2話
~前回のあらすじ~
受験を控える学生、坂山終夜は
突然見知らぬ場所で目を覚ます。
困惑する中国王殺害の容疑者として
独房に連れていかれてしまう
「……こっからどうしよう……?」
あれから俺は目隠しと口枷と耳栓の様な
物を付けられ抵抗する事が出来ず
腕を引っ張られながら連行。
物が外された時には床、壁共に石で出来た
真っ暗で暑苦しい独房に立っていた
「暑いし息苦しいし……」
ここにあるのは石で作られた丸椅子とベット。
それとめっちゃ臭い壺。この壺の使い道は
この中に用をたせってことらしい
「独り言が煩いぞガキ。大人しく死刑を待て」
「アッスミマセン」
独り言を呟いてると監視役の人に睨まれる。
そうそうどうやら俺は死刑になるらしい。
理由は国王殺害と国家反逆罪の2つだ。
うんなんで?家のベットで寝てただけなのに
なんか死刑にされてるんだが?国王って人を
殺した覚えないしこの何処かも分からない
国に喧嘩をふっかけた覚えも全くない。
それなのに死刑が決定したと伝えられたのだ
「なんで俺がガキの見張りなんか……」
さてさて本当にどうしようか。このままでは
意味わからないまま死刑の日になり殺される。
そんなのは絶対嫌だ。この歳で死にたくない。
ならば答えは1つ。ここから逃げ出すしかない
逃げ出す?出来るのか?俺はただの一般人だ。
怪力を持ってる訳じゃないし頭脳がずば抜けて
高い訳でも無い。密室に近いこの場所から
1人で……自力で逃げるなんて……無理だ……
「いや、やるんだ……!死ねない……!」
ここから逃げる決意を決め独房の中を見る。
道具は石製の椅子とベットと用足し用の壺のみ
「……頑丈だ……」
怪しまれない様に壁や床に異変が無いか見るが
結果は残念。ヒビの1つもなく頑丈なだけ
「鉄格子か……」
今度は鉄格子に触れる。若干だが錆びている。
だが壊せるとかそんな事はなくこれもまた頑丈
「あれは……南京錠……?」
鉄格子の向こう側の扉には
南京錠が2つかかってある。
あれを破壊するなり解除するなりしないと
こっから出る事は不可能だろう
「ほぼ意味ない酸素を取り入れる為の穴……」
後ろ側の高所には小さ過ぎる横穴がある。
あそこから空気が入ってるんだろうが
小さ過ぎて会ってないようなもの
「無理だ……」
結論これだ。俺じゃどうする事も出来ない。
鉄や石を砕ける力なんて無いしオマケに
手を縛られて動きも制限されている。
何をどうしようが逃げる事はほぼ不可能
「……いや、諦めてたまるか……!」
死ねない。死にたくない。身に覚えのない
罪を着せられ訳の分からぬまま死にたくない!
せめて俺が本当に人を殺したのかどうかを
確認してから死んでやる……!
「今できる事は無いんだけどさぁ……」
蒸れ蒸れの暑さに嫌気がさした俺は
鉄格子とは反対の壁にもたれ3角座りで座る
「なんでこんな事に……クッソ……」
暑さと戦いながら転機が訪れるまで
1人寂しく待つことにするのだった
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「アッッッヅィィィ……トゲル……」
独房に入れられてから何時間経ったのだろう。
暗闇に包まれ更に暑くなってしまった。
空気入れ替え用の穴から空を見ると
小さな星空が見えたので夜になってるらしい
「お腹空いた……喉乾いた……死ぬ……」
2~3時間?そのくらいの時間を飲食無しで
サウナ状態で放置されている。普通に辛い。
こうなる前が晩御飯前だったのもあり
俺の空腹度合いは限界に達しかけていた
「はい?ここを通せ……と?」
「何か問題でも?」
「……会話?」
ほうけていると小さな会話が聞こえてくる。
男性の声と聞き取りずらいが女性と思われし
若干低い声の2つ。なんの話をしてるんだ?
「しかしこの先にはこk」
「いいから入れなさい」
「はぁ……分かりましたよ。
貴女に逆らったらどうなるか分かりませんし。
ですが一応気を付けてくださいよ」
「最初っからそう言ってればいいの」
会話が聞こえなくなると足音が近づいてくる。
それと赤っぽい灯りも一緒にだ
足音と灯りは徐々に近く、大きくなっていく。
誰が、どんな目的で来るのか身構えながら
ベットの上で待ってると鉄格子の前で音が止む
「こんばんは。君がサカヤマシュウヤ君?」
俯いてた顔を上げ鉄格子の方へ向ける。
鉄格子の先には火が灯ったカンテラと
木製のトレーを持った女性が立っていた
鉄格子の先にいるのは黒い長髪に黒色の
半袖タートルネックとその上から同じく
黒色の薄手羽織物を着崩している。
そして左目が赤く右目が閉じている。
右目は閉じてるが意識的に閉じてるのではなく
瞼から下瞼にかけ一本線が入っている。
その事から何らかの事情で失明してるのだろう
「えっと……は、はい……」
十二分に警戒心を持ちながら返答する
「そう警戒しないで……って無理よね……」
女性はカンテラとトレーを地面に置くと
腰に装着した小さな鞄を漁り始める
少しすると鞄から大小2つの鍵を取り出す。
女性は何故か鍵を解き小さな扉を開ける
「はいこれ。今日の夕食と灯り」
警戒もせず鍵を開けた行為に困惑してると
地面に置いていた物を持って中に入ってくる
「え?あ……ありがとう……ございます?」
トレーの上にはコッペパン1つとスープ。
圧倒的に物足りないが何も無いよりマシだ
でもさ。1つ大きく問題があるんだよね
「両手が縛られてるのに食べろと?」
「…………無理ね」
外に出ようとしていた女性は立ったまま
鉄格子にもたれ掛かり俺の目を散る
「じゃあちょっとした取引をする気はある?」
「取引……ですか?」
急に何を言ってるんだこの人……?
「内容は簡単。この取引を承諾するなら
君が知りたい事、欲しい物を出来る限り
教えてあげるし持ってきてあげる。
代わりにその都度私の質問に答えてもらう。
どう?メリットの方が多いと思うんだけど?」
う~む……この人が言う通り好条件の取引だ。
俺が何かを頼む代わりに質問に答える。
どんな質問をされるのかは分からないけど
上手く利用出来ればここが何処なのかとか
俺が捕まった理由……国王殺害について
詳しい事を聞けるかもだし悪くはないハズ
「その取引、受けさせていただきます」
「賢明な判断ね。因みにこの取引を
受けなかったら君の眼球をくり抜いてたわ」
「ぅえぇ?」
急なサイコ&グロっちぃ発言に変な声が出る
「ど、どの様にやるつもりで……?」
「どの様に?こう……ナイフでグリっと?
あぁ安心して?こんな見た目だけど
今まで何人も手にかけてるから痛みを
最小限にして拷問する事には慣れてるの」
「ヒョエェ」
拷問て言ったよこの人!絶対ヤバい人じゃん!
言い方がプロのそれだもんチクチョウメガ!
せっかく色んな情報を聞き出せそうだったのに
ワンチャン殺される可能性出てきたよ……!
「君が余計な事をしない限り私も自ら
手を出したりはしないからそう怯えないで」
女性はさっきの発言からは想像できない
優しい笑みをこちらに向ける。不覚にも
ちょっっとだけドキッとしてしまった
「……早速ですが、質問とお願いをしても?」
「良いわよ。何?」
話が一段落した所で女性から情報を
聞き出す為に早速取の内容を始める
「質問、貴女の名前を教えてください」
「え?な、名前?私の?」
「何かおかしな事を聞きましたかね?」
当分この人とは長めの付き合いになると思い
名前を聞いてみたのだが予想外の反応をされる
「本来こういう場面ってここが何処だとか
私が何者だとかそういうのを聞くのが
常識だと思うのだけれど……?」
「それも後に聞くつもりですがせっかく
まともに話せる人が来てくれたんですから
名前を聞いておかないと不便かなと」
「随分と肝が座ってるのね」
「痩せ我慢してるだけです」
「まぁいいわ。ブラッド。そう呼んで」
ブラッド?確か血を意味する
英単語だった気がするが……?
「それで?お願いは?」
「目の前のご飯をどんな方法でもいいので
食べさせてくださいお願いします」
地面に頭を擦り付けながらお願いする。
本っ当に空腹が限界なのだ
「当然のお願いね」
ブラッドさんが動こうとしたその時。
誰かの足音が急速に近付いてくる
「ここにいましたか!」
「……なんの用?」
この場に来たのはゴッツイ鎧を着た男。
多分ブラッドさんの仲間だと思う
「主様から隊長を連れてこいと」
「……そ」
一言だけ返事をするとブラッドさんは
小さな溜息を付き独房を出る
「直ぐに戻ってくるから君は
大人しくそこで待ってなさい」
「分かっていますよ」
「行くわよ」
そうしてまた俺は1人きりなる
「なんか機嫌悪そうだったよなぁ……」
気のせいかもだが男が来た瞬間ブラッドさんの
機嫌が悪くなった気がするが気のせいか……?
「……お腹すいたなァ……」
俺の晩御飯はもう少しだけお預けのようだ