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17.魔法はイメージ



「お前は魔法が使えるようね。でもリーヴァイから直々に修行を受けたこの私に勝てるかしら?」

「リーヴァイの弟子ってことか?」

「ええ。ついでにもう一つ教えておいてあげる」


 挑発するようにくっ、と笑いながらエリザベートは春斗からマリスの方に目を移す。


「神の代行者の専属護衛が私の仕事」

「エリザベート!貴様っ!」


 瞬間的にマリスが激高した。

 飄々としたマリスからは想像できない感情の高ぶりに咲良は驚いてしまう。


「ふふふ、あなたの事だから都合の悪いことは教えなかったのでしょう?」


 いらただしげなマリスを見ながらエリザベートはとても楽しそうに笑った。


「あなたが誰なのか、彼らは知っているの?」

「俺は俺だっ。冒険者のマリス。それが俺だ」

「えっ……二人は知り合いだったの……?」


 サラがぼそりと呟いた。

 驚きの中に猜疑心が見え隠れしている事をみてとったマリスは心の中で舌打ちをする。


「な、なんでだよっ。神の代行者を守るのが仕事なら、なんでこんなトコにいるんだよ」

「さっき言ったわ」


 世界を壊したいのだと。


「神の代行者の意思に従ったって事か?」


 春斗が注意深く探りを入れる。


「いいえ。私は私の意思に従った。こんな世界、壊れてしまえばいい」

「リーヴァイが必死に守ろうとしているのにか?お師匠さんが守ろうとしていものを、弟子のアンタが壊すのか?」

「ええ、そうよ」


 こともなげに言われ、春斗はショックを受けた。

 世界を守る神の代行者の護衛であり、世界を守っているリーヴァイの弟子。

 なぜ彼女がリーヴァイを裏切るのかさっぱりわからない。


「私たちは神官に神の代行者をさらわれた可能性があると聞いたわ」


 咲良は様々な可能性を考えながら訪ねた。

 神の代行者の命をたてに脅されている可能性もその中の一つだ。


「私はその神官、ヴィンス様の部下でもあるの」


 上司の命令に従っただけにしては、彼女の態度が腑に落ちない。

 神の代行者の意思には従っていないと言ったのだから、神官と利害の一致でもあったのだろうか。


「神官に従ったの?」

「私は私の意思に従って行動しているわ」


 胸を張って彼女は言った。

 自らの行動に正当性があるのだと言わんばかりに。


「ヴィンスがサイラスをさらったのか?」


 マリスの問いかけにエリザベートはくだらないと言わんばかりに笑った。


「さぁ。私が見た限りでは、さらったわけではないわね」

「……じゃあ手に手を取って?」


 咲良の問い家系にエリザベートは意外そうな顔で咲良に視線をやる。


「なにそれ、面白いわね。手に手を取って、ね」


 答えはなかったが、あながち間違ってはいないのではないかと咲良は思った。

 神官がさらったわけでもなく、神の代行者がついていった。

 そこで考えられるのは二つ。

 利害の一致か二人の関係性。

 なんにせよ、神の代行者の意思で神官と行方をくらませたというのは間違いないだろう。

 マリスも同じ考えに至ったのか、渋い顔をしている。


「好奇心は満ち足りたかしら、お嬢さん。氷の刃!」


 無数の氷が会話に聞き入っていた春斗に襲い掛かるが、持ち前の運動神経で何とかよけきる。


「あらあら。随分と身の軽い事。でも次はないわ。そこのお嬢さんのように血塗れにして苦痛の海に落としてあげる」

「てめぇっ、よくもやってくれたなっ!」


 春斗とエリザベートがにらみ合う。


「本当よね。久しぶりに頭にきた」


 咲良がぼそりと呟いた。


「咲良さん?」


 サラを手放し、咲良が立ち上がる。

 率先して咲良が戦いに参加するのはこれが初めてかもしれない。

 いつだって咲良は専守防衛のスタンスだった。

 もちろんやられたら相手の意思が折れるまでやり返す、という続きがあるのだが。


「フレイムバレット!」

「氷の盾」


 さっきよりも厚めに設定した氷の壁を小さな火の粒が穴をあける。

 エリザベートの顔が初めて驚きに満ちた。


「馬鹿な……さっきより魔法の力が増している?」

「当たり前だわっ!紬を傷つけておいて、ハルトが許せると思っているの?」


 サラの叫びになるほど、と咲良も頷いた。


(意志の力……思う心の強さが魔法の力に直接つながるっていうのはこういう事なのね)


 リーヴァイの言葉を思い出すと同時に、自分も魔法が使えればと悔しくなる。


(もう少し敵の襲撃が遅かったら、今頃は魔法を使えていたのかな)


 ふとそんな事を考えが頭を過ったが、すぐにそれを捨てる。

 ないものねだりをしている場合ではない。

 手持ちのカードで戦わなくてはいけないのだ。


「短時間にそれほど魔法の力を成長させられるとは……さすがは変革の騎士……。でも、その程度では私は倒せなくてよ」

「春斗、気をつけて!」


 エリザベートの冷ややかな口調に咲良は警告し、不思議に思った春斗だがすぐにただならぬ気配を感じて身構える。


「氷の雨!」


 さっきの攻撃魔法よりもずっと強力なものだとは彼女の雰囲気から分かった。

 だが、咲良は一歩も引くつもりはなかった。

 春斗の前に出ると予備のこんを取り出し、バトンのようにまわして飛んでくる氷の塊を弾き飛ばす。


「くっ……雨とか言いながら横移動の攻撃っておかしくない?」


 さすがに焦りが出てきた。






「あいつ……今度は本気だな」


 黙って戦いを見ていたマリスはサラを見た。


「君たちは、俺に助けて欲しいと言わないんだな」

「咲良先輩が、これは自分たちの戦いだって言っていたの。私もそう思う。目的が違うならこれ以上は求めるべきじゃないって」


 マリスには戦い方を教えてもらった。

 それ以上の事を求めて、何が返せるのだろうか。

 最終的な目的が違うのなら、借りを作るべきではないという咲良の考え方にサラは賛成だった。

 重大な決断をするさいに借りを返せと言われても困るし、必要以上の情や恩を交わして別れがたくなっても困る。


「なるほど。随分としっかりしているね。咲良さんも、君たちも」


 口先三寸で丸め込み、恩を売りまくってこちらのいいように動かせたらと考えていたマリスは苦笑するしかないが、付け入る隙を与えない咲良の強さに感心していた。


「……り、ん……サラ……せんぱいは……」


 紬が気が付いたようだが、いまだにつらそうに息をしている。


「先輩、大丈夫?今、あの露出狂のおばさんと戦闘中」


 首を動かし、サラが指さした方向を見る。

 咲良がエリザベートの攻撃を崑で弾き、春斗が合間を縫って魔法で攻撃をしている。

 二人が危険な目にあっているのにじっとしてはいられない。


「私も……」


 痛む体を叱咤しながら起こし、ふらふらと立ち上がる。


「ちょっと紬、今動いたら傷がっ」

「でも二人が……助けないと……」


 ここまできても助けを求めない少女たちの頑固さに、マリスは舌を巻いていた。

 今、春斗と咲良は戦っている。

 マリスは二人が戦いに集中できるように二人を守るのが役目だ。

 へたに動いて紬に止めを刺されたら目も当てられない。

 しかも咲良と春斗の隙をついて時折氷の矢が飛んでくるのでうかつに動けない。


「うわぁぁぁっ!」


 咲良の悲鳴に戦い人目を戻すと、ちょうと咲良が吹っ飛ばされるところだった。

 勢いを殺すために地面に転がった咲良はマリスたちの前で勢いに任せて立ち上がった。


「くっ……」


 起き上がったのはいいが、想像以上のダメージに崑にすがるようにして膝をついた。


「咲良先輩っ!」

「咲良さん!」


 マリスが咲良に声をかけながら近づこうとしたが、顔だけ振り向いた咲良に睨まれて足を止めた。


「頑固だな……」


 手は借りないというはっきりとした意思にマリスは苦笑する。


「心配かけてゴメンっ。魔法が使えたら守れたのに」

「助けるために、魔法が欲しいと願うのかい?」

「魔法はもらった。でも使い方がわからない!」


 マリスは彼女たちの頑固さに負けを認めた。

 変革の騎士である彼女たちを味方として認めたのだ。

 恩に着せて変革の騎士を手駒にする考えを放棄することにした。


「では使い方を教わるといい」


 マリスは左の人差し指にはめてあった指輪を抜いて咲良に近づくと、咲良の手をとった。


「えっ?」


 なぜか左の薬指にはめられた指輪に咲良の思考が停止する。


「ちょっ、こんな時に何やってんのよーっ」


 サラの突っ込みを無視してマリスは咲良の手を取ったまま目を閉じて魔力を指輪に送る。

 指輪にはめ込まれた緑色の石が光り、その光に咲良は包み込まれた。


『咲良だな?』

「えっ、リーヴァイ?なんで?」

『指輪を通して話をしている。それよりもお前の中に力があることがわかるか?今までとは違う力……』

「わからないよ……」

「落ち着いて、咲良。俺の力が君を包み込んでいるのは分かる?」


 マリスが咲良の耳元でささやく。


「わかる……」


 暖かくて優しい、春の日差しのような感覚。


「それとは違う力が君の中にある。目を閉じて、感じて」

『咲良、魔法の力はもう一つの血のめぐりだと思え。血は心臓を。魔法の力は心を通る』

「心?」

『想像は創造に通ずる。魔量を貯める器を想像し、巡らせよ』


 春斗から借りた漫画の主人公たちが修行するシーンがいくつも思い浮かんだ。

 伊達に春斗のバトル漫画を読み漁ってはいない。

 体内で魔力を循環させるというイメージはすぐにできた。

 ふいに体の中が熱くなった。

 熱がゆっくりと体の中を巡っていく。


「ああ……わかる。力が形になって、イメージが、言葉に変わっていく……」


(中二病だなんてからかってゴメン、春斗)


『それがお前の魔法だ』


 言霊みたいなものだと言っていた春斗。

 想いを口にする、それは魔力というあやふやなものを言葉にのせて形にするのと同じだ。

 目を開けると、守りに徹していた咲良という盾をなくした春斗がエリザベートの攻撃をよけている姿があった。

 エリザベートはいたぶる気がまんまんなようで、致命傷にならないようにうまく攻撃している。

 徐々に体力を削られ、避けられなくなった体を容赦なく凍てついた氷のつぶてがかすめていく。


「さぁ、踊りの時間はおしまい。永遠に眠りなさい」


 高らかにエリザベートが宣言する。


(私がみんなを守らなきゃ)


 助けたいと強く願った。

 守りたいと強く望んだ。

 自然と体が動いて右手を前に突き出し、手のひらを春斗の方に向ける。


「思い通りになると思ったら大間違いなんだから」


 内側からあふれ出してくる力を言葉に変え、エリザベートが声を上げるのと同時に咲良も力を形にした。


「鉄槌の雷!」

「大地の盾!」


 地面がせりあがり、春斗の前に土壁が出現して雷を遮断した。

 雷がぶつかった時にボヨヨ~ンとコミカルな音がしたのは気のせいだと思いたい。


(……なぜうねっているの?)


 巨大なこんにゃくを連想させるそれは望みどおりに春斗を守ったが、ちょっとだけ咲良を複雑な気持ちにさせた。






「マリス、私も戦いたい。守りたい。魔法が欲しい」


 咲良の魔法にあっけにとられていたマリスだが、サラの声に我に返った。


「やり方を教えて」


 まっすぐな眼差しにはサラの決意が込められていた。


「いいだろう」

「やり方は咲良先輩を見ていたからなんとなくわかるけど……」


 リーヴァイの声は咲良だけでなくサラにも聞こえていたようだ。


「魔力そのものがわからなければ、やりようがないの。だから教えて」


 マリスはサラの手を取った。


「目を閉じて、俺の熱を感じて」


 つないだ手からマリスのぬくもりを感じる。


「今から魔力を流すよ。どうとらえるかは君自身だけど、たいていは熱とか違和感を感じる人が多い」


 マリスの手から感じた熱がゆっくりと腕に伝わっていく。

 その熱は腕からさらに胸、腹、頭、腰、そして足へと広がっていった。


「君は魔法で何をしたいのかな?」


 マリスの問いかけにサラは答えた。


「まず癒す」


 たったそれだけ。

 その言葉を口にしただけで胸の奥が熱く、何かが強く渦巻き始めた。

 力が出たいとうごめいているのを感じた。


(待ってよ、いますぐ出してあげるから)


 力が形を成していく。

 サラの望むモノへと変質していき、サラはそれに名前を付けた。


「癒しバブル発動!」


 体の中から抜け出していった力は水へと変わり、紬を包み込んだ。

 みるみる紬の傷が治っていく。


「からの~浄化っ!」

「えっ?!」


 パン、と水が弾け飛ぶと、血で汚れていた紬は綺麗になっていた。


「すごい……」


 初めての魔法を使いこなし、しかも二重掛けという初心者にあるまじき高等魔法にマリスはあっけにとられた。


(これが変革の騎士というわけか。なんとも末恐ろしい……)


 何も知らない状態でコレならば、修行して経験値をつんだらどんな強者に育つのだろうか。

 ぶるりと体が震えたのは歓喜か恐怖か。


「ツムギ!」

「う……ん……サラちゃん、何があったの?」

「私をかばってけがをしたの。でも治したので大丈夫なはず!」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「起き上がれるか?」

「はい。気力体力、充実しています」

「は?」


 間抜けな声が漏れたのもしょうがない。

 何やら燃えている紬の迫力にマリスは毒気を抜かれていた。


「サラちゃん」

「は、はいっ!」

「やられたらやり返すが私のモットーです」


 しっかりと自分の足で立ち上がった紬は声を高らかに力ある言葉を口にした。


「ウインドカッター!」


 定番中の定番である風の刃をエリザベートに向けて放った。


「氷の盾!」


 エリザベートはこともなげに氷の盾を前方に展開する。

 ガッ、ガッ、と氷の削れる音はするが、フレイムバレットと違って貫通することはなかった。

 エリザベートの口元がしてやったりといったように歪む。


「ふふ、まだまだ甘いのではなくて?」


 上から目線のエリザベートに紬は勝利宣言する。


「速やかに、地に伏しなさい」

「なにをい……きゃあぁぁぁぁっ」


 エリザベートの背なかから血しぶきがあがった。


「こっちも、か……」


 全てを見ていたマリスは驚いていた。

 紬は一度に三つの風の刃を放ち、そのうちの一つをブーメランのように軌道を変えてエリザベートの背中を狙ったのだ。

 軌道をいじることで威力は弱まるが、がら空きの背中を狙うには十分な威力だ。


「くっ……よくもやってくれたわね。この借りは必ずかえすわ、覚えておきなさい」


 言いたいことだけ言うと、エリザベートはさっさと退却した。


「敗走者の定番な口上ですね」


 フン、と小さく呟く紬。


「お、お嬢様って怒らせたら怖いんだ……」


 おっとりとした紬の意外と好戦的な一面にサラは戦慄した。


「それにしてもどうして魔法が使えるの?」

「サラちゃんが私に魔法をかけてくれたでしょ。それで魔法は私の中にもあるんだって確信して、三人が使えるんだから私にも使えると思ったの。魔法ならゲームでよく使っていたからイメージはできているし」


 ドヤ顔をする紬を見ながらマリスは深々とため息をついた。


「だからって普通はあんな魔法は使えないんだけどね……」


 変革の騎士と呼ばれる彼らの異常性に頭を抱えたくなった。






 エリザベートが退却し、安心して力が抜けたのか春斗の体が傾いた。


「よくやったね、春斗」


 咲良の優しい声に春斗の口角が上がる。

 ゆっくりと春斗の体を地面の横たえると、サラと紬がすっ飛んできた。


「咲良さん、大丈夫ですか?」

「ありがとう、紬ちゃん。怪我は誰が治してくれたの?」

「サラちゃんです。とても素晴らしい魔法でした」


 うっとりしながら紬が話すのを見ながらサラは若干引き気味だ。

 さきほどまでの般若はどこへいったのだろうか。


「サラちゃんも、ケガはない?」

「わ、私は守られていたから大丈夫ですっ。それよりハルトは?」

「安心して力が抜けたってところね。大したケガはないから大丈夫」

「お~っ、なんかどっと疲れた……」


 自分は元気だと言わんばかりに春斗は右腕を空に突き上げる。


「今、治す!癒しバブル!」


 水の膜につつみこまれた春斗は気持ちよさそうに目を閉じる。

 傷が治ると水は自然に消えた。


「あれ?浄化は?」

「サクラ先輩~っ、私、頑張りましたーっ!」


 マリスの疑問を無視してサラは咲良に抱き着く。

 薄汚れたままの春斗はゆっくりと体を起こし、大きく伸びをする。


「よく頑張ったね」

「ありがとうございます。マリスが後ろで守ってくれたから、安心して戦えた」

「そっか。ある意味、今のが初陣ともいえるか」


 対人戦は初めてだ。


「みんな魔法使いになったんだね。でも使う魔法はバラバラみたいだけど」

「俺は火で、サラちゃんは水。風は紬ちゃんで、咲良は……」


 春斗が言葉を濁した。

 サラと紬も何か言いたげに咲良を見ている。


「咲良さんは、地属性だね」


 マリスが春斗の言いたかったことを口にした。


「あれが咲良さんの魔法なんですね」


 たて2m、横1mの土の壁なのだが、色だけ見るとこんにゃくに見える。

 こころなしか揺れているようにもみえて、由緒正しき妖怪ぬりかべとはこんな感じじゃないだろうか。


「壁というよりはこんにゃくだよな」

「弾力がある時点でおかしいよね」


 春斗とサラの率直な感想に、咲良は寂しそうにぬりかべから視線をそらした。


「手と足をつけたら妖怪だよな」

「私もそう思います……」


 すまなそうに紬が春斗に賛同する。


「でもすごいよ、咲良のおかげで助かった」


 とりなすように慌てて春斗が話をかえた。


「ドウイタシマシテ」


 想像していたのと何かが違う大地の盾。

 自分の想像力の結晶がコレだと思うと、何かむなしくなってくる。

 それでも大地の盾を見ながら楽し気に話をしている三人を見ていると、心が和んでいく。

 誰も死なず、欠けず、こうして笑顔を浮かべている姿がとても尊い。


「マリスも、ありがとね」


 小さく首を振りながら、マリスは笑顔を浮かべた。

 そんなマリスに咲良は直球を投げつけた。


「それで、エリザベートが言っていた都合の悪い事って何?」


 マリスの笑みが固まった。


「顔見知りどころか、けっこう親しい感じがしたけど。隠していることを全部話してもらいましょうか」

「……はあぁぁぁ。失敗したな。アレと君たちを接触させるべきじゃなかった」

「アレって……」

「休憩を兼ねて、教えてあげるよ」


 嫌そうにマリスは観念した。

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