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飛翔

エンジンが唸る。ブルブルとプロペラが回転し、草むらの中にあった零戦はフワリと軽く浮き上がった。その零戦は滑走路のない草むらの中から軽く浮き上がると、プロペラの発生する空気の推進力を受けてグングンと加速する。そしてわずか100メートルほど前進すると大空へと駆け登って行った。


一登は零戦の操縦席で操縦桿を握っていた。高度計がものすごい勢いで上昇速度を示している。あっという間に高度は5000メートルを指していた。速度は時速800キロを指している。

零戦の速度としてはありえないものだった。これが未来の技術で改造された力なのか?

本当に凄い、凄すぎる。


「一登、どう?」

無線から少し掠れた甘い声が聞こえてくる。


「凄いよ。プロペラ機がこんなにスピードを出せるものなのか?」

俺は、あまりの軽快な加速、上昇速度、圧倒的なスピードに酔いしれていた。


「なにを言ってるの、未来の科学力を舐めてもらっちゃ困るわよ、そのゼロの力はそんな物じゃないわ。レーダーには、何も写ってないわね。そのままゼロのGに慣れてもらうわよ! そのまま10000メートルまで上昇してから反転、そして急降下、時速1000キロに達したら急上昇よ。」


「おい、おい、何を言ってるんだそんな事したら機体がぶっ壊れちまうだろうが、」


「心配しなくていいわよ。そのゼロはそれくらいじゃびくともしないわ。それよりもあなたの体が持つかしらね。」


「舐めてもらっちゃ困るね、見てな!」


一登はスロットルを引くと一気に上昇、言われた通りに高度10000メートルに達すると操縦桿を引き込み反転、そのまま下降状態に入った。

物凄いGが一登を襲う、一登は一瞬気を失いそうになった。あたりまえだろう、F2戦闘機と同じGをそのまま直に浴びているのだ。


「くっ、なんだこりゃ、体が潰れそうだぜ!」

文句を言うまに、速度計は時速1000キロメートルを指していた。

そのまま一気に操縦桿を引く。直下降していた機体が唸りながら水平になり、そのまま上昇していく、上昇角45度をキープしながらゼロは上昇して行った。

その後、斜めロール、縦ロール、反転飛行、急旋回を何度も繰り返して、零戦の性能を確かめた。


「機体の確認はそのくらいで大丈夫ね。じゃあ次は、武器の確認よ。」

ハスキーな京子の声で指示が飛ぶ。


「先ずはレールガンの試写、その後レーザーの照射の確認ね。」


「了解!」

一登は答えると機体を下降させ、機首を真下に向ける。そして操縦桿のトリガーを押した。ガガガガ、と無機質な音を発しながら、20ミリ機関砲の備え付けられた場所から高速で発射された鋼鉄製の弾丸が真っ赤に焼けて飛んで行った。上空8000メートルから打ち出された弾丸は南海の海に降り注ぎチュンチュンと水蒸気を上げながら突き刺さって行った。

僅か一秒の発射時間でレールガンは10発の弾丸を発射していた。


「次はレーザーよ。」


「了解!」

そのまま、真下にレーザーを照射させる、紫色の光の帯がレールガンの備え付けられたその外側から煌めいていた。これまた南海の海に突き刺さりブオッと海水を蒸発させ物凄い量の水蒸気が上がった。


一登はトリガーから手を外すと操縦桿を引き機体を水平にする。

高度は一気に1000メートルに下がっていた。


「まずまずね。もう帰って来て!機体の確認をするわ。」


「了解!」


試験飛行は終わり、一登は基地へと零戦の機首を向けた。その時だった。


「敵機確認!一登!予想外の展開だけど、しょうがないわね。迎撃に入ってちょうだい!」

京子の声が慌ただしくスピーカーから響き渡った。


「どうやら、たまたまここらあたりを偵察に来たアメリカの機体だろうな!数は8機か。」

野太いドスのきいた声が響く。幸雄の声だ!


「ちょうどいい!ゼロの性能試験にもってこいだな!」

嬉しそうな、幸雄の声がうるさいくらいに響いた。


「おい、おい!何呑気な事言ってくれちゃってんの、操縦してんのは俺なんだけど!!」

簡単そうに何を言っているのか!こちとら初めてこの機体を操縦したばかりなんだよ。

そう思っていると、レーダーに8機の飛行機らしき赤い光点がきらめいていた。


「しゃあねえな!やってやるよ!」

俺はゼロの操縦桿を握り直し手前に引き込んだ!

ゼロは、瞬時に反応し、機首が斜め上方に向かって上がる!そのままグングンと上昇しあっという間に高度10000メートルに達した。レーダーに8機の機体の映像がどんどんと近づいてくる。


敵機はおよそ高度5000メートルあたりを飛行しているようだ。

俺は上空から敵の機体が来るのを待った。


肉眼で確認出来るくらいに近づいたアメリカの機体はどうやらノースアメリカンマスタングP51B/C戦闘機らしかった。


どういう事だ?マスタングはまだこの時期には、戦地に投入されてなかったはず?俺は朧げな記憶を辿りながら小首をかしげた。

まあ、俺がこの時代に来た時点で歴史は何となく歪んできているのかもな?


とりあえず、やっちまうか!

俺は、まだこちらの事に気がついていないだろう、マスタングに向かって上空10000メートルから急降下していった。


グングンと機影が近づいて来る。敵のマスタングが急に散開を始める!どうやらこちらに気がついたようだな。



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