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地元民にとってはお祭りです。(地元民談)


 朝食を済ませ、俺達はいそいそと街を出る支度をした。

 昨晩は襲撃もなく、朝は完全にスルーされているこの現状に困惑しつつも、あっという間に支度を終えた。


「なんか、こういうのって肩透かしっていうんだっけ?」


 思わずそう言えば。


「襲撃されながら支度して、色んなものをおいて逃げるよりは全然良いだろ?」


 と返された。

 そりゃそうだ。


 出口へと向かう坂を上りながら、俺はふと組織の出入口付近を千里眼で視てみた。


「うお、すっげ」


 組織の出入口で大乱闘が起きていた。

 組織に溜め込んだお宝を奪おうとする輩と、ここの住人や周辺からお宝を奪った輩の争いだ。

 どっちが悪いとかの話はもうすっ飛んだ。

 とりあえず、さっさとエクスカリバーは取り戻せて良かった。


 それにしてもどんどん集まってるな。

 あ、決壊して雪崩れ込んでいく。


「おーい、ディラ何してんだ。行くぞ」

「へいへーい」







 門が見えてきた。

 その近くには当然ながら門番の姿がある。

 さて、問題は俺達を見逃してくれるかどうかだけど。


「通してくれると思う?」


 小声でクレイに訊ねた。


「みすみす今回の騒動の現況を逃がす理由がない。とりあえず強行突破をするつもりだけど、あの騒動の主犯がオレ達だってバレてなければ望みはある」

「人間だってバレてる時点で自分たちだって特定されてねーか?」

「ドルチェット…、ダメだよそれ言っちゃあ…」


 朝食で聞いた話だけでも特定されてたから、望み薄ではある。

 しかも門番だ。

 知らないわけがない。


「一応ほら、当たって砕けろって言うだろ。試してみよう」






「殴り込みしたのお前らだろ?」


 見事に砕けました。


「バレてるじゃん」

「……」


 とするなら残された道は強行突破しかなくなった。


 しかし、俺はなんとなく違和感を覚えた。

 門番の数が少ないのだ。

 昨日は五人ほどいた門番が、今日は目の前のこの人しかいない。

 隠れているとかではないのはわかった。

 そもそも気配すらない。


 俺がキョロキョロとしながら辺りを確認していると、ドルチェットが門番に詰め寄っていく。


「だったらなんだってんだよ。捕まえるのか?いっとくが始めに仕掛けてきたのはアッチだぜ」


 そんなドルチェットに門番、ふ、と笑った。


「ははっ、捕まえたところでど閉じ込めておく所なんかねぇよ」

「あ?」


 じゃあ、なんだ?

 捕まえないとすると、どうするんだ?


 予想外の言葉に内心首を捻っていると、門番は満面の笑みでこう言った。


「追放だ。さっさと出てけ」








 扉が閉められた。

 本当に追い出されただけで終わった。

 追い出されたけど、なんか、追い出した人すごい笑顔だったのが気になる。

 なんであんなに笑顔だったの?

 違う意味で怖いんですけど。


「追っ手はないか?」

「無いっぽい」

「そうか。じゃあ本当に追い出されただけなんだな」


 クレイも困惑していた。

 変な街だったな。


「して、次は何処へ向かうのだ?」


 アスティベラードの問いに、クレイは意識を切り替えたようだ。


 そうだ。荒野に追い出された俺達は次の行き先を決めるべないといけない。

 街で購入した地図とにらめっこしながら歩きつつ、皆からの情報をまとめていく。


 この周辺には幾つか街があるが、その中で三日ほど歩いた辺りの街がなかなかよさげらしい。


「次にいくのはこの街にしようと思う。そろそろ装備も買い時だしな」


 言われてみれば、かなり服がボロボロになっていた、

 逃亡生活に聖戦にダメージを受けまくった服は、応急処置の修復じゃあ間に合わなくなってきていた。


「僕も武器の補充したいですね。実は先の聖戦で愛用の短剣が折れまして」

「え、そうなの?」

「はい」


 ジルハが真っ二つになった短剣を見せた。

 あの狼フォルムで使う機会があったのか。


 思えば俺も魔法具の材料を補填したかったりもするし、ちょうど良いのかもしれない。


「ちなみにこの街はどんな種族がいるって聞いた?」

「話によるとハーフマンとドワーフが主流だってさ」

「えええ…、またハーフマン?」


 いけないと思いつつも、顔が強張った。

 ハーフマンに嫌な先入観が付いてしまったようだ。


「いやー、ハーフマンといってもつるむ相手が違えば……と思う。今回はさすがにアレ過ぎたもんなぁ。まぁ…大丈夫じゃね?」


 クレイの擁護の言葉が弱い。

 自信無いなぁ。


 とはいえ、次は盗られないから大丈夫と思いたい。

 なんせスキルできちんとエクスカリバーも設定したし、新しい魔法具も設計した。

 あとはその魔法具を作るだけである。


 その時、またチリリとした嫌な感覚が突き刺さった。


「!」


 また視線、と、すぐさま振り返って確認するけど何もいない。


「どうかしたか?」

「んー、なんか視線が……」


 視線かも怪しいけど、それに似た何かだ。


「もしや、魔物か?」

「さては追っ手とかか?」


 ウキウキのドルチェットに俺は首を横に振った。


「いやそんなんじゃないんだけど…、なんだろ?」


 試しに千里眼や気配察知も使ってみたけど、それらしいものは引っ掛からない。

 ドルチェットはなんだつまらんと言ってすぐに興味を無くした。

 今のところ害はないけど、なんとなく気持ち悪い。


「ふむ、一応警戒しておくか。トクル、飛べ」

「ケーイ」


 アスティベラードの命令に従ってトクルが飛び上がる。


「これでトクルが上空で警戒してくれる。何かあればノクターンがそく気づく」

「はい…」


 任せてくださいとノクターンが杖を両手で握っている。

 こういう、何処にいるかわからない敵の警戒にはトクルが大活躍する。

 本当に助かる。


「トクルの好物ってなにかな。お礼をしたいし」


 何だかんだとお世話になってる。


「ラーティアという黄金の木の実であるが、ここにはないな。代わりに肉を献上すれば喜ぶであろう」

「よーし、狩り頑張るぞ~!」

「クロイノにも礼を言っておけ。朝からずっと気配を探っておる。無論問題ないとは思うが、万が一がというのがあるからな」

「そうなの!?クロイノありがとう!」

「ただ、魔物の中にはクロイノの感知をすり抜けてくるものもおる。そこは多めに見よ」

「なにそれ怖い」


 もしかしてブリオンにいた気配遮断スキル持ちの高ランクモンスターがここにもいるのか。


 気配遮断スキル持ちのモンスターはなかなか厄介で、土の中からの襲撃は“地雷”と呼ばれ、恐れられていた。

 そんな気配遮断スキル対抗でブリオンではアラートというアイテムがあったのだが、残念ながらここにはない。

 試しにマーリンガンポケットを探してみたけど、それらしいものはなかった。

 宝位方針が気配遮断にも対応しているのかもわからないし。


 疲れるからやりたくなかったけど、気配察知スキルを常時発動をすることにした。

 背に腹は代えられん。





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