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何かと契約してしまったみたいです?

「もしかして呪いか!?」

「…です」


 冷静になろうと必死になるも、俺は内心めっちゃ焦っていた。


 まずいまずいまずい。

 弓兵が視力失くすとか一番ダメージでかい。


 そう思っている間も右目から失明して、左目もだんだん見えなくなっていく。

 そして遂に何も見えなくなってしまった。


 なんでかセンサーはドァムングンを示していたけど、もしかしてこれって視力関係ないのか。

 新しい発見に驚きつつも、センサーが働くも目の前は真っ暗なわけで…。


 とはいえ、ここで勘で射ってもきっと当たらないし。

 せっかくの総攻撃の好機なのに、こんなことで足を引っ張るなんて絶望しかない。


 いやいやいや、こんなところで立ち止まってなんかいられない。

 みんなだって呪いが発動しても頑張ってるんだし。


 気を入れ直して立ち上がる。


「お、おい、無理すんな」


 クレイが心配してくれている。

 でも、もう大丈夫だ。


「大丈夫、一応まだセンサーは生きてるし、腕も動くし」


 視界の端に次の呪いの内容が表記された。

 次は特定スキル封印らしい。

 なにを封印されるんだろう。千里眼とかかな。


「でも見えないんだろ?」

「まぁ、うん。はい。でもなんでかボスの居場所は分かるんだよね。センサーは生きてるっぽい」


 クレイに「そんなことあるんだ」と言われたけど、俺も驚いている。

 眼を開けても開けても黒のままだけど、何故かボスの位置のセンサーはそのままだから、とりあえずそれに向かって攻撃をしておけばなんとかなるか?

 いつもは攻撃回数を増やすために雨状放射をたようしてたけど、範囲を狭い攻撃方法に変更して貫通力上げれば次被害は減らせると思う。

 ただ、俺に攻撃がきても避けることが出来ない。


 どうしようかと思ったとき、ゴン、と隣で重いものが置かれたような音がした。


「大丈夫だ、ディラ。お前に来る攻撃はオレが引き受けてやる。だから、やれることに集中しとけ」


 なんて男前なんだ。さすがはリーダー。


「わかった」


 クレイに言われた通り、俺は攻撃に専念しよう。


 エクスカリバーを構えて矢をつがえる。


「よし!やるぞ!!」


 砲台スキル発動してひたすらマーク目指してガンガン矢を射ち放つ。

 範囲は狭く、けれど貫通力をいつもより上乗せて。

 砲台スキルはその場から動けなくなる変わりに射出の威力と速度を上げ、標準のブレを安定させる効果がある。

 眼が見えなくなって下手に動けなくなった今はこれ程適したスキルもない。


 ちょこまかと動きまくるマーカーをひたすらに狙う。

 視界が黒だからなんでこんなに動いているのか分からないけど、これはこれでシューティングゲームみたいに集中できて良い。


 当然こっちも攻撃されてるけどクレイが何とかしてくれてるらしい。

 時折凄い音や振動が周囲から聞こえてくる。

 盾の強化とか耐久とかのスキル封印されて使い捨て状態なのにすごいなと感心した。


 射ちはなった矢がマーカーを掠め、それと同時に金属が凹んだ音が響く。

 お?もしかして惜しかったか?


 耳を塞ぎたくなるほどの叫び声が響き渡る。

 あまりの声量に地面に落ちた何かの破片が細かく振動している。

 次第に揺れが酷くなり、凄まじい轟音が鳴り出した。


「え、なに?なにが起こったの?」

「まずい!!!」

「うわっ!?」


 クレイが突然俺を抱え上げて走り出した。

 次の瞬間、爆発したのかと思うほどの凄い音と誰かの悲鳴、怒声、そして衝撃が襲い掛かった。

 クレイの事だ、きっとちゃんと盾を出してくれていたのだろうが、まさか攻撃が盾を貫通して来るとは思わなかった。


「いっ…、ッッ!??」


 見えないから地面との距離が図れずに受け身を失敗した。

 全身を強かに打ち、脇腹が何かの突起にぶつけ、体内から嫌な音がした。

 激痛だ。間違いなく肋骨が折れた。

 肋骨が折れた激痛と、全身を撃った衝撃で上手く呼吸が出来ない。

 ゲハッと喉を上がってきた生ぬるい液体を吐き出した。

 血だろうか。もしかしたら折れた肋骨がどっかに刺さったか?


 近くで唸っている声が聞こえる。

 クレイか?


「…ぐ、クレイ…大丈夫か…?」


 呼び掛けるもうめき声だけで返事がない。

 多分俺と同じく動けなくなってるんだろう。

 耳を済ますが、さっきまで音がしていたのに嘘のように静かになっていた。


 最悪の予感がして呼吸が早くなる。

 こんなところでまさか…全滅するのか?


 ひひひひ、と甲高い声が笑っている。

 知ってる誰かのじゃない。ゴーストのものだ。

 笑い声と共に冷たい風が吹いてくる。


 歌が聞こえた。


 ゴーストが楽しそうに歌っている。


 みんな倒した。

 倒した。

 九つの尾でこんごろり。

 こちらの勝ちだ勝ちだ。

 殺そう。

 勇者たちを踏み潰そう。

 でもその前に。

 この黒い獣は嫌いだから。


 まずはコイツらから、殺しちゃおう。


 黒い獣??

 もしかしてクロイノか??


 ズルズルと重いものが這う音がゆっくりと移動していく。

 歌の通りならクロイノと一緒にいたアスティベラード達も危ない。

 なんとかしないとと思いつつも体が動かない。


 まずいまずいまずい。このままだとゴーストの言う通りになぶり殺される。

 その時ふと思い浮かんだ。




 “ここで死んだらどうなるんだ?”




 いや、それは前に聞いた。

 シャールフの話で、その時は村が消えたとか言っていた。


 でも俺が知りたいのはそこじゃない。

 勇者は一度死ぬみたいな話も知っているけど、今一番知りたいのはそれじゃない。


 俺以外の仲間が死んだとき、その時どうなるんだ?

 なんの問題なくリスポーンできるのか?

 わずかな希望を理性がそんなわけないと否定する。

 そうだ。楽観視してはダメだ。

 もし、もし、その死が反映されるとしたら?


 ぞわりと背筋が凍る。


「ぐっうぅぅううううーーーーっ!!」


 痛む体を叱咤してなんとか立ち上がった。

 だけど、見えない。

 何処を見ても、どんなに目を開いても、黒。


 こんな状態じゃ、闇雲に射ったところで当たるはずもないし、下手したら倒れているらしい仲間に当たる

 しかもセンサーも何故か地面すれすれをぶれて移動していて安定しない

 このままだと本当に全滅する

 何かないのか?この状況を打開できる“何か”は!?


 頼む。何でもいい。

 何かを引き換えにしても良いから…っ、






 “助けてくれ!!”







 

 声には出ていなかったと思う。


 強くは願ったが。




 だけど、この時の選択は間違ってなかったと思いたい。












 脳内に響く知らない言語がグニャリと歪んで入り込んできた。

 楽しそうな笑みを貼り付けて、この声は言った。








 ──願ったな? 貴様の■■■と引き換えに叶えよう。





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