1話
「はァ……はァ……はァ……はァ……!」
とある猛暑日。真夜中の森の中を
2人の男が駆け回っていた
「おい小僧!まだ走れるか!?」
「も、もう少しだけ、ならっ!」
一方は質素でボロボロになった服を着用した
筋骨隆々の巨漢。一方は左肩から
血を流しながら走る小柄の男
「もう少しの辛抱だ!そろそろ森を抜けるぞ!」
「は、はい!」
小柄な男は肩に走る激痛に顔を歪めながらも
必死に巨漢の後をついて行く。しばらくすると
巨漢の言う通り森を抜け少し開けた場所に出る
「出れ、た……!」
「橋を渡り切るまで気を抜くな!」
2人の目の前には横に短く縦に長い木製の橋。
その先にはだだっ広い平原が広がっている
や、やった……!この橋を渡ったら
一時期の安全を確保出来る……!
「いたぞー!こっちだ!2人共いるぞ!」
小柄な男が安堵のため息を着いた直後。
2人が抜けた森の方から赤い明かりと
複数の足音がどんどん近付いてくる
「もう追いついてきやがった……!」
「早く行きま……しょ……う……!」
小柄な男は巨漢の後を追い橋に足をかける
「ッ……!めっちゃ揺れる……!」
2人が橋に踏み入ると木が軋む音と共に
グラグラと揺れる。それでも巨漢は
後ろを振り返らず橋を渡っていく。
走る速度は徐々に上がっていき
小柄な男を橋の途中に置き去りにしてしまう
「ま、待ってくだs」
「!」
小柄な男が巨漢に手を伸ばしたその瞬間。
次の床に足を置くとバキッ!と音を
立てながら床が抜けてしまう
「っっぶ……!!?」
そのまま綺麗に落下しそうになるが
すんでのところで木の板を両手で掴む
「はァ……はァ……死ぬかと思った……!」
首から下が足場より下の状態。男は必死に
上がろうとするもその度左肩に激痛が走る
「しっかりしろ!今行く!」
巨漢が事態に気付き引き返すも時すでに遅し。
小柄な男の力は尽き果ててしまう
「あっ…………?」
小柄な男は手に力が入らなくなり両手を離す。
首から上は木の間をすり抜け体は宙に放り出される
死……ぬ?こんな意味のわからない所で……?
俺はただ自室で寝てて……気付いたら……?
「……もう遅いか……」
男は目を瞑り死を覚悟して落下するのだった
……なんでこんな事になったんだろう……?
俺はただ普通に地球で生きてただけなのに……
……あれは1週間近く前の話だ……
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「ただいま~」
俺の名前は坂山終夜。
市内の高校に通う受験を控えた3年生だ。
夢を叶える為に専門学校への進学を目指してる
「お帰り~。もうちょっとでご飯できるよ~」
「は~い!」
靴を脱ぎながらリビングの方から聞こえる
母さんの言葉に気の抜けた返事を
返しながら階段を登り自室に入る
「は~つっかれたァ!」
鞄を優しくベットに放り投げベルトや
ネクタイを乱暴に外し地面にポイ。
制服のままベットにダイビングする
「ふっかふか~!気持ちいい~!」
朝の9時から5時半まで勉強した後のベットは
なんとも気持ちいい。一気に疲れが吹き飛ぶ
「明日は……特に用事無しか」
俺の目指してる学校は機械・電子系専門の学校。
小さい頃からロボットアニメが好きで
絶対無理だとわかってるけど自分の手で
あんな感じのヌルヌル動くロボットを
作ってみたいなと思っている現実を見ない男だ
スマホのカレンダーを見て予定を確認するが
特に予定と言う予定はなし。明日も明日で
いつものように学校に行く事になる
「ふわぁ………眠気が……ヤバい……」
普段はこんな時間に眠くなんてならないが
今日はすんごい眠気に襲われてしまう
「でも……ご飯……」
もうちょいでご飯出来る……けどやばい。
めっっっちゃ眠い……ちょっとだけ……
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「……い…………きさ…………し……!」
「ん……んぅ……?」
気が付くと渋い男性の声が聞こえてくる。
どうやら俺はあのまま眠ってしまった様だ
……渋い声……?あれ……俺の家には
母さんと父さんと俺しかいない……ハズ……
「聞いているのか貴様!」
「!?」
意識がハッキリすると同時に大きな渋い声が
耳を刺激する。ようやく目が冴え
慌てて起き上がると信じられない光景が
俺の目の前に広がっていた
「……は?何処だよ……ここ……?」
目にしたのは鉄で出来た分厚いヘルムと鎧を
着用した人達が俺に向けて槍を突き付ける場面。
そして見た事ない広く豪勢な部屋。白い壁や
天井を主体とし所々金色の模様が施されており
見る限りゴミ一つない綺麗な赤いカーペットが
敷かれ高そうな壺やら絵画が置かれてある
「貴様!何者だ!応えろ!」
「へ……?」
あまりにも唐突過ぎる事に頭が回らない俺は
目の前の人の問に答えずまだ周りを確認する。
どうやら俺は大きなベットに座ってる様だ。
そしてそのベットを囲むように10人近い
鎧を着た人達が俺に槍を突き付けている……と
……なんだこの状況は!?は!?何処だよここ!?
目の前にいる人達は誰!?ガチモンの槍なの!?
「言葉が分からないのか!答えろと言ってる!」
「ヒッ!?」
色んな疑問が頭をよぎっていると丁度俺の前に
立っていた人が槍を伸ばす。
槍は俺の首ギリッギリの所で止まるが
僅かに触れており少しだけ痛い
「名前を、言え!」
「さ、さささ坂山終夜17歳ですぅ!」
現状に困惑しながら震える声で問に答える
「シュウヤだな!?貴様を国家反逆罪及び
国王殺害の容疑者として捕縛する!」
「はぁ!?いやいやいやいやちょっ!?」
今度は本っ当に意味不明な事を言われ
思わず槍を払い除け男に詰め寄り両肩を掴む
「何をする!?」
「待ってくださいよ!なんですかそれ!?
国家反逆罪!?国王殺害!?ふざけんn!?」
両肩を掴んだその時……俺の目には見えた。
俺の両手が真っ赤な血で染まってる事に
「ッッ!?」
え……?血……?だ、誰……の?俺?
いや違うそれならどっからか痛みが来る……
「もういい!捕らえろ!」
「ウグッ!?」
次から次に来る情報に耐えきれず動揺してると
背後から思いっきり地面に叩きつけられる。
手首に縄をキツく結ばれ手が封じられる
「独房に連れていけ!最奥だぞ!」
「ハッ!お任せください!」
「やめっ……!離せ……!」
「暴れるなガキが!」
抵抗するも虚しく連れていかれるのだった