④
次の日
「ではこれから校外演習前の実力テストを始めます。
実力テストといっても実力にあった演習先を決めるだけで勝負であったり合否があるものではありません。
したがって、くれぐれも無理をしないこと。結界を張ってはいますが怪我などしたら元も子もありませんからね。
今年は人数や実力も加味して3年生にも手伝っていただきます。先生や3年生のみなさんと1対1で勝負してもらい、1年生のみなさんの実力を見させていただきます。
何度も言いますが、これは勝負や合否があるものではありません。力が入るのもわかりますが怪我だけないように気をつけてください。」
午前の早い時間に演習場に集められたレイ達は早速実力テストの説明を受けている最中だ。
「なあエリス。なんか人多くない?3年生がいるのはわかるんだけどそれでも多い気がする。」
「この実力テストは1年生は2組に分かれるみたい。精霊をすでに使役しているBクラス以上とまだ使役していないか戦闘に自信がないCクラス以下だね。ぼくも戦闘にはそんなに自信があるわけじゃないんだけど大丈夫かなぁ?」
ちなみに今日は朝から事件が起きた。
実力テストのために着替えようと男子更衣室に向かうとすでにエリスが着替えており上半身裸のあられもない姿になっていたのだ。
レイはその動体視力ですぐに目を逸らすも、エリスはおはよう〜と躊躇いなく近づいてきて・・・・・。
ということがあったのだが・・・エリスは男なのである。たしかに少年とも取れる中性的な容姿をしているが、そこらへんの女子の何倍も可愛らしい。そんなエリスが無防備に上半身裸で手を振りながら動き回るものだから周りにいた男子は全員顔を真っ赤にして鼻血を出して倒れるものもいた。
そんなこんなで着替え終わり列を作って並んでいるわけだが
「なるほどな。じゃあSクラスの生徒もいるのか。どんなレベルなのか少し楽しみだな。」
「そ、そうだね。Sクラスの人たちは全員すごい能力や精霊を使役しているらしいから楽しみだよ。見せてくれるかはわからないけどね。」
「そういうもんか。」
2人は喋りながら細かいルールを聞いていると
「それでは、クラスごとに集まっていただきます。3年生のSクラスは1年生のSクラスにAクラスとBクラスもそれぞれのクラスで集まってください。
あっ、あと1-Aクラスのレイさんは少しお話がありますので私の所にお願いします。」
「げっ…」
「レイくんのことだよね。なにかしちゃったの?」
「いや、心当たりがないわけではないんだが…あの先生もなんか見覚えあるな…。」
「全くもう。あんまり先生に迷惑かけちゃダメだからね!
あの先生は1年Sクラス担任のクレア・アリエス先生。あのエミリア理事長のパーティメンバーだよ!めちゃくちゃ有名人なんだけど知らないの??」
頬を膨らませながら前に立つ赤髪の女性について教えてくれるエリス。とても可愛い。
「あー。思い出した思い出した。ありがとう。少し顔馴染みでね。多分久々に再会したから少し話したいんじゃないのかな?」
「そうなんだ!すごいねレイくんは!あんなに有名な人と知り合いなんて!」
「そういうことだから悪いなエリス。少し時間かかるかもしれないからテスト中は一旦別行動だな。」
「う、うん。寂しいけど仕方ないね。一緒に演習できるように頑張ってくるよ!」
ふんす!と気合をいれるエリスはそのままトテトテとAクラスが集まる場所にかけていった。
「さて、何させられるんだ?」
エリスの前ではとぼけていたが、レイにとってクレアは古い昔馴染みだ。覚えていないわけがない。
何をさせられるかは検討つかずではあるがエミリアより無理難題を言われることはないだろうとレイもその足のままクレアの元へ向かう。
「お久しぶりですね。レイさん。また会えるのを楽しみにしておりました。とても凛々しいお顔に成長されてて少し興奮…げふんげふん!とても嬉しいです!
お話はエミリアさんから聞いています。
入学したての現時点であなたのテストをみなさんと同じように行うわけにはいかないので少し別の場所で受けてもらいますね。」
「クレアさんも元気そうでなによりです。まさかここにいるとは思わなかったですが…。少し顔が赤くないですか?体調でも悪いなら無理するのは良くないですよ?」
少し顔を赤くしているクレアの顔を覗き込むをクレアはすぐに一歩引いて
「だ、大丈夫ですよ!ご心配ありがとうございます。
ほ、ほら私炎属性じゃないですか!少し体温が高くなっちゃうんですよね!!」
少し早口で捲し立てるクレアにレイはなにかを感じとり、【そういうこと】にしておく。
(クレアさんクラスの精霊使いが自分の属性で体温が変わるような話なんて聞いたことないけど。まぁいいか。怖いし。)
「そ、それではお伝えしたとおり少し場所を移しましょう。」
そういうとクレアは少し早足で歩き出す。
「ってことはクレアさんが俺の相手をしてくれるんですか?」
「いいえ。レイさんのお相手はエミリアさんから指定されています。私ではありません。今から向かう演習場ですでに待ってもらっていますので少し早足でもいいですか?」
「あぁ、なるほど。」
口には出さなかったが、この後の展開が読めたレイはそのままクレアに連れられ今の場所をあとにする。