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呪い発動


 功太の必殺技が飛んでいく。見た目は煌めく光の十字槍。中身はガラスの破片の集合体という感じか。

 それが一直線に伸びて俺の開けた穴を抜けてドァムングンへと襲い掛かった。

 避けられる速度じゃない。

 防ぐ動作も見受けられなかった。

 つまり、直撃だ。


 ふーっ、と功太の溜めていた息を吐く音。


 手応えはあったように思う。さて、どうだ?


 耳を済ませばガラガラと崩れる音がする。

 氷が瓦解する音だ。

 やったかと期待する気持ちと共に、立ち込める水蒸気が晴れるのを待つ。


「…ん?」


 そこにあったのはドァムングンの杖が一つ、無傷で宙に浮いていた。そして肝心のドァムングンの姿がない。

 勝ったのだろうかと思ったが、それにしてはなんだか様子がおかしい。


 次の瞬間、ゴオ、と周囲から風が巻き上がり、その風に巻き込まれるようにしてゴースト達が無理やり引っ張られて伸ばされて杖に集められていく。


「はあ?」

「…うわぁ…まじかぁー…」


 ゴーストがより集まって、それがドァムングンの形へと纏まっていき、下から水と氷のネズミが吸い寄せられて固まって初めの姿のドァムングンへと戻った。

 ドァムングンが杖を手に取り、こちらを忌々しそうに見下ろした。


 視線を合わせることもなく、俺と功太の意見を擦り合わせる。


「これ…、多分アレだよな…」

「…アレだね」

「本体が武器の部分ってやつ」


 なんだそれ、と言いたげなクレイの頭にはてなが浮かんでいるように見えた。

 ここにはそういう奴居なかったのか。

 けれど今は詳しく説明している時間がない。


「ということは、狙うのはただ一つ」

「「 杖 」」


 示した合わせたかのように俺は素早くエクスカリバーに戻し、ダッと功太とふた手に分かれた。


「おい!ディラ!!」


 クレイが俺の後に付いてきた。


 弱点が分かれば固まっている理由はない。

 どんな形であれ、あの杖を破壊できれば勝ちなんだ。

 しかもなんでか分からないけれど、ドァムングンは強化される前の状態に戻っている。

 つまり、叩くのなら、今!!!


「せやっ!」


 急ブレーキして即座に杖に向かって矢を射出。

 水から氷が伸びて相殺したが、明らかに反応速度が鈍っている。

 ドァムングンがギロリと睨み付け、氷の塊をこちらに飛ばしてくる。

 それらをクレイの盾と回避で凌ぎながら隙を見ては攻撃を仕掛けていく。

 そして功太も後方からドァムングンへと攻撃を始めたらしく、容赦のない光の帯がドァムングンへと飛んでいった。

 氷の雨を走り抜けながらクレイが俺に訊ねてくる。


「さっきのどういう意味だ??本体が武器ってのはなんだ!?」

「言葉のままだよ!武器の形をしているんだ!だからあの人の形のものはただの攻撃そらしの囮!」

「そんなのアリなんか!?」

「ありだよ!」


 後ろで功太が猛攻撃を仕掛けているのが聞こえる。

 弱点一転狙いの為、広範囲攻撃を控えて貫通力と速射が出来る技に切り替えたようだ。

 そうこうしている内にジルハに乗ったドルチェットが合流してきた。


「よぉ!一応話は聞こえたぜ!」


 いつも通りのように見えるドルチェットだけど、ジルハ完全な獣へ変わっており、ドルチェットの右腕が力なく垂れていた。大剣は左で持ってるが、あまり不自然に見えない。なんでだろうか?


「ってーと、自分等はあの杖目掛けて攻撃をしていけばいいって事か!?」

「そゆこと!!」

「うっしゃ!!なら話は早いぜ!!」


 ドルチェットが少し離れた位置にいる人影に向かって声を張り上げた。


「聞いたかアスティベラード!!ノクターン!!補佐頼んだぜ!!!」


 ドルチェットの視線の先にはクロイノに乗ったアスティベラードとノクターンがいた。そのノクターンの手には見たことのない大きな本。

 なんだあの本。


「…えと、…す、澄まし顔に花束を、泣き顔には甘露を、怒りには抱擁を、見守り、示す、諭す、導く、安寧よ留まれ…《ウコヨーギフ》」


 ノクターンが魔法を使った。


「魔法が使えなくなったんじゃなかったの?」


 俺の疑問にドルチェットが答える。


「暗記している詠唱を唱えられなくなっただけで、本みればいけるらしいんだと」

「あ…そうか、記憶混乱?とかだからか」


 確かにメモ見ながらだったら関係ないもんな。


「向こうの魔術師もそれに気付いたみたいでな。ほれ、詠唱やめて魔法陣で攻撃してる」


 見ると、功太の魔術師──名前忘れたけど──その人がカッコいい魔法陣を展開して炎を放出している。

 まるで火炎放射機だ。

 ゴーストがいなくなったといっても、ここはまだ凍えるほどに寒い。地面も凍りついているから、ほのぼの使いが増えてくれるのはとてもありがたい。


「攻撃来るぞ!!」


 クレイからの警告でドァムングンから氷のつぶての攻撃をクレイの盾も使い、回避した。

 さっきよりもつぶてが大きくなっている。

 さっきから功太の執拗な攻撃を受けて、少しずつ氷の盾を身に付けていた。

 そろそろ俺も攻撃再開しないとな。またでかくなられても厄介だ。


「んじゃ!また後でな!!」


 ドルチェットとジルハが走り去っていく。

 位置的に俺と功太の間に回って包囲する気なんだろう。

 やっぱりアタッカーが多いのは良いな。


「そんじゃ!やりますか!」


 火炎属性付与した矢を次々に射っていく。

 さっきよりも氷が脆くなっているらしい、攻撃が通りやすくなっていた。

 ゴーストが減って、逆に炎使いが増えて室温が上がったからか?


「せいっ!」


 雨状放射で波状攻撃を繰り返して、ドァムングンに休む暇を与えないようにする。あとは隙を見てあの杖を破壊できれば。


 突然、ズニュンと視界が歪んだ。


「あ…?」

「どうしたディラ!」


 しまった、忘れていた。

 視界の端にあるカウントがゼロになっているのを確認して、血の気が引いた。

 呪いが発動した。

 あ、と思う間もなく右目の視力がみるみるうちに失われていった。



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