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「な⁉︎なんだそれ⁉︎卑怯だろ!」

黒崎が由希を指差す。その表情は驚愕に満ちていた。

……黒崎が目をかっ開いているのめっちゃウケるんですけど!

「ねぇ………如月さん…?一体何やったんだよ⁉︎何で一気に俺の戦力の9割ももってってるんだよ?おかしくない威力!!??」

確かに、それは僕も思った。あんな大技出せたんだね、回復以外出来ないのかと思ってた……

「いや〜……私もよく分かんない!」

と、テヘペロをかましてきた。…そしてウィンクも。

「「「「「……は?」」」」」

僕、すず、綿毛、黒崎、ダルシュさんが同時に疑問の声を上げた。

「だって分かんないんだもん!私あんな術知らないし!」

幼子が喚くように叫んでいる由希に対して僕達は冷たかった。

「「「「「………じゃあどうやったんだよ………?」」」」」

みんな考えていることは一緒なようだ。つっこむタイミングも一緒だし。

僕はいい加減ツッコミを入れるの疲れてきたよ………

「なんと言うかね〜…声?がした?のかな?」

とこちらに問いかけてくる。なんで由希が疑問形なの?

でも、声がしたって………

「えっとね、めっちゃ聞いたことある声だったの!……あれ?誰だっけ?たしか……」

由希が全力で思い出している間……というか由希が魔法を放ってから放置されていた黒崎は………

「俺の9割返せよ!」

しびれを切らしたのか叫びながら突っ込んで来ていた。手には短刀を握っている。

由希に近づき声を上げる時まで僕は気付くことができなかった。

そしてその短刀が由希の腹に刺さる手前で………

「そうだ!赤羽根(かばね)だよ!あの声!」

「「「「「「⁉︎」」」」」」

黒崎が動きを止める。

黒崎だけではない、この場に居るダルシュさん以外が完璧に停止(フリーズ)した。

そんな中、由希は………

「みんなどうしたの固まって〜…って、うわ⁉︎私刺されそうになってんじゃん⁉︎嫌ああああああああ死にたくないいいいいいいい!!!」

………どうやら由希は停止(フリーズ)していなかったようだ。

いや、今はそんなことどうでもいい。一刻も早く確認しなければ……

「………本当に赤羽根の声だったの?」

すずが一瞬躊躇ったあと由希に訊いた。

「うん、赤羽根だったと思うよ?」

そんなことはさも当たり前のことであるかの様に由希は答える。

「嘘だ!赤羽根は死んだんだろ!!死人の声を聞くなんて俺にも出来ないんだぞ!!もし聞けたとしても神聖系のお前に暗黒系の術である『死者の遺言(ザデッドテスタメント)』が使える訳ないだろ!!」

黒崎はひどく取り乱している。

無理もない。黒崎と赤羽根は無二の親友と言えるほど仲が良かったのだから。

「でもしたんだって…あと、黒崎に伝言あるよ。えっと…ごほん!んん……おい叶?お前本当に何やってんの?お前はそんなんじゃないだろ絶対。早く気づけよ!てか身内で争うなよ⁉︎……って感じだったかな?」

赤羽根の真似をしながら由希は黒崎に伝言を伝えた。

「俺はこんなんじゃない?どういう意味だそれ?いや、その前に伝言って……」

「分かんないけどそう言われたよ?」

黒崎は疑問を浮かべている。

そして由希はさっきから同じ様な事しか言ってないよ。

「ともかく、黒崎!赤羽根にも言われたんだろ。ここは退いたらどうです?」

僕は問いかける。

ここで退いてもらはないと斬らないといけないからね。

「……分かった…赤羽根に免じてここは退いてやる!でも次は絶対に勝つからな!」

良かった~!!!

黒崎はそそくさと逃げていく。そしていきなり止まったかと思うと……

「それに今回別に俺負けてないからな〜!」

と言って消えていった。

「いや〜良かったね!あのままだと永さんプツンといきそうだったよ〜!アハハハ!」

綿毛が笑いながらそんなことを言った。

「僕もあのまま黒崎が突っ込んでくるなら斬らなきゃって思って…て……」

なんだかみんなの視線が集まりだしたから気まずくなり声を小さくしていると、

「……多分だけど藍音?黒崎のことを斬ろうとしてたの、あなただけだと思うよ」

綿毛が遠慮がちに言ってきた。

「えっ?」

みんなを見ると…

「「「「うん」」」」

勢いよく頷かれた。

噓でしょ……僕が一番物騒だったってことじゃん……恥ずかしい………

僕の羞恥をよそに綿毛は話を続ける。

「それよりも…」

由希を見つめて言う。

「赤羽根の声って……マジ?永さんちゃんと葬儀出たよ?永さんいたよね?葬式…?」

綿毛が突然誰もいないはずの後ろに語り掛けた?いったい誰に訊いて………

「マッスゥウヴゥゥゥゥゥ!!!!」

いきなり真後ろで大声がした。振り返ると……

見覚えのあるムキムキな姿がそこにあった。しかし、身長は似ても似つかず2メートルを越えるであろう巨体だった。

「えっ?………」

「マッスゥ?」

今のは疑問形?

「だよね!永さんいたよね!毅!」

………………

「「「つ、よ、し?」」」

「マッスゥウ!」

あら元気なマッスゥ。肯定として受け取るね!

「「「え〜〜〜〜〜!!!!!」」」

これは驚くしかないでしょ!

「じゃ、じゃぁあの時一ヶ月で着くはずだった村まで半年もかけさせたのも………」

「マッスゥ!」

「帝国の門をぶち壊したのも………」

「マッスウゥ!」

……………

何とも言えない空気が流れる。

「……と言うか、マッスゥ、しか喋れないの?」

ふとした疑問を口にすると、

「いや!今は90%くらいだから簡単な会話ならできると思うよ!」

綿毛が言う。

てか、綿毛はマッスゥしか喋っていなかった毅の言葉分かってたよね……

「てかめっちゃ疲れた〜。毅、永さん達を村に泊めてくれない?お願い!」

毅って村持ってるんだね。

「……村より王都の方が近いと思うけど」

「「「喋った」」」

「………喋るよ」

なんか、すごく淡々と返してくるな…

「そっか~………それじゃ!ボウブレッジに向かおう〜!」

綿毛の切り替え早!

なんやかんやで始まった黒崎との戦いは終わり、僕達は疲れ果てたままボウブレッジに向かうことになったのだった。


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