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聖戦2


 ドァムングンが杖を掲げて何かを叫ぶ。いや、これは呪文だ。


「構えろ!来るぞ!!」


 功太がそう言うと同時に水の中から大量のゴーストが現れ、こちらへと向かってきた。


「うわっ!?」


 今までに見たことのない数にビビる俺のすぐ近くで功太の仲間も悲鳴を上げていた。

 そんな中、功太の仲間のアリマが、「こ、今度こそ!」と意気込み杖を大きく掲げる。しかしアリマが呪文を唱える前にロエテムがゴーストの前へと躍り出た。


 フンッ!!!と効果音が付きそうな勢いでロエテムのサイドチェスト(※マッチョポーズの一つ)が炸裂し、それと同時に全力で発光した。

 ロエテムビームによって一瞬で涌き出てきたゴーストが蒸発した。


 予想外の自体だったのか、ドァムングンも一瞬動きを止めたように見えたが、すぐに再び杖を振る。

 またしても大量に水から這い上がるゴーストが津波のように襲いかかるが、ロエテムは違うポーズで再び発光。

 またしても一瞬で蒸発ゴースト。

 それを何かのリズムゲームの如く繰り返している異様な状況に耐えられなかったのか、腹を抱えて爆笑するドルチェット。気持ちはわかる。

 そんな俺達とロエテムを見て功太は唖然としていた。


「なにあれ……。お前んとこロボット居るの?」

「まー近いかな?」

「すっげー目が痛いんだけど」


 そう言いながら功太は目をシパシパさせていた。


「そこは慣れて欲しい」

「慣れ……」


 功太とそんな会話をしている最中でもロエテムのポージングは淀みなく続き、難なくゴーストを無効果されているドァムングンは忌々しそうにしていた。


 ドァムングンがロエテムに向かって杖を向けた。

 なんだと見ていると、ロエテムが「!?」という動きをした。

 攻撃をされた様子は無かったが、どうしたんだろうか。


「…あ、大変…」

「どうしたノクターン」


 クレイがノクターンに訊ねると、ノクターンはおろおろしながら答えた。


「…ロ、ロエテムに呪いが付与されてしまいました…」


 なに!?


「内容は!?」

「…その、魔力混乱…です」

「魔力混乱?ロエテムに魔力なんてあったか?」


 クレイは首をかしげるが、アスティベラードはすぐに察したらしい。


「なるほど、つまりはノクターンから流された魔力がロエテムの中で正常に回らなくなるのだな。して、その結果どうなる?」

「…ロエテムは最悪、停止します…」

「やばいじゃん」


 今ゴーストに最も有効な手段はロエテムのビームだというのに、それが停止するとなれば死活問題になってしまう。

 だけど、その呪いはある意味納得の内容でもあった。

「よっぽど嫌だったんですね」とジルハがいう程だ。


「ちなみに聞くけど、ノクターンのカウントってあとどれくらい残ってる?」


 俺がそう聞くと一瞬間が空き、ノクターンはハッとした顔をして青ざめた。

 カウントの存在、忘れてたのか。


「……、…守れ 護れ 汝の子らを 硬い殻にて お守りください…[エーアン・ウカターク]。 母成る大地よ 天よ 始まりの火よ 我等に立ち上がる勇気と力を…[エーアン・ウコースト・オヤラーキト]…。 何もない何もいない 感じない そこにいるのは空気 石 草 無害なものなり…[ネスーグミ・イノコーク・アウィーサタゥ]。一つ折りて、二つ。二つ折りて、四つ。三つ折りて、八つ。重なる度に厚みを増し、いずれは月に届く塔の如く…。その塔すら跨ぐ巨人の戦槌は気高き天からの一閃。地を砕き谷を築き山を成すデイダラの重き一撃…[アソーイ・ケグオーク]。…螺旋の家、網目の家、逆さの獣に問われて、何を急ぐ、網を引かれて、纏わり付く粘りけ、泥の中に沈んだ。進めど壁、何度願う、もっと速くと…[カヤーフ・オットム]。…君はセイジャ成り、輝くものなり、火を従えるものなり。闇を裂き道を照らすものよ、泥の手を払い先を往け…[オーカグンネ]」


 凄い勢いで詠唱を初めて次々に俺達にバフを盛っていく

 きっともう本当に時間がなくて、呪いが発言する前に盛れるだけ盛ろうという感じなのだろう。

 詠唱は途切れることなく紡がれる。

 聞いたことのあるものから全然知らないものまで淀みなく爆盛りされていく。

 ゲームだったらエフェクト祭りになっているだろうな。

 しかも──


「えっ!」

「なにこれ!?」


 相当焦っているのか範囲指定がガバガバで、俺達だけじゃなく功太達にも掛かっているっぽい。

 功太の仲間がバフ山盛り勝手にされているのに気が付いて驚いたような声を上げていた。

 と、するならば多分あの丸太もバフ山盛りだろう。意味があるのだろうか。


「わ、私だって! …縺ゅ≠縲∵?縺悟菅繧医?ょ凍繧後↑謌醍…うっ、ふ、うう…。こんなに進行してるなんて…こんなの本当に唯の役立たずじゃない…ッ」


 功太の所の魔術師だったらしいアリマも詠唱しようとした瞬間に、声が突然ノイズになっていた。

 しかもどうやら呪文の場所だけ。

 もしかして“呪文が唱えられなくなる”呪いなのか。


 思わずノクターンに視線を向けると、まだノクターンはバフを盛り続けていた。

 もはやなんの魔法を唱えているのか分からないし、アスティベラードですらちょっと困惑していた。


「!」


 功太が怖い顔をしてノクターンを見ている。

 なんだろうか。


「いや、これは感謝するやつだ…。うん。朝陽!行こう!」

「お、おうさ!」


 なんでそんな怖い顔していたのか疑問は残るが、ロエテムが頑張っているし、今はまず目の前の敵に専念しよう。


 矢を生成して、千里眼を発動。

 まずは小手調べに一射する。


 案の定水からゴーレムが出てくるが、氷のゴーレムなんかたかが知れている。

 一撃で砕け散り、貫通。

 矢はドァムングンの顔のすぐ真横を通過した。


 ゴーレムの氷で軽く滑って進路をずらされたらしい、けれど、今射った矢は通常の矢だ。

 ノクターンのバフ山盛り状態ならばゴーレムなど目ではない。

 ロエテムがゴーストを押さえているあいだに弱点を割り出して叩く。俺が補佐、功太が隙をみて大型の攻撃を入れていけば削れる。


「功太!俺が補佐を──」


 ドァムングンがス…と目を細めた。


「ᚵᛂᛎᚢᚵᚮ, ᚵᛂᛎᚢᚵᚮᚵᛁᚿᚵᚮᚮᚮ, ᚵᚮᚱᚮᚢᛎᛂᛂ!!」


 死にかけのカラスのような声でドァムングンが叫んだ。

 あちらこちらから水がひび割れる音が鳴り響く。

 なんだ?

 ひび割れの音が鳴り響き、近くの氷の欠片がネズミに変化した。

 もしやこれが爆発するネズミ。


「げっ!」


 そのネズミがこちらを認識した途端飛び掛かってきた。


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