初戦闘
「なんだ?おいおい、あれはゼロファイターか? たった一機じゃあないか!こちとら最新鋭のマスタングだぜ!たった一機でかなうと思ってんのか?」
今回のマスタング、8機編隊の最新鋭部隊だった。パイロットは選び抜かれたエリートが揃っていた。
「こちらピーターだ、前方上空ゼロファイター確認!どうやらたったの1機で向かってくるみたいだな、格の違いって奴を見せてやるぞ!各機、散開!挟み撃ちにしろ!」
「了解!」
同僚のマスタングが散開を始める、左右に分かれる機体、上方と下方に別れる機体、流石に最新鋭のマスタングだった。物凄い速度で散開すると、申し合わせたかのように、ゼロの死角へと回り込んでいく。
そして、12.7mm機銃が掃射された。弾丸が赤い閃光を上げてゼロに襲い掛かる!
明らかに、機銃掃射はゼロを捕らえたかに思えた。
しかし、何故かゼロはいつの間にか、マスタングの後ろを捉えていたのだ。
「何!なんだ?どういう事だ!」
その瞬間、マスタングの後方から白煙が上がる。
「うわーあ!!!」
俺はマスタングの機銃が放たれたと共に機体を真横に90度反転させると、そのまま真下に沈み込んだ、弾丸が水平尾翼の上方を通り過ぎてゆく、そして機体を、斜めに捻り小さく旋回すると、前方にマスタングの機体後方が見える、俺は瞬間的にマスタングの真後ろに付けていたのだ。そしてトリガーを押す、レールガンのスイッチが入り、鋼鉄製の弾丸がマッハ6.5の速度で打ち出された。
マスタングはその瞬間白煙をあげながら粉々に空中分解した!
ありえないその光景に俺は、目を見開きながら、それでも、残りの7機に意識を集中する。俺は右に横ロールしながら、急降下していたマスタングを捕えると、トリガーを押す。少し弾道が逸れたが翼の片側を捉え、マスタングは錐揉みしながら、海面へと突っ込んで行く、
これで2機! 俺はスロットルを上げると急上昇をした、あっという間に全てのマスタングを追い抜き上方から反転し、マスタングが3機、真正面に重なっている所を、撃ち抜いた。レールガンの威力は凄まじく、手前から順にマスタングの機体を貫通しながら1番遠い3機目も貫いていた!
残りは3機体、
『なんなんだ、俺は夢でも見てるのか?』
隊長のピーターがつぶやいた。あっという間に見方の機体が5機もバラバラに撃ち抜かれればさもあらん、
それは異常な光景だった。スピード、旋回性能、上昇速度、そして機銃の圧倒的な威力はもはや、夢以外の何者でも無かったのだ。
最新の技術で作られた、マスタングは、その当時では最高の機体のはずだったのに、目の前のただのゼロファイターに手も足も出ないのだ。
「やばいぞ!皆んな逃げるんだ!アイツは変だ!まともじゃ無いぞ!」
ピーターは無線で残りの2機に向かって叫んだ。
「了解でさあ!ありゃどう見たっておかしいぜ!」
生き残りの一機のパイロットが叫ぶ。
「こんなの悪夢みたいなものじゃないか!やってられっかよ! う、うわあー!」
もう一機のパイロットの声が無線から流れた途端、後方で爆炎が上がった、
「ちっ!いったいどうなってやがる!」
ピーターは、機体を反転させながら、後ろにつかれたゼロファイターを振り切るのに必死だった。
「逃すわけには行かないな。」
まだこちらの、情報を伝える訳には行かないのだ、俺は全速力で逃げるマスタングの後ろを完全に捉えた。マスタングの速度は時速700キロを超していたが、こちらのゼロはプロペラ機ではありえない速度の
時速850キロで飛ぶ!当然あっという間に追い付き俺はレールガンを発射した。発射とほぼ同時にマスタングの垂直尾翼付け根に弾が食い込む、瞬間、マスタングが粉々に散った。
そしてその前方を飛ぶさいごのもう一機も粉砕した。
パイロットは何が起こったかもわからなかっただろう。レールガンは普通の機関砲とはその威力が桁違いだ。物質はあまりの高速を受けると分子自体が崩壊してしまうため、小さな弾丸でもその威力は物凄い。それはまさに爆発だった。
俺は改めて、このゼロの恐ろしさを痛感していた。
「迎撃完了!これより帰還する。」
「了解よ。ご苦労様、もう近くに敵影は無いわね。早く帰って来なさい!」
京子の声がスピーカーから聞こえた。
そして俺は島へと帰投したのだった。