絆勇の国ボウブレッジの成り立ち ロワジュとの出会い
絆勇の国ボウブレッジに入国しようとした僕達は由希のおかげで衛兵たちに追われることとなりました!
という事で!
事情徴収といこうか。由希さん?
「なんで爆破なんかしたの?」
歩きながら聞き出していこう。
あくまでも、にこやかに。そう、にこやかに語り掛ける。
僕の満面のスマイルの効果で、由希はひどく畏縮していた。
「えっと、ですね……ま、魔力を込めたらぼ、暴発したというか…暴走したというか………」
「なんで魔力込めてるんだよ!」
歯切れ悪く喋る由希に僕は耐えられずツッコんだ。
この人はどうしてこんなにも面倒ごとを起こすのだろうか?衛兵にも追われているのに、考える時間すらくれない。
「だって!腕掴まれたんだよ!?わいせつ行為には正しく対処しなきゃダメでしょ!?」
と、自分の主張を声高々に言ってのけた。
そして綿毛がツッコむ。
「この世界に【わいせつ】なんて概念存在しないよ」
淡々と告げる。その綿毛の目は遠くを見据えていた。
実体験かな?
「そんな……」
由希は何を想像したのか、いきなりエヘっとニヤけだした。
「と、という事は……B〇が差別されることは無いのね!この世界は神か!!」
なるほど………そっちに行っちゃったか~……でもそれは【わいせつ】には関係ないと思うよ。
「こうなっちゃじっとしてらんないね!早速どこかに拝みに………」
と、言葉を途切れさせた。
「どした~?なんか踏んだ?」
由希は呆然と街を見ていた。
「ねぇ、ここ本当に異世界?」
「なんでそんな質問するんだよ?」
呆れ気味に返すと、
「だってここ…ほぼ京都じゃん……」
由希の呟きで慌てて周りを見渡す。
今まで由希への質問と追われていることへの対処を考えていてあまり景色に気を取られていなかった…というよりは全く意識をしていなかった。
なぜなら、それは僕達にとって、とても馴染み深い風景だったから。
今、僕達の周りには………
綺麗に並んだ木造の建物と、等間隔に並べられた街灯や木々。床は石が敷き詰められていて、これもまた綺麗に整っていた。
まるで京都。まさに京都。
異世界で日本と似たような建物が造られる可能性は一体どれ程のものなのだろうか?生活スタイルも違う、環境も違う。魔物が襲ってくる世界で木造建築はあまりにも安全性に欠けている。
そんな疑問を浮かべていることを予知していたかの如くタイミングで、綿毛が説明を始めた。
「この街はね…いや、この国だね。もともとは他の国と変わらない建築方法だったんだよ。でも、その頃、この場所に国と呼べるものは無かったんだよ」
と、綿毛は告げる。
「国が無かったて……いつの話?それ」
「1000年くらい前」
めっちゃ古いじゃねぇか。
「でも、そこに国を出た一人の王子様と平民の少女がもともと住んでいた人達を巻き込んで、ここに国を作った。あ〜この二人はいわゆる駆け落ちだね。でも、国を作ったはいいものの、従臣も居ないし国民も飢餓で苦しんでいたのよ。徴税もできないから国を発展させることもできない。詰んでいたんだよ」
その二人は最初から国を作ろうとしていたのかな?それとも成り行き?どちらにせよ計画性の無い二人だったんだな………
「でもね、そこに勇者様が現れてお恵みを下さったの。魔法で土壌を耕し、雨を降らせ、害虫の駆除や雑草の片付けもいらない畑を作り、飢餓問題に終止符を打った!飢餓問題を解決した途端にこの国は一気に成長したよ!もともとここに住んでいた人達の絆が固かったのもあるけど、それと同じくらい、王子様も慕われていたんだよね〜。だから何の弊害もなく発展させることが出来た。勇者は国が安定するまでの5年間は見守っていたけど、その後魔王討伐の旅に出て行った……国名はそのあと決まったんだよ国民と王子様を繋ぐ【絆】と勇者への感謝を忘れないため、如何なる困難への勇気を忘れないための【勇】。この二文字を組み合わせて作られたのが絆勇の国、ボウブレッジ。街の景観は勇者のリクエストって感じ。故郷を思い出せるからって……」
この国の成り立ちって、勇者がいなかったら成立してないじゃん。
それに、この街の建物を作るのに一体どれほどの時間がかかったのだろうか?勇者にとってはイメージしやすかったんだろうけど、こっちの世界の人達はまったく知らない建築技法だからきっと困惑したことだろう。
「………あのさ、今思ったんだけど……」
由希が突然疑問を浮かべたらしく、口を開いた。
でも嫌な予感がする。きっとまたトラブルに巻き込まれるような内容だったら………
「なんで和風の建物を選んだのかな?江戸時代の人ならわかるけど、1000年前ってことは、少なくとも永さんはその勇者を知ってるんでしょ?それなのに抗議しなかったの?」
良かった!思ったより全然マシなことだった!
由希は話題を綿毛の方に振ると、
「いや、私だってきっと和風の建物にすると思うよ!だってなんか、こう……なんだろうな?…えっと…な、和むっていうか……そんな感じ?」
みんななんとなく言いたいことは分かったのだろう。目は優しくないが……
「ん~……だとしてもだよ!私なら現代の日本にするね!だって骨組みをコンクリで固めたら終わりじゃん!超簡単!こんな面倒くさい建築をさせるよりよっぽどマシだと思うけど?その勇者ってまったく人のこと考えてないんだね!!自分のやりたいようにやってるだけじゃん!」
由希が最後は大分大きな声で言いのけた。
すると………
「へぇ~……実際に見たことないのにそんなこと言えるんだ~…。」
突然後ろから声がした。
後ろを振り返ると一人の女性が立っていた。
………なにやら怪しげな雰囲気になってきたな……………
「ここに居るのが私で良かったね。私以外だったらきっと切りかかってる奴もいるだろうし……でもね、割と理性的な私でも許せないことはあるよ?例えば勇者の事とか……?」
その女性が放つ言葉が徐々に剣呑な雰囲気を纏いはじめた。
「私たちの話題は貴女に関係ありますか?首を突っ込まないでください!」
由希は黙ってよ!分かってないの!?この場が今どんなに不穏な空気になってるのか!
やっぱり嫌な予感が当たったよ!?
「…私が関係ない?大ありだよ!!だって勇者は………」
女性は声を荒らげて叫んだ。
「……勇者は私のお義父さんだから!」
その言葉が発せられたときその場の空気が凍った。
え?………お、お父さん?ってことは………
この人、勇者の娘さん!?
「お義父さんを侮辱することは絶対に許さない!!死をもってつぐな……」
「はいストップ!」
突然綿毛が女性の言葉を遮った。
「熱くなりすぎだよ?エルちゃん。君の目的は永さんたちを糾弾することじゃないでしょ?」
「っ!………」
綿毛にエルちゃんと呼ばれた女性は言葉に詰まった。
「……すみませんでした。つい頭に血が上って………」
女性は落ち着きを取り戻したのか、口調が理性的になっていた。
「よしよし!それじゃぁまずは自己紹介から!ね!」
綿毛がそんな提案をすると、
「はい。………私はボウブレッジ所属、そして七大守護者筆頭、傲誓のルシエルです」
そう、女性改めルシエルさんは名乗った。
「七大守護者って何?」
由希が問いかけると、
「そう、ですね…あ…、私たちは貴族から王の玩具と呼ばれています」
「「「っっ!?!?」」」
不穏な空気から一変。
僕達の目の前には、あの時伝えられた、助けとなってくれる人物が立っていたのだった。
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