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三題噺もどき2

聖なる。夜に。

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくきゅうじゅうなな。


※一応注意※

 


 カチ。


 かち。


 カチ。


 かち。


「……」

 一定の間隔で動く針の音。

 狭い部屋の中で、1つ静かに鳴っている。

「……」

 机の上に置かれている時計をぼうっと眺めながら。

 特に何をするでもなく座り込んでいる。

「……」

 小さな部屋の中に置かれたベッドに背を預け、腕は床に落としている。

 足は前に放り出され、机の下に潜り込んでいる。

「……」

 足先は、冷たい空気にさらされて、ジワリと痛む。

 指先は、冷たい床に触れているせいか、更に冷たい。

「……」

 左目がピクリと跳ねる。

 最近よくあるのだが、これが鬱陶しい事この上ない。

 原因があるのだろうけど、それをどうにかする暇もないし。

「……」

 外はもう既に真っ暗になっているだろう。

 この時期は気温の異常はあっても、陽の落ちるのは早いままだから、あっという間に暗くなる。最近は気づいたら真っ暗なんてざらにある。

 色々とせわしない仕事なもので、外を見ている余裕なんてないものだから、尚更そう思ってしまう。

 夏場はまだ明るいなんて毎日思っていたのに、気づけばもう暗いとなっているのは、何とも自分勝手なものだ。

「……」

 そういえば。

 今日は聖なる夜と言われる日だった。

 子供たちは夢に浮かれ、安らかに眠り。

 恋人たちは恋に浮かれ、眠れぬ夜を過ごす。

「……」

 どこから伝わってきた文化かは知らないが、年末のこの忙しい時期によくやってくれるものだ。英国なのか欧米なのか、どちらにせよ外国からのものだろう程度に思っているんだが。

 ただでさえバタバタとするこの師走の時期に、どうしてさらに忙しくしないといけなくなる。

 ……そう思うのは、イベントごとがあるたびに忙しくなる仕事をしているからだろうか。

 この聖なる夜が終わっても、今度は正月がある。

「……」

 それが嫌だから、今こうしているわけでもないんだけど。

 見ればそう思われても仕方ない。

「……」

 何もかもから逃げ出したくて。

 こんな聖なる夜にこんなことしているのかと、思われても。

 疑われても仕方ない。

「……」

 本来欲しかったものが手元になかったものだから、鋏で代用してみたんだけど。

 案外いけるものなんだな。

 かなり幼い頃から身近にあるものなのに、こんなに切れ味がいいモノであっていいのかこれ。その上今じゃ、更に持ち歩きしやすくなっていたりするのに。

「……」

 左目がまたピクリと動く。

 あぁ、本当に鬱陶しい。

 何をそんなに主張しているんだか。

「……」

 今度は。

 ぴくりと。

 左手が跳ねる。

「……」

 同時に。

 ズグ―と。

 痛みが走る。

「……」

 視線を。

 じとりと。

 床に落とす。

「……」

 じわりと、中身がこぼれている。

 それなりに時間が経っているせいか、勢いはない。

 せいぜい滲んでいる程度。

「……」

 まぁ、そのつもりでしたわけではなく。

 ちょっとした、昔からの癖で。

 やってしまっただけなので。

 深手ではなくてよかった程度で。

「……」

「……」

「……」

「……」




 つかれた。










 お題:左目・英国・鋏

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