皇帝のお話、そして魔王討伐?
「あれ?僕達今教室にいたよね...?」
「うん...どこだろ、ここ?」
僕達はさっきまで教室で8人で喋っていたはずだ。僕(鳴波)、京極、如月、時雨、永原、田中、黒崎、赤羽根のいつもの面子で...
それなのに今は、知らない場所、知らない人に囲まれている。みんなが困惑している中一人だけ興奮状態のヤツがいた。
「スー⤴︎ハー⤵︎、こ、コレは、アレか...?異世界転移ってやつか!!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッゴホッゴホ...」
黒崎だ。先ほどの会話からも分かるだろうが、いつメン筆頭オタクだ。
「うるさいちょっと黙って」
すかさず京極の制裁が与えられる。いつもの光景がこんなにも安心させてくれる。すると、目の前に座っていた偉そうなオッサンが話しかけてきた。
「おう、勇者達よ!よくぞ我々の前に姿を現してくれた!まずは感謝を...そしていきなりだが魔王を倒してこい‼︎世界の危機を救うのだ!」
…………いきなり発せられた言葉に絶句するしかない。こっちはいきなりのことで情報処理が追いついていないのに、さらに情報が追加された。いきなりの上から目線で?魔王を倒してこい?いや、イミワカンナイデス...
「あの、すみません。ここって一体どこですか?あと貴方は……どちら様でしょうか?それに勇者って...」
思い切って聞いてみた。
「我に話しかけるなど不敬だぞ‼︎我が誰か分かっておるのだろうな‼︎」
多分、今ここにいる5人が感じた、
『コイツ話通じねぇ』と...どちら様ですか?と聞いたのに分かっているのかって………頭、大丈夫ですかね?
……あれ?5人?僕、京極、如月、時雨、黒崎...居ない...永原、田中、赤羽根...三人はどこに行ったの?というか、一緒にこっちに来たのかな?もし来てなかったら………今居ない3人の事を考えていると、
「分からないから聞いているんですよ。話し聞いてましたか?」
京極が言った。
「ちょっとま...」
割り込んできた京極を止めようとしたら、
「鳴波は黙ってて。...今あの3人のこと考えてるんでしょ...ここは任せて!」
いつものニヤッとした表情で言ってきた。…僕の考えていることなんてお見通しって訳か……
「うむ……本当に、知らぬのだな?」
オッサンが聞く。
「だからそう言ってますよね?」
京極、かなり強気にでてる。ちょっと怖いよ...もしオッサンの逆鱗に触れたら……………
「フン!知らぬと言うのならば教えてやろうぞ!」
……どうやらその心配はいらなかったようです!
そして、ここから偉そうなオッサンの話が始まった。
「オッホン!我は東の帝国バンガーの皇帝、ウサン・クサク・バンガー21世である我は偉いのだ!頭を垂れよ!崇め称えよ!」
...再びみんなの思考がひとつになった
『コイツはヤベェヤツだ』と
「て、帝国だって...帝国ってめっちゃ熱い展開じゃねぇかああぁぁ!!」
平常運転が1人いた。その人物に音もなく後ろに立つ人影...よし!見ない見ない!
「うぎゃあああああああ!!」
...ゴキッ
うん、見ない見ない...
「貴様ら‼︎我の話しを聞いているのか?不敬だぞ‼︎」
「はぁ……面倒くさいので早くしてくれませんかね?時間の無駄なんで」
こういうとき京極は頼りになる!腕の中にあるモノを除いたら...というわけで、ここからはあの胡散臭いオッサンの話しをまとめたものである。
今世界には魔王が存在しているらしい。そして魔王は50年に一度、定期的に現れるらしい...そしてそれを倒すのが勇者の役目だそうだ。今までは...というか800年前までは別の勇者が魔王を倒していたらしい。しかし、さすがの勇者でも寿命はあるらしく…それでも200年は戦ってたらしいけど…それからの800年は他国との協力関係を築き対抗していたらしいが、毎度毎度軍隊の被害が尋常じゃないので、伝説の召喚術、『勇者召喚』の儀式をとり行うこととなったのだが、ある国がそれを断固拒否し、儀式ができなかったそうだ。しかし、それでも勇者を召喚しようとした国があったらしく、召喚をしようとした国は、召喚を拒否していた国に潰されたそうだ。国を潰したとなると、そりゃ当たり前のように国家間問題に発展するが、どこの国も手を出そうとはしなかったそうだ。というか、出せなかったらしい。何故ならその国には強力な軍隊があるらしく、たった7名しかいないのに、そのたった7名が国を潰したらしい...ともかく、その国が魔王との最前線に立つということで話が纏まったらしい。そして、そのまま800年が過ぎた。そんななか、僕達を見つけたらしい。時雨が…
「見つけた?何処でですか?」
そんな問いをしたところ、
「城中の教会だ」
オッサンが即答した。
「教会?」
「そうだ、教会にいきなり現れたのだ」
いきなりってのが気になるけど、まぁ現状の理解はできた。でも、僕達が魔王と戦わなければならない事に納得はしていない。
「...それでなんで私達が勇者ということになるのでしょうか?理由を聞いてもいいですか~?」
お、如月が出てきたか。
「それは貴様らが神々より遣わされた使者だからだ‼︎でなければ神聖なる教会に現れるわけなかろう‼︎」
要するにこのオッサンの独断ということですね。
「ん~、しかし、いきなり戦場に送り込むのも野暮というもの...ある程度の訓練は受けさせよう!我は寛大だからな!ワッハッハッハ!」
「ちょっと!?勝手に決めないでもらえます!?」
「それでは世界を救う勇者達よ!訓練しに行ってこい!」
ということで、本当にいきなり話をぶった切られ、僕達は訓練場へと連れて行かれたのだった。
...
「まさか一ヵ月で我が帝国の軍をも凌ぐほどになるとは...流石!勇者達だ!」
僕達はここまでの一か月の訓練で、帝国の軍隊の精鋭10000名との模擬戦に勝てるようになっていた。訓練の中で僕達には特別な力があることが分かった。僕達...というか、黒崎が、
「特別な力ときたらスキルっていうしかないだろおぉ‼︎しゃああぁぁ‼︎」
ということで、スキルと呼ぶことにした。
まず全員が《成長増進》、《念動力》のスキルを所持していた。
《成長増進》…他の者よりも体力の上昇や、技の習得が早くなる。
《念動力》…自信を中心とした半径30メートル以内の物体を動かすことができる。
そしてここからは個人のモノになるのでステータス表示的なやつで説明していこう。
まず如月だ。
名前 如月由希
属性適正 神聖
スキル 《治療》
ありとあらゆる怪我、病を治すことが出来る。ただし、使用者の魔力に依存する
回復特化の人物となった。
名前 時雨すず
属性適正 無し
スキル 《大賢者》
この世の全てを知ることができ、あらゆる魔法の知識を得る。属性適正関係なく中級魔法までは扱えるが、上級魔法からは修練が必要となる。
なかなかに強く、そして誰よりも物事を知る、チームの頭脳的な存在となった。
名前 黒崎叶
属性適正 土
スキル なし
「ちょっと待って下さいよぉ!?なんで俺スキルないの!?フッざけんじゃねぇぞゴラァ‼︎」
...黒崎はスキルの特徴がなく、《念動力》で岩を動かすことしか出来なかったのだ。
名前 鳴波藍音
属性適正 火、水、風、土、光
スキル 《勇者》
一定時間の自身・仲間のステータスの上昇、中級魔法だけの習得、あらゆる武術を習得する、まさに勇者っぽいスキルだった。
チームを率いるものとしてのスキルとして申し分なかった。
そして京極だけど...
名前 京極華蓮
属性適正 全属性
スキル 《物質変換》《想体同化》
物質の性質を変えることが出来る。
想いが強いほど力が増す。
全属性って...チートじゃん...物質変換ってのが使い方分かんないけど、想体同化ってのは強そう。前衛だな~
とまぁこんな感じになっていて、なかなかにバランスのとれたパーティになったと思う。
「準備は整ったようだな」
「不本意ですが魔王倒せばいいんでしょ?」
オッサンの思い通りに行くのは癪だけど、世界の危機となっちゃ放っておけない。
「じゃぁ、鳴波パーティ一行魔王討伐の旅に出発〜!」
『おー‼︎』
僕達はこの旅を楽しんでいこうと思っていた。魔王を倒してのんびりと元の世界に帰る方法を探すとしよう、と。しかし、旅の結末は誰もが予想していなかった過酷なものとなることをまだ、誰も知らない。僕達の後ろ姿を見つめる人影にも...
さて!あんなにも期待を込めていた僕達の旅は1年で終わった。というか半年で終わった。言葉にすればこんなにも簡単に纏まってしまう。僕達が想像していたものとはかけ離れた旅だったのだ。
まず、魔王がいるといわれている南の魔王の国ジャッジ・アーク、判決の場などと呼ばれている所まで仲間と一緒に魔物を倒しながら経験を積んでいざ行かん‼︎ってきな感じだと思ってたのに...いや、帝国を出た2週間後くらいに、なんか変な小人を見かけかけてからね、色々おかしくなったんですよ…まず小人の見た目、身長は30センチくらいでまぁ小人といえるんだけど...顔が綺麗な球体で体はもうムッキムキのバッキバキだった訳ですわ!もうヤバイよね!ヤバすぎて語彙力がヤバい...そして小人について行ったら、本当は1ヶ月くらいでつくはずの最初の村に半年もかかっちゃった!もうなんて事してくれてんだって感じ。しかもさ、もう分かるよね?ここまでで半年。ということで!最初の村についたら...
「勇者様御一行ですね。転移の準備は出来ておりますよ!」
とか言われて、とつぜんジャッジ・アークに転移陣で飛ばされて、いきなり魔王戦
「人間如きが...妾に勝てると思うなよ‼︎」
って言った瞬間華蓮が、
「さっさと吹っ飛べ‼︎‼︎」
と、突っ込んでいってしまい、
「えっ!?ちょ、まっ!?」
と魔王の困惑が窺えたところで、
「爆炎の消失」・・・最上位火炎魔法をぶっ放し、一瞬で終わってしまったのだ。
...分かるよね?最初に半年って出てきた時点で...かくして旅は呆気なく終わってしまったのだ。もっと冒険したかったぁあぁああぁ‼︎‼︎
そして感想、
『魔王ヨワッ』
今回が弱かったのかな?まぁ、終わったモノは終わったんだし、しょうがないよね!と自分を納得されていると...
「まぁ、アレくらったら確死だよね~!」
おい黒崎くん。フラグたててんじゃねぇよ?
「くそっ!...まだだ...まだ負ける訳にはいかんのだ‼︎約束を守るために‼︎‼︎」
「嘘だろ!?まだ生きてんの!?」
...黒崎フラグ回収はやっ!
「今回は妾の負けだ、人間。しかし次は勝つ!覚悟しておけ!」
...に~げ~ら~れ~た~
「いいのかなコレで...魔王逃げちゃったよ」
みんなで発言者である黒崎を睨む
「なんで俺を見てるの?もしかして...俺に真の力が宿って身体が光ってるとか!?」
「んな訳あるかアホ」
「なっ!?」
様々なポーズをキメまくっていた黒崎は崩れ落ちる。フォローしようがない...
結局こんな感じで旅は終わったのだ...
...
「大義である!よくぞ魔王を倒してくれた!大義であるぞ!」
2回も言わなくていいですよ。
ちなみに、帝国までの帰りは転移してきた。
ココにも転移陣があったらしく皇帝が、
「忘れておったわ、スマンナ!」
スマンナじゃないんだわ...いや、まぁでも旅できたからいいか。転移陣使ってたら1日で終わってたわけだし。
「それで...これから勇者達はどうするのだ?魔王がいなくなった今、貴様らは自由だ。旅に出るも良し!なんなら我の近衛騎士として働くという手も...」
『旅に出ます‼︎‼︎‼︎』
「...そんなに大声で言わなくても聴こえるぞ...分かった、旅に出るがよかろう」
と、いうことで!旅に出ることにしました~!
「みんな、これからはバラバラになるけど年に一回は会おうな!」
僕は言った。
「おう!絶対にな!そして強くなった俺を見せ付けてやるのだ!フハハハハハハハ!ッゲホッ‼︎」
黒崎は変わらなそうだな。
「みんな怪我したら連絡してよ!治しに行くから!」
如月が言ったのだが...
「いや、連絡したところでお前が来るより自然治癒の方が早いような気がするけど...すぐ転ぶし...」
「そんなことなフギャッ‼︎」
黒崎に近づこうとした如月が自分の足で転んだ。
「由希はドジだからね。気を付けなきゃダメだよ?一年後ちゃんと生きてるのかな~?」
「すず、一番心にクル...」
時雨の鋭い言葉に呻いている如月を見ながら、
「...でも、みんな多分強くなってるんじゃない?一年後には……じゃないと困るし。私もみんなも...」
「華蓮なんか言った?」
うまく聞き取れなかったので聞き返したら、
「いや、一年後が楽しみだなぁって。みんなをボッコボコにしてあげるから!」
「なにそれ怖い」
みんなで笑い合った。こうやって笑えるのも次は一年後かと思うと寂しく感じる。
「それじゃ!みんな一年後にまた会おう!そして模擬戦で誰が一番強くなったか決めよう!」
『おう!』
「じゃあ行こうか、それぞれの旅に!」
僕達は歩き出す。それぞれの旅に思いを馳せながら。誰にも予測できない未来を考えながら、僕達は歩く。世界を知るため、強くなる為に。でも、僕達はいずれ知る。世界を知るということには、責任が伴うということを。世界を知るモノには、責務が与えられることも。そしてその責務に抗う者達を。僕達はまだ、知らない。
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