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エクスカリバーは気難しいらしい

 通信機から光が放たれ、それが腕の水晶によって屈折して壁に映像が投影された。

 簡易スクリーンモニターである。

 マジでなんでもありか。

 もはや此処までくると感覚が麻痺してくるな。

 これからは心の中でマーリンガンの事を未来の青狸と呼ぼう。


 映像は二つの青い丸が並んで写し出されていた。


『映像出てる?』

「出てる出てる。青い丸が2つ見えるよ」

『うん、ちゃんと正常に機能しているね』


 それじゃあ、と、マーリンガン先生による講座が始まった。


『お馬鹿な君にも分かるように説明するね。

 まず君は二つのレベルを持っているというのを前提条件として話すよ』

「はい」

『二つのレベルってのは此処でのレベルと、元いた世界のレベルだ。それは理解できるね』

「はい」


 すっげー小まめに確認してくるじゃん。

 どんだけ俺の事バカだと思ってるんだろう。

 実際間違ってはいないんだけど。


『エクスカリバーは君の元いた所のレベルを投影して反映させることが出来る。

 さっき言ったルーターと同じような機能をしていると思ってくれて構わない。

 対象は君とエクスカリバー自身だ。

 君のスキルに対応して、それと同じように姿形、性質まで自在に変化させる。

 エクスカリバーが君の使っていた武器とほぼ同じようになったのはコレのお陰だよ』

「ほうほう」


 青い丸の間に弓が現れ、矢印が弓を通過してもう一つの青い丸へと繋がる。

 もしかしてこの丸は世界のイメージなのか。

 丸が消えて弓が大きく拡大し、その弓から先程の矢印が現れ、多分自分なんだろうふんわり似顔絵アイコンと弓自身に矢印が向かう。


『こんな感じのイメージで覚えてね』

「ういっす」


 それにしても凄く不思議だった。

 マーリンガンの説明で、なるほど、エクスカリバー自身が向こうの世界のブリオンの情報を元に変化してくれていたのかと理解できたけど、不思議なものは不思議である。

 弓矢生成での弓の切り替えも普通に出来ていたし、エクスカリバーって凄かったんだな。


 しかし、なんでブリオン限定の情報なんだろう。

 ゲームではなくて本物の俺の身体能力が反映されていたら大変なことになるところだった。


『そんな素晴らしい能力を持っているエクスカリバーにも弱点はある。

 つまりは影響範囲が限られてしまう事だ。

 君の手を離れて一定距離以上離れてしまうとか、聖水に浸けられてしまうとか。とにかく君の近くから離れて誰かの手に渡るとエクスカリバーの繋がりが弱まってしまう』


 今度は弓と俺のアイコンの距離によっての繋がりパーセンテージが現れた。

 距離によって数字が上がり下がりしている。


『ちなみにこれは無銘の神具(ノーネームゴッズ)共通の弱点ね。

 覚えておくように』

「はい先生」


 その情報、もっと早めに知りたかったです。

 全部やられています。


『話を戻すね。

 繋がりが弱まると反映する事が出来なくなる。

 投影するにも繋がりの道が必要だからね。

 投影が出来なくなると、向こうのスキルも何もかんもが剥がれ落ちて、後に残るのはこの世界での通常レベルのみだ』


 弓がどっかに飛んでいって、同時に元のレベル表記も飛んでいった。

 残された俺のアイコンの表情がしょんぼりしてる。


『……とはいえ此処での君の経験値や獲得スキルは残るから普通に一般人として過ごすならば何の問題もない。

 ちなみに君今レベル幾つになってる?』


 突然の質問。

 いつものレベルを思わず答えようとして慌てて訂正した。


「30だけど」

『うん、そこそこだね』


 そこそこ言うな。


『普通はそのくらいのレベルだと筋骨隆々のマッチョマンの筈なんだけどね』


 スクリーンでは各レベルごとの基本体格が表記されていた。

 とても分かりやすいけど、あまりにも俺とは違いすぎて参考になら無い。


 小声で相変わらずのモヤシフォルムだねぇーと聞こえた。

 余計なお世話である。


 しかし、筋骨隆々か。

 ガムキー先輩みたいなもんか。


 昔の一瞬だけお世話になったガムキー先輩の丸太みたいな腕を思い浮かべ、改めて自分の腕を見る。

 あれと比べれば確かに頼りない。

 けどこんなんでも一応それ相応の力はあるとは思う。

 いや負けたから疑わしいけど。


 そこでふと、一つ疑問が浮かび上がった。


 こんなヨワヨワな状態で聖戦が始まれば大変なのではないか。


 いや、ととある可能性も浮上してくる。


 でも参加資格のエクスカリバーが無かったらそもそも参加が出来なくないか?


 エクスカリバーを取り戻すこと事態は俺のなかでは決定事項だけど、これだけは確認しておきたい。


「あのさマーリンガン。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

『なんだい?』

「エクスカリバーっていう資格が無いこのモヤシの俺は、そもそも聖戦に参加できるの?

 資格がなかったら出来ないと思うんだけど」


 ふ、と鼻で笑われたような音がした。


『甘い、甘いよディラくん!

 エクスカリバーは大変気難しい性格をしていてね、主人と認めたもの以外絶対に認めないんだ。

 現にエクスカリバーの視線は突き刺さってるんだろう?』

「まぁ、うん」


 突き刺さってくるという次元越えてガチで刺し殺されそうな視線になってきているけど、いまだにエクスカリバーに“視られている”感覚がある。


『ということはエクスカリバーにとっての主人は君のままだ。

 もし始まってしまったら君は武器がなくても弱体化してても強制的に聖戦に参加させられるだろうね。

 しかも次は三回目かな?

 武器がなくて弱体化状態だと、その辺の雑魚にもやられちゃうね』


 絶句した。

 俺だけではなくみんなも「マジかよ…」みたいな言葉を溢していた。

 これ、思ったよりもヤバい状態だったみたいだ。


『ということなんで、さっさと取り戻しておいた方が君のためだよ。

 それじゃあ、マーリンガン講座は終わり!

 僕は忙しいからまた後でね!

 絶対にぜっーったいに取り戻すこと!!じゃあね!!」


 マーリンガンとの通信が切れた。

 映像も消えて、俺のしょんぼりアイコンも消えていった。


 しばし無言が続き、俺は一旦落ち着くために深呼吸した。

 衝撃事実でビックリしたけど、結局やることは変わらない。


 俺はみんなに向き直り、座り直した。


「えーと、エクスカリバー取り戻し会議でも開いてもいいですか?」


 当たり前だと怒られた。





 作戦会議開始。

 手に入れた地図を広げてそれぞれの知っている情報を書き込んでいく。

 そして宿の位置、視線の方向を確認した。


「そんなに正確に解るものなのか?」


 クレイの質問に答える。


「といっても方向だけだよ?距離はわかんない」


 初めてエクスカリバーの視線を認識した時も、方向は分かるけど距離は分からなかった。


「ねぇ、本当に俺のこの視線だけでエクスカリバーの位置を割り出すの?まさか視線の方向に真っ直ぐ歩いて見つける訳じゃないよね」

「そこは考えがある。簡単に説明すると四点にお前を置いて、其処から感じる視線の交わる位置で特定する」


 良かった。

 屋根を乗り越えさせられるのかと思った。

 前は出来ていたけど、今はだいぶしんどいと思うから。


「……あのさ、この視線を使って場所を特定するって案は賛成なんだけど、俺の顔はがっつり見られちゃってるんだよ。

 彷徨いていれば町に点在している仲間が情報を流すかもしれないよ?大丈夫??」


 クレイの提案した作戦は、俺が居なければ話しにならないモノだった。

 だけど俺の顔はバレてるし、もしかしたら仲間がたくさん居るかもしれない中で怪しい行動をしていればあっという間に情報が伝えられてしまうだろう。


「普通に隠密とか持ってたら楽なんだけど……」


 そう言うクレイに同意。


「今持ってるのか?隠密」

「ン~~~~―っ」


 持っているかという、ドルチェットの問いに俺は答えられない。


 何故なら隠密スキルを持っているか分からないのだ。

 ブリオンならばスキルを確認するのは容易だったけど、此処ではどうやって確認するのか分からない。

 発動するとき位だ。

 表示が出るのは。


「となれば残された道は一つ!!!!」

「うわびっくりした!!!?」


 突然のアスティベラードの声に心臓が跳び跳ねた。


「変装よ!!!さすれば問題なくであるけよう!!!」

「……いやまぁそうだが……」


 クレイがテンションが上がっているアスティベラードに諭し始める。


「変装するにしたってそれなりに準備が必要だろう?

 だいたい匂いはどうすんだよ」

「匂いってなに?」

「魔族は鼻が利く種族が多いんだ。特にハーフマンとかな。香水を振り掛ければ多少はマシだけど……」

「匂いかぁー…」


 そんなもので特定されるのは嫌だなぁ。 


 そう思ってると、スッと目の前に見覚えのある指輪が差し出される。


「ディラよ、コレの出番ではないか?」

「あの……まさか?」


 それは世界に五つしかない指輪であった。

 とても嫌な予感がする。


「コレなら香水を纏っておっても不自然は無かろう!!」


 いやまあ確かにそうだけどもよという言葉は、アスティベラードの突然の奇行によって強制中断させられた。





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