表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/203

気分は屋根裏の忍者


 複数の男の声がだんだんと近づいてくる。その中になんだか聞き覚えのあるような声もしてこっそり覗いてみれば、ビンゴだった。


「……あいつ…!」


 俺を拘束達磨にした用心過剰男がいた。

 名前は忘れたが、念には念を入れるがヤバい狂人なのは覚えている。

 額のプレゼントは消えてしまっていて残念だった。


「迷宮の上にある教会から来てんのか?」


 クレイの言葉に俺は「げー」と内心舌を出した。


「あるの?教会」

「魔界だが、ここはまだある」

「……へぇ」


 坊主憎ければ袈裟までとかの諺があったけど、今理解した。


 その用心過剰男が恐らく上の教会に所属しているのであろう司祭みたいな人と、これまた恐らくお偉いさんであろう服の男が各々護衛数人引き連れて話していた。

 本来聞こえるはずが無いのだろうが、何故だか隠れている場所のせいなのか、それともこの迷宮湖の形状によるものか、うっすらだが会話が聞き取れた。

 本来なら会話が聞こえるのも嫌だけど、敵を知ることも大事なのは知っているので仕方なく耳を澄ませた。


「   ──今回の聖戦での作戦は失敗だった  」


 作戦?

 いったい何の事だ。


「──パーティーに加えればみんな参加できるわけではない。現に軍とは分断されて大損害を出した。考えを改めて対策を練り直さねばならない」

「次の聖戦箇所を予想して、予め配置しておくのはどうでしょうか?それならば通常のエと同じように認識し妨害されないのでは?」

「それは難しい。発生箇所はある程度予想が出来ても場所までは特定できない。運良く入れたとしても辿り着ける保証がない」

「ううむ…」


 その会話を聞いて、ドルチェットが小声で「なぁ」と話し掛けてきた。


「もしかしてあの入口を塞いでいた奴らの事言ってんのかアレ」

「多分そうじゃない?」


 不自然に閉じ込められていたから不思議だったけど、もしかしたら聖戦には俺の知らないルールってのがまだあるんだろう。


「それにしてもガンウッドめ、あの役立たず。あれだけうまく立ち回れと言い付けたが……。あまりにも愚鈍過ぎる」

「そもそもアレに期待するのが間違いでは?偏りはあるが、細かく報告はしてきているのだ。とりあえずはそれで良しとしてみては?」


 大きなため息が聞こえた。

 あのずんぐり男が間者か。完全な人選ミスだと思う。


「だいたい傀儡が反抗心を持つのは如何なものか?ソードの本質とはいえ、とてもやりにくい」

「まぁまぁ、今は馴染みの時期です。これが過ぎれば御しやすくなりますよ」

「信じがたいものだな。疑われている以上、制御するためにはある程度手を出さねばならないのではと私は思うが」

「さすがに度を超し始めればで良かろう。それよりも一つ気になっている事がある。貴殿の所属するカップだ。彼はほとんど聖戦に参加していないではないか。一体何をしているかと思えば治療や保護ばかり」

「お言葉ですが、本来カップの役割はそういうものであります。

 苦言を呈すならあのペンタクルでしょう。教会に所属もせず、勝手に動き回って神具で地形を変えているそうですよ」

「全く忌々しい。だから商売人は嫌いなのだ。自分の利益しか考えん」

「あんな奴の手に渡らなければこちらのモノであったのに。アレの管理を任せていた守人は処刑したのだろうな?」

「当然です。まぁペンタクルは今のところはまだ泳がせておきましょう。幸いにも利害は一致しているうちは驚異にはなり得ない。まずはワンドだ」


 うむ、と三人が頷く。


「あれが我々の手元を離れているのはまずい。しかもよりにもよって異界人の手にあるのは大変な痛手だ」

「早々に回収して本来のあるべき者に渡さなければなるまい。まだ聖戦は二回目だ、まだ間に合うはずだ」


 何か結構大変な話を聞いてしまっている感じがするけど、それにしても専門用語が多くて良く分からない。

 だけど話によると、やっぱり“勇者”ってのは俺と功太以外にもいるようだ。

 最後のドァムングンが謎の硬直をした理由もそれなのかもしれない。


 そんな事を考えつつ更に耳を傾ける。


「とにかく更に懸賞金を上げて、ソードにも強く奴を始末するように命令しよう」

「次の予定地は決まっているが、場所が悪いな」

「大丈夫です。一応考えはあります」

「なんだ何の考えだ?」


 必死に耳をそばたてるがそいつらは徐々に離れていくから結局聞き取れなかった。

 クレイも聞き耳をしてくれたけど、水の音に紛れて聞き取れなかったらしい。


「……結構やばいこと話してたな…」

「……やっぱそうなんだ」

「あれだな、やっぱ神聖を謳ってても結局トップは腐ってんのな」


 ドルチェットがケラケラ笑う。

 笑うところだっただろうか?

 ふと見れば、ジルハが冷めた目をしていた。

 何を考えているんだろう。


「ふむ」とアスティベラードがなにやら納得した様子だ。

 俺はさっぱりだけど、シャールフヲタクのアスティベラードは何かが分かったらしい。


「やはり4キ揃ってはいたのだな。2戦ともディラとその友人しか居らぬから、今回は2キだけなのかと思っておった」

「4キって?」


 なんだそれと伺うとみんなが「!?」という顔をした。

 これもしかしてまた常識情報だったんだろうな。


「……もしかしたら前に聞いていたかもしれないけど全く覚えてないので教えてくれませんか?」


 どんなに記憶を探っても出てこない。

 でももしかしたら聞いたかもしれないから恐る恐る訊ねてみた。


「そうか、マーリンガンさん教えてなかったかもしれないのか」

「そもそもこやつ、シャールフを知らなかったからな。可能性はある」

「もうここ出てからで良くないか?教会連中が近くにいるって分かった以上、さっさとここから出たいんだけど」

「ドルチェットに同意です。どうやらさっきの人達以外にも居るみたいです」

「囲まれたら面倒だな。よし、速攻で逃げるぞ」


 ということで、説明は後回しにまずは逃げることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ