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一見は蟻塚?


 建物の集合体のように見えたあの壁は住宅街とかではなかったらしい。

 試しに千里眼使ってみると、鳥形の魔物がたくさん住み着いていた。


「なにあの魔物」

「岩燕じゃないか?」

「魔物じゃないの?」

「普通の燕だったと思うけど」


 てっきり魔物かと思ったら普通の鳥だった。

 恥ずかしい。


「あ、入り口っぽいのありましたよ」


 ジルハの示す先に大きな穴の一つが門のようになっていて、そこへ行くと門番らしき人影が2つあった。

 間違いないだろう。


「通じるかな」

「さてな」


 どちらにしても話しかけなければ始まらない。










「変なことしたら即叩き出すからな。分かったか。良いぞ、入れ」


 結果として言葉は通じたし、難なく入れた。

 訛りは強いけど聞き取れない程ではなかったのが良かった。

 門番らしき魔族、多分オーガの人なんだろう。その人達に軽く質問され幾つか答えたらすぐに通された。

 警備ザルじゃないか?

 それとも腕に自信があるからオープンなのか?

 グラーイやロエテムの事についても「ゴーレムみたいなもの」で終わった。

 思ったよりも理解が早くて驚く。

 でも身近にゴーレムいたら「なんだ似たようなものか」で納得するのは分かる気がした。


「分かっちゃいたが人間がいねーな」


 ドルチェットの言う通り辺りを見ればノット人間。ごっついムキムキ魔族達オンリー。

 腕に自信があるからの気がする。


「てっきり人間は酷い扱いされるもんかと思ったけど、そうでも無いんだね」

「さぁどーだろーな。地域差あるんじゃないか?」

「地域差かぁ」


 クレイの返答に一理ある。

 たまたま此処が緩いだけなのかもしれない。


 門から続く薄暗い通路を行き、明るい所へ出ると町全体が見渡せた。

 町全体が壁の内側と下の方へと立ち並んでいる。

 壁の内部は地面よりも下がった位置に作られていて不思議な感じだ。

 上は空が見える。

 まるで巨大な岩の棟が真ん中から綺麗に崩落してしまって、その、跡地に作られた町のようだ。


「変な感じ」

「宿屋どこら辺にあるんだろう」


 今までの町と全く違うせいで何処に何があるのかさっぱり分からない。


「おい!宿屋教えてくれるってよ!」


 早速ドルチェットがそこらの魔族から早速情報を仕入れていた。


「なんかドルチェット顔イキイキしてない?」

「初めて合った時思い出すな。ドルチェット!せっかくだし携帯食が買える場所も教えてもらってくれ!」


 言いながらクレイがドルチェットの方へと向かっていった。

 これで迷子の心配は無くなったかな。


 その時。


「おい。誰の許可を得て私の体に触れた!」


 突然アスティベラードのキレた声が聞こえてきた。

 慌ててそちらを見ると、二メートルはありそうな魔族の二人組にアスティベラードとノクターンが取り囲まれていた。

 しかも魔族の態度や話の内容からいって、どうも強引なナンパをされているみたいだ。

 今までならアスティベラードの謎の圧でそういうことは起こらなかったけど、魔族に取ってはアスティベラードの圧なんか屁でもないようだった。

 ロエテムもなんとか盾になろうとしているけれど、軽くあしらわれてしまっていた。


 クレイ達は地図作成で気付いてない。


 こういう場合は、アレだ。


 すぐに矢を二つ生成してに特殊スキル付与で【隠密】を付属するや二人の元へと駆け付けた。


「失礼失礼!アスティベラード、ノクターン、ちょっとこれ持ってて」

「?」


 二人に矢を差し出すと、アスティベラードと怯えたノクターンが言われた通りに矢を持った。


「これで何を──」

「そのままクレイの所に行って良いよ」

「あ、ああ…?」


 不思議そうにしながらも二人とロエテムは魔族から離れてクレイの方へと向かっていった。

 思ったよりもちゃんとスキルが効いたみたいだ。

 スキルによって二人を見失い、結果的にナンパを邪魔された魔族がイラついた様子で詰め寄ってきた。


「おい!なんだこのチビ!」

「痛い目みてぇのか!?」

「よくも邪魔してくれたな!!覚悟はいいか!?」


 おお怖い怖い。

 そう思いながらも俺はすぐに別の矢を出してスキルを付加。

【ネタスキル】、通称「取ってこい」。

 このスキルを付けた道具を思わず目で追い、捕獲しないと気が済まなくなるイベントスキルである。

 それを二人の目の前に出した。

 限りなく何でもないように振る舞うのがコツだ。


「そんなことよりも見てくださいよこれ、凄くないですか?」


 何も凄くないのだけれど、俺の「見てください」の言葉でイライラしつつも二人が矢に注目した瞬間にスキルが発動した。

 二人の頭には犬の耳がスキルの付属品として出現したのだ。


「──お、おお。確かにすげーな」

「本当に凄い。なんだこれ」


 実際は何も凄くないのだけれど、二人は矢に夢中になっている。

 チュールに釘付けの猫、おやつに夢中の犬のような有り様だ。

 試しに左右に振れば、釣られて首も振られる。

 よしよし、効果は上々。

 すっかりアスティベラード達の事は頭から抜けたようなので、仕上げに取り掛かる。


「せっかくなので差し上げますよこれ」

「本当か!?」

「いいのか!?」

「はい。ただし一本しかないので早い者勝ちになりますけど」

「「なんだと!?」」


 エクスカリバーを展開して矢をつがえる。


「では行きますよー!“取ってこーい!”」


 勢い良く矢を空の穴近くに射ち放つと同時に物凄い勢いで駆け出して見えなくなった。

 これで安心だ。


 さてと、と、振り返るとみんなが見てた。


「なに、今の」

「あー、そのー。気にしないで?」


 多分もう戻っては来ないだろうから。







 案内された宿屋に着いた。

 その宿屋を見上げて首をかしげた。


「宿屋?」

「宿屋なんだと」


 なんとも分かりにくい。

 特徴なく周りに溶け込みすぎて、出掛けたらすぐに分からなくなりそうだ。

 クレイが宿屋の入り口のマークを示した。


「彼らの言うことにはあの三日月と鳥が目印なんだってさ」

「へぇー」


 じゃあ覚えておこう。






 宛がわれた部屋に付き、大きく背伸びをした。久しぶりの室内だ。


「屋根があるって最高だね」

「それ置いたら買い出しのじゃんけんするぞ」


 大部屋だったけど、一応衝立があるし人数分の寝台もあった。

 グラーイは残念ながら折り畳んだけど、頭だけ出せるようにしているので、今回はちゃんと仲間入りを果たしている。


 じゃんけんの結果、俺は携帯食の買い出しの係になった


「干し肉とドライフルーツと、水、チーズ、あとはパン?他は何がいる?」

「塩がもうない。あとカフの薬と炒り豆とチョコダマあったら買ってきて」


 チョコダマとはチョコに似ている完全栄養食の事である

 チョコに似ているけどチョコではなく、木に成る木の実の中身である。

 魔力が豊富で魔力枯渇に効くらしい。

 最近の戦闘やら何だかんだと魔力を使わせてしまっているノクターンへの気遣いといったところか。


「分かった」


 クレイからお金を渡され、手書きの地図も渡された。

 これさっきのか。


「ん?俺一人なの?」

「俺は薬や小物の買い出し。ドルチェットとジルハはギルドのようなものがないかの聞き出し。アスティベラードとノクターンは教会関係のものがないかのトクルとクロイノでの確認だ」

「ああ、大事」


 最後のは特に大事だ。

 でも懸念がひとつ。


「さっき絡まれていたけど、大丈夫なの?」

「ん?ああ、案ずるな。それ用の魔法具は持っておる。先程は失念しておって、忘れていた」

「そう。ならいいけど」


 何の魔法具なのかは気になる。

 後で教えてくれないかな。




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