した。

 ではまたな、ととモンド達が去っていく。


「トクルがいきなりやって来て、お前が呼んでるっつーから何事かと思えば…」

「美味しい依頼だったんじゃない?」

「まぁそうだな。ドルチェットもスキルの練習がしたいと言っていたし、ちょうど良かったかもだ」


 ツクギーバはスキルの練習で使うレベルのモンスターでは無い気もするけどな。

 クレイの中のレベルの常識が崩れつつあるのを感じた。

 とはいえ俺も他人事ではないけど。


「さーて、せっかくだし見て回るか」

「何を?」

「何って、装備をだよ。どうせお前もこれから見るんだろう?なら昨日一日町を歩き回ったオレがいた方が無駄に歩き回らなくて済む」

「そういえばそうだね。じゃあそうしよう」


 ということでクレイの案内のもと近場の店から回っていくことにした。

 服関係はドワーフと体格が違うからどうしようもないけど、防具はなんとかなるらしい。

 というのもここでの防具はパーツを組み合わせでカスタマイズ出来るものが多いからだとか。

 そこはやはり魔界という他種族が暮らす地域特有のものなのか。


 店に並ぶ道具や装備は質が高い。

 さすがはドワーフ製だ。


「へぇー、すっご。あ、これドルチェットが買ってたやつ」


 思わず手にとってロックを外して振った。

 相変わらず滑らかな挙動で伸びる警防。いや、砥棒。


「かっこいいー」

「買うか?」


 すかさず購入を促す店のドワーフ。


「昨日既に買ってます」

「もうひとつ持ってても損はないぞ」

「考えておきます」


 確かに持ってて損はない。

 とはいえ俺は弓職だし、矢はスキルで生成する系弓職なのでこれは殴るための道具になってしまう。

 ……アリか。


「二個も要らんぞ」

「はい」


 クレイに止められた。

 いつの間にか読心術を習得していたようだ。

 仕方なく諦めて装備を見ながらクレイの見ているタンカー用の装備を眺める。

 てっきり金属が多いのかと思ったけど、そうでもないようだ。

 ものによってはよく分からない素材のものまである。


「へぇー、面白いなぁ。あ、これとか良いんじゃない?クレイ最近受け流し多いからある程度柔軟性のあるやつ」

「お前なぁ…自分の装備を見にきたんだろ?弓職用の装備を見てこいよ」

「いやぁそうなんだけど…」


 弓職用の装備が並んでいる場所を見る。


「どれも小さくて…」


 なぜだか分からないけど弓職用の装備が全て子供用なのだ。

 大人用がない。


「なんで?」

「わかんない」


 なんで弓だけ大人用が無いのか。

 二人して困惑していると店のドワーフがやって来た。


「なんだ。なにか装備に不満があったか?」


 しまった。クレームと思われたか。

 いや、ここは素直に訊ねよう。


「あのなんで弓職用の装備が子供用しかないのかなーと」

「ん?……あー…違う違う。あれはハーフマン用のだ。うちは弓職はハーフマンしかいないから。……ああお前さん弓職か」

「そうです」


 ドワーフが「あー…」と言いながら頭を掻いた。

 ついでに明後日の方向に視線を向けながら自身の髭を撫でていた。

 焦ったり困ったりするとドワーフは髭を撫でるけど、そういう習性なんだろうか。


「少しだけ…いや、明日また来てくれるか?」


 クレイと顔を見合わせる。

 取り寄せてくれるということだろうか?


「わかりました」


 とりあえず言うことを聞こうと思う。

 俺は明日来るから今日はクレイの物だけ買おうと思ったら、クレイも明日来てくれと止められた。






「急に暇になってしまったんだが…」

「だねぇー。どうする?」


 待っとけと言われた以上待つしかない。

 とりあえず小物を見て回ったが、それもすぐに終ってしまった。

 ツクギーバの討伐も明日だしと空を二人してボーッと眺めていると、ふと、あることを思い出した。


「そうだクレイ。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど」












 翌日、モンドの案内のもとツクギーバの目撃情報のあった場所へとやって来た。

 門番はどうしたのかと思えばアンドがやっているとの事。


「どうだ?いるか?」

「んー」


 千里眼を発動して地平線を流し見ると目的のツクギーバがいた。

 今はのんびりと木の葉を枝ごと食べている。


「いた」

「こっちに来させられそうか?」

「僕がやります」


 ジルハが前に出て大きく息を吸った。

 何をするつもりなんだろう。

 するとドルチェットが慣れた様子で両耳を塞ぎ、俺達に言った。


「耳、塞いでた方がいいぜ」


 ドルチェットの言う通りに皆が耳を塞いだその瞬間、ジルハから凄まじい轟音が解き放たれた。

 ビリビリと空気が振動し、足元の小石が細かく跳ねている。

 近くにいたらしい小鳥は一斉に飛び立って行くのが見えた。


 ドルチェットが耳を塞いでいた手を離したので、俺も手を離した。

 塞いでたというのにさっきの轟音のせいで頭が軽くクラクラする。


「な、なに?なにしたの?」


 俺が訊ねるとジルハが答えた。


「『挑発』のスキルです。これを聞いた好戦的なモンスターが全方位から襲い掛かってきて危険なんですが、今回はツクギーバだけが引っ掛かりました」


 ジルハの指差す方に目をやると、ツクギーバがこちらに向かって全速力でやってきていた。

 しかも結構怒ってる。


 クレイがすぐに盾を展開し、構えた。


「ディラ、ドルチェット、戦闘用意!」


「よっしゃあ!いくぜぇ!!」とドルチェットが大剣を構えてスキルを発動した。

 さてそれじゃあ、ちゃちゃっと仕留めますか。





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