ワンピース
宰相殿にブラウ商会に送ってもらう。
例によって、馬車の中で着替えた。
「・・・・・」
「・・・・・」
着換えて、ソフィーになったとたん、気まずい。まあ、ばれているんなら、何の心配もないが、、、、
「え、、、と、、、殿下には?」
「私から申し上げておきますよ。しばらくの間、ゆっくりなさい。ブラウ商会にいるほうが、私も安心です。」
「・・・・ありがとうございます。」
「まあ、3日もしないうちに、殿下が迎えに行くことでしょう。」
「・・・・そう、、、でしょうか?」
「はい。」
*****
急に物凄い馬車で乗り付けたので、驚かれるかと思ったが、いつも通りだった。
「あら?目と鼻が赤いわね?さては、、、、フィルさんとけんかしたのね?ふんふん。迎えに来るまで、帰っちゃダメよ?」
「・・・はい。急に、すみません、、、、」
「今ねえ、王城から先に納品したものの支払いとかがあって立て込んでるから、、、そうね、ソフィーちゃん、時間があるなら、ワンピースを完成させちゃいなさい!」
「あ、、、はい、、、」
「今日から事務棟に泊まるといいわ。家に3人は狭いから。もちろん私も泊るからね?着替えは、、、まあ、なんとかするから、心配なしよ!」
そう言って、クロエさんは走って行ってしまった。本当に忙しそう、、、、
10月の大舞踏会のドレスの注文も大変だって言ってたから、、、忙しいところにおじゃましちゃったかな、、、、
作業部屋で、作りかけてずいぶん経ったワンピースの仕上げにかかる。
すっきりしたAラインのワンピースは、くるぶしが見えるくらい。
半袖のパフスリーブを軽い生地でつけるのに、思ったより時間がかかってしまった。もともと、、、、不器用なのは否めない、、、、
袖と同じ素材で、襟を付ける予定だったが、ないほうがすっきりしていいんじゃない?と、パオラさんに言われて、完成させる。我ながら、、、よくできたと思う。時間はかかったけど。
夕食は従業員食堂でご馳走になり、クロエさんの寝間着をお借りして、客間に泊まる。
レオさんも泊る気だったらしく、クロエ様と言い争っていたが、渋々、帰って行った。
「良かったんですか?、、、あの、、、私のせいで、、、」
「あら、いいのよ、いいのよ。でもねえ、また、女の人に誘惑されたりしないように、釘を刺しておいたのよ。」
「・・・・・また、、、?」
「そうそう、また。」
そう言って、クロエさんはころころと笑った。
「しかも、、、、ソフィーちゃんかわいいからね、、、、13歳だし、、、、」
「え、、、と、、、」
「いやいや、、、」
その晩は、クロエさんと布団にくるまりながら、男がどんだけマザコンか、なんて話を遅くまで繰り広げた。クロエさんの恋物語も聞いた。
「・・・・でね、、、前の婚約者はつまんない男だったのよ、、、でもね、貴族の結婚なんてそんなもんかなあ、って思ってたんだけど、、、その男から婚約解消されて、家を飛び出して見たら、、、、レオはね、私の能力を理解して、使ってくれるのよ。嬉しかったなあ、、、、やれることは、やってみていいんだ、って思えたの。他の子たちもそうよ、やってみればいいんじゃない、って、、居場所を作ってくれるの。大好きよ。」
「・・・・・」
「この人を無くしたら、私の人生、窮屈だろうなあ、って、、、そう思ったのよ。」
「・・・・・」
「ソフィーちゃんはどうなの?フィルさん、、、」
「・・・あ、いえ、フィル様は、、、そう言うんじゃなくて、ブリアでの保護者的な?」
「あら、、、そうだったの?でも、喧嘩が出来る人は大事にしなさいよ。腹に抱えて本当のこと言わない人のほうが多いんだから。」
「・・・・・」
*****
ブラウ商会に泊まって3日になった。
いつまでもレオさんに不自由をおかけするわけにもいかないので、、、宰相殿に頼んで、どこか滞在するところでも探していただくか、、、、と、考えていた。
「午後はレオもカールさんもいるから、ソフィーちゃんのダンスのレッスンでもしましょう!ワンピースも出来たみたいだし。」
パオラさんが、ワンピースに合わせて、ヒールのある靴を用意してくれた。
「さて、、、レオ!カールさん、よろしくね。ソフィーちゃん、ダンスは?」
「え、、、と、、、基本ぐらいなら、、、」
「うん、うん、、、カールさん無駄に上手だから、お任せして踊ってみてね?」
金庫番をしているイーサンさんが、バイオリンを弾いてくれた。
お辞儀をして、構える。
カールさんのリードが物凄く上手で、びっくりする。身長差が気にならないほど、、、踊りなれていらっしゃる、、、、銀髪が煌めいて綺麗、、、アイスブルーの瞳が伏せられて、なんか、、、、色っぽい、、、、、
私の作った淡いブルーのワンピースが、ふわり、と揺れる。
久し振りのダンスだけど、上手に踊れているかしら、、、、、、
ちらりと、レオさんとクロエさんのダンスを見る。お二人共、楽しそうに踊っている。
・・・つられて、笑ってしまう、、、