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マーリンガンは激怒した

「な、なんでそう思ったの?」


 凍った場を戻すために俺は声を絞り出して訊ねた。

 するとドルチェットは不思議そうな顔をしながら答えた。


「覚えてねーか?自分は強制的にレベルリセットされたんだ。今までと同じように動けなくなるのも体感済み。

 お前、いつものように動こうとして、動けなかったろ? 違うか?」

「……おっしゃる通りです」


 まさにその通りだった。

 そうか、確かにドルチェットはレベルリセット経験者だった。完全に忘れてた。


「いやいやいや、レベルリセットの装置もないのに出来ないでしょ?」


 と珍しくドルチェットの意見を全否定した。

 それにクレイも同意する。


「だいたい魔界には無くないか?そもそもギルドが無いのに」

「そうなの?」


 だってギルド探しに行ってたのでは?と素朴な疑問が浮かぶ。


「ギルドがあるのは人間の冒険者がいる前提だ。こんな魔族しかいないところにあっても仕方ないだろう?」


 確かに歩いていて人間は見てない。

 何処を見ても魔族しかいなかった。


「一応魔族用のギルドみたいなのはあるがな。それを探してもらってたんだ」

「へぇ」


 そういう事なのか。

 というか魔族用のギルドは人間も使っていいものなのか?


「話は戻すけど人間用のギルドがなければレベルリセットも出来ない。だからレベルリセットはあり得ないんだ」


 クレイの説明にムッとしたドルチェットが反論を始めた。


「だったらこいつのこの状態はどう説明するんだ?」


 びっと思い切り指差されている。

 そんなドルチェットの隣にいたジルハが一言。


「変なもの食ったとか?」


 そんなんで下がったら困るんだけど。


「しかし、ギルドがなければレベルの確認も出来なかろう?」


 アスティベラードのその言葉にクレイがこちらを見た。


「マーリンガンさんから持たされてないか?なんかそういう系の」


 クレイはマーリンガンのことをなんだと思っているんだろうか。

 青い狸だとでも思っているのか。


「いやいやさすがのマーリンガンも入れているわけが──」


 無いだろうと思いながら鞄に手を突っ込むと、何かが手に触れた。

 引っ張り出せば、前にマーリンガンが使っていたレベルを測る小型装置が出てきた。


「──あったわ」


 さすがマーリンガン…。

 一周回って怖い。


 何処まで見えてるんだあの人。

 個人的には千里眼・先見(未来視)を所持していると判断した。


「使い方は分かるか?」

「ご丁寧に説明書も付いてる。ほら」


 まさかなと思いながら説明書に目を通し、その装置を腕に巻いて起動させた。

 見た目が変わった形の時計で、文字盤のところに水晶が嵌まっている。

 この装置は腕を通した時点で魔力が通っているから、あとはステータスオープンと唱えれば良いとのこと。


 俺の記憶から作ったろコレ。


 突っ込みたい事は色々あるけど、まずはレベルの確認だ

 とはいえ特に変わってはないだろうと思いながら目の前に出たレベルを見て俺は悲鳴をあげ掛けた。


「なんだ?どうした?」


 どうやら皆には見えていないらしい。


「俺、今レベル30らしい…、なんで???」


 なんでという言葉しか出ない。

 いや本当になんで??


 俺の困惑の様子に皆は嘘ではないと通じたらしい。

 それぞれ意見を出し始める。


「レベルリセットとはなんか違うっぽいな」

「あれは完全に1からですもんね」

「なんだよ。リセット仲間だと思ったのに」

「……」

「ではなんだというのだ?」

「わからん」

「というか30っていやぁ、なにもしてない人間の最終レベルか」


 みんなの会話に参加するために俺は手をあげた。


「あの、それにしては俺ボコボコにされすぎでは??」


 それの言葉にクレイが呆れた顔を向けてきた。


「魔族の平均レベルは40だよ」

「理解しました」


 無理だねそれは。

 レベル10の差はどうしようもない。


「とはいえなんでこんなに下がってんだ??」


 結局議論が一周回って戻ってきてしまった。


「マーリンガンならなんか知ってそうじゃないか?」

「連絡取ってみろよ」


 クレイとドルチェットに促されて俺は頷いた。


「分かった」


 分かったと言ってみたものの、マーリンガン忙しそうだし取るかな。

 不安に思いながらも通信機を起動させると奇跡的にマーリンガンが出た。

 だけど今回も音声だけだしなんだか背後がばたついている音がする。

 忙しさは継続しているようだった。


『もしもしディラくんどうしたの?』

「あ、もしもしマーリンガンちょっと聞きたいことがあるんだけど」


 ちょっと間を開けた。

 絶対に怒られる気がするからだ。

 覚悟を決め、俺は口を開いた。


「俺さ、さっきエクスカリバー盗られちゃったんだけどさ、なんでかレベルリセットもしてないのにレベルが凄い下がったみたいなんだけど、これについてなんか知ってることある?」


 は?という声がこちらとあちらでハモる。


 あれ?皆に言ってなかったっけ?


『はぁーーーーン????盗られたってなに????』


 キーンとマーリンガンの声が鼓膜を貫く。

 ピアス型なので防御のしようのない音の攻撃で鼓膜がイカれそうだった。


「いやまぁそのまんまの意味で……」

『あのね、今目の前に君がいたら背負い投げしているところだよ?』

「腰やるよ無理しない方が良いんじゃない?」

『僕いま凄い怒ってるんだけど?』

「ですよねごめんなさい」


 通信機越しに今まで聞いたことのないくらいの長い長い溜め息が聞こえる。

 多分いまマーリンガンは文字通り頭を抱えているんだろう。


「あの、あのさ別にわざとじゃないんだよ。時間差で転がされたせいっていうか、予想だにしない攻撃を食らったというか……」

『あーうんいいよ、わざとだったらどうしてやろうかって感じだけどね』

「本当にごめんなさい」


 ここまで怒ったマーリンガンは始めてで怖い。


『それで?視線はどう?感じる?』

「大丈夫です。突き刺さってきます!!」


 心なしかだんだん怒りの感情が混ざってきているような気もしないでもない。


『とりあえず縁が切れてないなら安心だ。それでさっきの質問の答えだけど、

 エクスカリバーが君の手を離れた事とレベルの低下は関係がある」

「え、あるの!?」


 怒気が引っ込んだマーリンガンがいつものように説明を始めてくれた。

 やっぱりこのマーリンガンが一番いい。


『エクスカリバーは君のところで言うルーターのような役目もしているんだよ』

「……ルーターって?」

『君Wi-Fi使ってないの?ネット使う時に設置している小型の機器があるだろう?あれだよ』

「あー…、あれか」


 何となくでしかネット使ってなかったからあんまり名前を覚えてなかった。

 エクスカリバーはルーターと。

 意味が分からないけど大事なことなようなので覚えることにした。


『なんで君の方が詳しいはずなのにこの説明おかしくないかい?』

「んで、そのルーターの役目ってどういうことなの?」

『今説明をするから、ちょっと壁の方に腕を向けてくれるかい?』


 何をするんだろうか。

 俺はマーリンガンの指示に従って、装置の付いた方の腕を壁の方へと向けた。






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