2つの通話
僕達がディラさん改め永原綿毛を尋問した後、ボウブレッジに向かう事になった。
・・・
「それじゃ、明日ボウブレッジに行こう!」
『お、お~…』
突然の綿毛の提案に鳴波達が落ち込んでいる頃、木々の影に潜む影が別々の場所に2つあった。
1つ
『……分かっておるな?貴様の為すべき事は……』
何者かが通話する言葉は葉が擦れる音に紛れて聴こえない。
『なぁに、心配はいらない。我が手を回しておこう。』
と、その通話相手はいった。
「……分かっております。対価さえしっかりと払って貰えるなら何でもするのが私達、《フルール》ですから。」
『抜かるなよ』
「……承知しました。それでは……」
そして通話は終わった。
《フルール》
それは世界の裏で暗躍する、とある組織の名称だ。
未だに正体を掴めない謎だらけの組織。
ある時は戦争を止め、ある時は貧民に施しを行う。
しかし、行っているのは大半が犯罪行為である。
戦争を止めた時は、一方の国に依頼されて対立国の王を暗殺した。
貧民への施しは、数多の貴族から強奪したものを利用していた。
表面的には善行をしている様に見えるが、実際は暗殺・強盗・誘拐・テロ…その他様々な犯罪に手を染めているため指名手配されている。
《フルール》に関してわかっている事は、この組織を率いているのが「リコリス」という人物だということだけ。
そしてこの「リコリス」にはいくつかの逸話があるのだが………
その逸話の中から一つ、「リコリス」は強い。それも………………
勇者と並ぶほどに
一度戦場に出れば、その戦場から帰ってくる者はいない。
かつて勇者が苦戦したと言われている魔獣王という存在が居るのだが、その一柱である咆哮の雷獣を単騎で討伐したと伝えられている。
魔獣王とは、魔物、魔獣の頂点に立つ10体の最恐の存在。
しかし、その存在は実際には確認されていなかった。
魔獣一体だけで都市が滅びるほどの力を持っているのにそれを超える存在がいるのだ。
魔獣王との戦闘記録はほとんどない。あるとしたら先代勇者の討伐記録の中にしかないだろう。
何故ならば、魔獣王に遭遇した者は勇者以外、誰も生還していないからだ。
力は未知数。どんな姿形なのかもほとんど解らない。
そんな童話の中の存在だったのだ。
しかし、この「リコリス」が童話から歴史へと変えたのだ。
子供に教える寝物語からそれは生きる伝説となったのだ。
稲妻のごとく荒地を駆け抜け、気まぐれで雷を落とす。
曇天の中、魔王領の探索に行く者をモチーフにした物語だ。
その中に咆哮の雷獣は居た。
数多もの精鋭部隊を瞬きをする間もなく消し去ったと言われている存在。
そんな化け物がつい20年前に実在していた事が判明してしまった。
そこからだ。
世界が勇者の記録を全てひっくり返したのは。
そして、その記録の中にはしっかりと10体の魔獣王の存在があった。
世界は戦慄した。
その記録の中には全ての魔獣王の討伐記録があったから。
それも複数回。
勇者でさえも一体討伐するのに最低3日かかっていた。
記録にはこう記されていた。
『勇者。魔獣王の一柱咆哮の風魚討伐に5日。長時間の水中戦により体の末端に壊死を確認。現時点では意識不明。呼吸器官に水が溜まっているのか不気味な音が響いている。外傷は全てが風鎌により切り裂かれている。出血多量。脳への何らかのダメージ有り。完治まで半年は必要だと診断。』
毎回毎回甚大な被害を生み出していた魔獣王達は今までどこに潜んでいたというのか……。
それに、討伐記録は10年に一回。
奴らは何故この800年間姿を現さなかったのか。
理由を誰も知ろうとはしなかった。
勇者でも苦戦した存在に人類は絶望していたが、「リコリス」の登場に希望を見出した。
勇者と並ぶ存在。
それはどれほど輝いて見えたことだろう。
・・・
魔獣王の危険性は理解しただろうか?
それ故の「リコリス」の危険性も。
魔獣王を討伐したことがある者が率いる犯罪組織。
それに対抗できる者は一体どれ程いるのだろうか?…………
通話が終わった後、何者かは思案していた。
そして颯爽とその場を立ち去る。
何が正しいのか。
誰が一番信用できるか。
その答えはとうの昔に出ている。
何者かが信じるのはただ1人………。
その1人が決めた事が全て正しい。
これが答えだ。
1人
「明日には移動を始めるって。ボウブレッジらしいよ。隣だから2日くらいで着くと思う……どうするの?」
林の陰に隠れて通信を行う人物が居た。
『どうするも何も、アイツを向かわせるよ。アイツの力試しって意味合いも兼ねて……邪魔してみようか。面白くなると思う?』
通話相手は問いかける。
「あぁ…アイツなら面白くなるんじゃない?まぁ始まらないと分かんないけど………」
『そうだな……やっぱりやらないと分かんないか……ありがとう。前のヤツは凄かったんだな。こんなことを当たり前にやってたのか………」
溜め息と共に吐き出された言葉は何処か哀愁を感じさせるものだった。
「貴方ならできると思うよ?だって貴方は………」
励ましの後の言葉は………その声は風に掻き消されて聴こえない。
「それじゃ、まあ連絡する」
こちらも通話が終わる。
それぞれ何が目的で、誰と通話していたのかは誰も知らないはず…。
そして夜が明ける。
誰かが通話し、自分たちの行動を伝えことを藍音達は知らない。
だが、1人を除いて………
更に後ろに写る、重なる面影が全てを見ている。
この世界で個人の秘密など隠せない。
必ず、誰かが視ている。
もし隠したいのならば、穴を見つけることだ。
完璧なモノほど、消えてゆく。
完璧なモノほど、疎まれる。
完璧など存在しないのだから。
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ディルージョンテイルを読んでくださっている皆様、こんばんは!Keteraです。
前回の活動報告にも書いていたのですが、2月は諸事情により投稿できません。
ですのでこれが一区切りとなる最後の投稿です。というものも一ヶ月だけなので3月には投稿を再開する予定です。
2月という時期での休載。察してください。
そして3月からの投稿は1話1話の文字数が減ることになると思います。時間が無くなるという事もありますが、これから物語は新たなステージへと進むことになるので、じっくり構想を練りながら書きたいのです。
読んでくださっている皆様には申し訳なく思うのですが、何卒、ご容赦ください。
最後に。
これから一ヶ月このサイトから離れることになりますが、戻ってきたときにはまた読んでいただけると嬉しいです!これからもディルージョンテイルをよろしくお願いします!
それでは、失礼いたします。さよなら~!




