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王立アストルム学園
将来有望な精霊使いを育成するために各国から精霊使いが集まるエリート学園。
その入学の門は狭くたとえ貴族であっても入学するのはなかなか難しい。
入学できた時点で将来が約束されたようなものではあるが、この学園に入学してくるような逸材はそこでとどまらない。
常に高みを目指して、同年代の精霊使いの模範になるような生徒になれるように努力を重ねていく。
王立アストルム学園が世界的に有名なのも全生徒に無限の可能性があり、それを指導する教師陣もまた優秀ではあるが…
『精霊真祭』
各国の代表校が集まるこの全国大会で4連覇という史上最多タイの記録を現在も継続中であるからだ。
この記録を完全に打ち破り更なる記録を積み重ねていくには生徒全員の血の滲むような努力が必要になる。
その先に皆の目指すべき最強の精霊使いとしての将来が待っている。
・・・・・・・・・などと喋り手、聞き手によっては寝てしまってもおかしくはない量の演説ではあるものの、誰1人として目を閉じずある一点をじっと見つめている。いや…1人を除いて…。
王立アストルム学園生徒会長 アカリ・レイリーク。
1年の時からこの学園の代表として精霊真祭4連覇の立役者になっている。容姿端麗、文武両道。将来の王国騎士団長候補としてこの国の学生で知らないものはおらず、生徒会長に憧れて入学してきたものも多い。
そんな彼女だからこその説得力で演説を行い、今この場にいる誰もが彼女に釘付けになっている。
「この辺りで、私からの挨拶は以上とさせていただきます。入学おめでとう!」
その言葉で締めくくり、会場は拍手に包まれる。
まさか入学式で泣く者もいるとは。卒業式が思いやられるものである。
「続いて、学園理事長エミリア・ウォーターズより挨拶です。」
司会に促され、気怠そうにエミリアが立ち上がる。
「えー…諸君。入学おめでとう。今年、ここアストルム学園は精霊真祭の5連覇を達成し誰もが記憶に残る年となるだろう。
君たちは入学したてではあるが、この学園は実力主義だ。
例え1年生だからといって実力のある者を放ったりはしない。皆も知っている通りそこにいるアカリ君も1年生の時からこの学園の一員としてここまで戦ってきている。全員で5連覇を勝ち取り栄光を掴もう!!」
そういうと周りからは大きな拍手がおこり、エミリアは照れ臭そう壇上を後にする。
かく言うエミリア本人も現役の冒険者であり、あの雷龍討伐のメンバーの1人ということで世界的にかなりの有名人だ。
かなりクールでここぞいうときにカッコ良さを見せる彼女はファンも多いが、彼女本人はあがり症のため今もかなり無理していることは誰も知らない。
入学式終了後、各部活、サークルからの盛大な歓迎を振り切って全員が自分のクラスへと向かう。
「ここか…」
と、この学園入学者のなかでは珍しく入学式を退屈に感じていた。レイも自分のクラスへと辿り着く。
【1-A】
今回レイが振り分けられたクラスで、クラスメイトは30人弱ときいている。
王立アストルム学園のクラスは各学年7クラスありFからAクラス、また特別クラスとしてSクラスが存在する。
基本的に入学試験の成績、または各学年の年度末に行われる試験によって次学年のクラスが決まる仕組みとなっている。
今回レイは試験を受けておらず、エミリアの独断でAクラスへ編成されている。
この学園のAクラスはかなり優秀な部類なのだが、そのクラスをも凌駕するのがSクラスである。
Aクラスまでは成績順で振り分けをされるのだが、Sクラスは基準以上の実力や能力を持っていることが前提で極端な話年によってはSクラス生徒が0人の年があっても不思議ではない。
現状3年のSクラスは11人。2年は8人。そして今年の1年が16人と考えると今年は化け物揃いなのである。
エミリアがあのような挨拶をするのも今年の1年生にかける期待が大きい。
すでに冒険者経験もある生徒も多く、特にリリィ・スカーレットとリュウキ・アストラの2名は世界ランカーであるほどだ。
いくら精霊真祭の前年度メンバーでも、うかうかしてられるような状況ではなくすでに半年後のメンバー選考に向けて早くも牽制が始まっている。
レイが教室に入ると、すでに大半の生徒は集まっており小規模ながらグループもできつつあった。
「あれ…?出遅れた…???」