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迷宮湖


「乗れ」


 差し出されたアスティベラードの手を取り、俺はクロイノに飛び乗った。


「皆も早く!」


 こちらに気が付いた皆が次々にクロイノに飛び乗っていく。

 最後にロエテムも飛び乗るのを確認して、アスティベラードが不敵な笑みを浮かべて前を見据えた。


「はっ!このくらい突破して見せるわ!」


 クロイノが駆け出す。

 みるみるうちに加速していき、凄い速度になってきた。

 これ、クロイノ見えてない人にはどう写るのだろうか。五人が座っている感じで飛んでいる風に見えるんだろうか。

 思わず想像しかけたが、面白い絵になってしまい笑いそうになったので慌てて消した。


「うわ…、結構いる…」


 前方に軍の大群が見えてきた。

 一体どうするんだと焦った瞬間、アスティベラードが「跳べ!!」と指示を出した。

 途端にクロイノが跳躍した。

 頭上に迫る天井だが、ギリギリぶつかってはいない。通路の天井が高めで助かった。

 足元には大勢の武装した集団がひしめいており、クロイノ、というか俺達に気が付いたらしい人が驚きの声をあげていた。

 どうやらクロイノも見えているらしい。

 良かった。座った状態での空中高速移動のようになってなくて。


 速度が落ち、落下する。

 その先には、人。


「うわぁ!!??」

「ひいっ!?」


 ドシンとクロイノは大群のど真ん中に着地した。

 足元、というか足下には勿論軍の人がいて、思わず踏み潰したと血の気が下がったけど、踏まれた人の体をクロイノの体が通過しているのがみえた。

 起用だな、クロイノ。

 勿論通過された人は泡を吹いて気絶した人や腰が抜けている人がいるけれど、それは仕方がないといえよう。


 ドウ!と再びクロイノは跳躍し、軍を踏みつけながら進んでいく。

 曲がり角はクロイノが壁を蹴って方向転換したところで、通路の出口が見えた。

 前方に越えてきた軍の人達の装備よりも更に上質だと思われる鎧の集団がいて、それらがゴーストと戦っているのが見えた。


 吐く息が白い。

 もともと寒いのがもっと寒くなっている。

 きっとゴーストの数も凄く多いのだろう。


「ん?」と、鎧の一人がクロイノに気が付いて驚愕の声を上げた。


「なんだあれは!??」


 その一言でゴーストと戦ってない後方の鎧がこちらに向かって武器を抜いた。


「後ろから敵が!!!!」

「見ろ!あれ指名手配犯じゃないか!!?」

「なに!!??おい!!!そこで止まれ!!!!!」


 状況分かってないのかなこの人たち。


 クロイノは着地し、鎧に向かって更に速度を上げた。次々に軍の人達の体を通過しては恐怖で倒れているのを無視し、アスティベラードが「やれ」と指示を出す。

 殺れ。と聞こえた気がしたけど、気のせいであって欲しい。


 鎧達がクロイノに向かって剣を突き出すための姿勢を取った。

 もしあれに何かの魔法が掛けられていた場合大丈夫なのだろうか。


「ねぇ、大丈夫あれ?大丈夫??」

「問題なし!!!」


 突き出された剣が当たる前にクロイノは再び跳躍した。

 驚きの表情で見上げる鎧達の頭上を軽々と越えていき、ゴーストと戦っている最前列までも悠々と飛び越えた。


「おい!前!氷の壁が!!」


 クレイが悲鳴のような声を上げるが、クロイノは気にすることなく氷の壁へと突撃した。

 クロイノの頭突きが氷の壁を破壊して、すぐ下にいたゴーストを踏み潰した。


 幽霊って、物理攻撃効くんだな。

 いや、クロイノが調整を掛けたのか。


 前方に群がる幽霊達を前足で踏みつけて着地を果たしたクロイノはそのまま奥へと向かう。

 後ろを振り返ると、たくさんのゴーストによってクロイノに破壊されたはずの氷の壁がみるみるうちに修復されていた。


 やっぱり、凍死している人はゴーストの仕業だったのか。


 クロイノから降りて辺りを見回した。

 恐らく此処が迷宮湖とやらだろう。

 凄く広い空間だった。

 まるで東京ドームのようなアーチ状の天井と、空間の真ん中には湖があった。

 真ん中には祭壇のようなものと、作られた足場。そして其処へ至る橋のようなものが架けられている。


「うわっ、マジかよ」


 ドルチェットが湖をみてそんな声を上げた。なんだろうとそちらに目をやると、湖からゴーストが這い出てきていた。

 まさかのゴースト発生地だったとは。

 湖の祭壇に人影がある。


「…あれがボスか」


 センサーはあれがボスだと示している。

 前回のようにとんでもない異形でもないし、体躯も普通の人間と同じだった。

 さながら聖女のような出で立ちだが、顔半分がペストマスクのようなもので隠されており、背中からはカラスのような黒い翼が生えている。


 長い金色の髪が揺れて、その人の視線が合った。



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