語られる秘密
ディラさんが死骨の鮫に食べられたと思ったら突如現れたミュゲという獣人が助けていた。
そして、ディラさんが元も世界の友達で探していた人物の一人、永原綿毛ということが分かった。
そして事情を聴くために魔狂の森を後にしたのだった。
・・・
僕達は森を出た。
入った時とは比べ程にならないくらい楽な道のりだった。
魔獣も出なかったし!
そしてもう夜だったので野宿の始まりです。
食事諸々のことを済ませ落ち着いたところ本題、
「それでは綿毛さん。どうして正体を隠してたんですかね?僕がパーティに入った時に教えてくれても良かったんじゃないですか?」
尋問のお時間です。
ダルシュさんは気を利かせてくれて席を外している。ミュゲさんは焚火用の枝を集めてくると言ってここにはいない。
今いるのは、僕とすずと由希、そして綿毛の4人である。
「いや~、言うタイミングを逃したというか、言う気が無かったというか.……そんな感じ?」
綿毛がこちらを見てくる。
いや疑問形で返すなよ……そんな綿毛を3人で睨む。
「その目止めてよ………分かった!話すから!」
これからは綿毛の話をまとめたものになる。
まず、綿毛は転移しなかったようだ。
いきなり僕達が消えてビックリしたらしい。
しかし、結構すんなり受け入れられたそうだ。普通はもっと取り乱すところだと思ったのだが………
「なんかね、みんなが消えた足元に魔法陣みたいなのがあったんだよ。そしてそれがね、叶が色々描いてた魔法陣の一つだったんだよね!いや~!なーんか叶の想いが引き起こしたのかなって思ったらさ、不思議と納得しちゃったんだよね!」
ここで爆弾発言。
つまり黒崎叶が遊びで描いていた魔法陣がマジで発動しちゃって僕達は飛ばされたってことになる。
……今ここにいない叶をぶっ飛ばしたい……
そしておかしな事に気が付いたらしい。
それは………
誰も僕達のことを憶えていない、ということだ。
次の日登校すると僕達が居た席は無くなっていて、存在そのものが消えてしまっていたらしい。先生や同級生に訊いても「そんな奴らいないぞ?」「なんの冗談だよ」「やだ~怖いこと言わないでよ!」など、誰も僕達のことを覚えていなかった。
消えた事に関しても誰も触れずにただ普通の日常の繰り返し。
そしてある日の部活帰り、僕達の失踪について考えていたら………
「なんかクラクションの音が聞こえてね~、音の方向いたら白猫ヤマセのトラックが突っ込んできて、轢かれてこっちに来ました!」
まさかの事故死で来ちゃってた……そして、
「それで永さんはみんなと再会した今に至るまで!約1000年間!ずっと旅をしていました!」
まさかの千歳を超えていた……流石エルフ!!全然年齢が分からない!
そんななか、僕は気になっていたことを訊いた。
「綿毛はなんで幽を知ってたんだ?それに伝言って……」
そう、赤羽根幽のことだ。僕が帝都に向けて旅立ったとき別れの最後に言われたあの言葉の真意を確かめるためだ。
「幽!?この世界にいるの!?」
「……ッ!?」
由希がすっきょんな声を出して驚いている。すずはワンテンポ遅れた様に感じたが………
「………うん、いたよ。赤羽根幽は確かにこの世界にいた。なんなら一緒に旅をしたこともあったよ、3人とか……途中から4人だったけど…」
そう言いだした綿毛の声は沈んでいる。
「一緒に旅してたのになんで今いないの?」
僕は綿毛に問いかける。
「……分かるでしょ?永さんはエルフだからここにいるんだよ?」
「あ………………」
理解した。
理解してしまった………
「……そう。みんなの想像の通りだよ。幽がいたのは1000年前のこと。そしてただの人間だった……それでもアイツは頑張ったよ。なんせ200年生きたんだからね。普通無理だよ?あんな年数。それで最後に頼まれたのがあの伝言だったの…」
要するにもう、赤羽根幽はこの世界にいない。突然の事なのに喪失感が胸を埋め尽くし、言葉が出てこない。
「………幽と一緒に4人で旅をしたって言ってたけど、他は誰だったの?」
すずの問いだ。
「えーと………永さんと幽、毅、シ……」
『毅!?』
3人そろって声を上げた。
「うん、いたよ」
と、僕達が聞き間違えでもなく、あっさりと認めた。
「……あのさ~綿毛さん…さっきから情報多くない?トラックに轢かれたとか、1000年生きてるとか……所々に重要な情報を混ぜるの止めてくれませんかね!?」
由希?確かに重要な情報はあるよ。でもね、今挙げた情報は全然重要じゃないよ……
「由希は変わらないね!なんか安心した!」
綿毛は今日一番の笑顔を魅せた。
「由希はいいから、毅は?やっぱり……」
幽と一緒に旅をしたということは1000年前に居たということだ。
だったら、もう………
「毅はね……まだ生きてるよ?」
「そっか、やっぱ死んでるよね……って、え?」
「生きてるよ?ピンピンしてるよ」
死んでいると思っていたのに、い、生きてる?しかもピンピンしてる?
「え?なんで?人間じゃないの?」
由希が勢いで訊く。
「人間だよ?ちょっとおかしいだけ」
と、すんなり答えていく綿毛。
「おかしいって……」
あんまり人のことをおかしいって言うのはどうかと思うけど、1000年も生きてるなら…そりゃ、おかしいかも………
「あれは何と云うか、いわゆる仙人みたいなもんかな~。うん、人間卒業してるよ」
人間卒業とは……?どんな存在になってるんでしょうか?
あ、でも仙人ってことは……よぼよぼのおじいちゃんなのかな?よぼよぼだけどピンピンしてるのかな?
………やば、分かんなくなってきた……。
「毅の表現がさっきから酷いね………それであと1人は?」
すずも同じようなことを思っていたようだ。ちょっと安心。
「えっと…シュリっていう子なんだけど……ちょっと言いにくいかな~?」
後半は目を逸らしながら言っていた。
「なんで?」
間髪入れずに由希が訊いた。
「いや、なんか、まだ言う時じゃないっていうか……」
なんか曖昧なのが多いな………
「はぁ、なんかモヤモヤするけどまぁいいや。とりあえず毅と合流したいんだけど、どこにいるか分かる?」
僕は綿毛の尋問を諦めて、毅との合流を目指すことにした。
「それなら任せてよ!」
と、僕の質問を聞いた途端、綿毛は走って少し離れ、腕を広げながら言った。
「毅はこの隣の国、絆勇の国、ボウブレッジにいるよ!」
と元気よく言った。
「ボウブレッジか。隣の国だから思ってたよりかなり近いな」
兎に角、早く会えそうでなによりだ!
「そうだね!私も行くのは久しぶりだから鍛えてもらおうかな!」
綿毛から不穏な響きを持った単語が発せられた。
「………鍛える?」
なんか危ない路線に乗った予感………いや!間違いなく乗ってしまっている!!
「そ!あ、そうだ!みんなも鍛えてもらおうよ!ちなみに永さん一回も勝った事ない人達ばっかりだから、いいトレーニングになるよ!」
おいそれ無理ゲーじゃん!綿毛が一回も勝ったことないって……僕達じゃ到底無理だって…………
「永さんが勝ったことないって…私達じゃ不可能じゃない?」
由希も同じ結論に至ったようだ。
「そりゃあの7人は負けちゃいけないからね」
「7人?その数、どこかで聞いたことがあるような……」
記憶を刺激する感覚があり、記憶に検索をかけていると、
「あ~、東にいたなら魔王軍を抑えてた7人って言えば分かるかな?」
………え?じゃあ、その7人はもしかして………………
「それじゃあ、もしかして国を7人で潰した人達?」
「そんな事もあったね~…」
綿毛は懐かしむように言った。実際懐かしんでいる。
一方で僕達の空気は重くなった。
この後に待っている地獄が目に見えてきていたからだ。
「それじゃ、明日ボウブレッジに行こう!」
「「「お、お~………」」」
綿毛はすごく笑顔だが、対照的に僕達はゲッソリしている。
魔狂の森を出たばっかりで連戦の疲れが取れていないのに、明らかにヤバい最強の7人に鍛えられるとか………
これはまずいかもしれないと、僕とすずと由希の思考は気付かないうちに重なっていた。
そしてすずが明日に備えてもう寝た方が良いと言ったのでこの4人の話し合いもお開きになった。
次の日、僕達は毅に会うため、そして鍛えるためにボウブレッジに行く事になったのだった。
あ、そういえば僕に宿ってた人もボウブレッジって言ってたな。それとロワジュを招集?、だったかな?どういう意味なんだろう?あした………綿毛に訊いてみよう……
強い眠気の中そう考えていたら、僕の意識は心地良い暗闇の中に落ちていった。
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