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「この辺りから保護指定外区域に入る。並の冒険者では対処できないような魔物も出てくるから気をつけろ。」




「近道とかいってわざわざ保護指定外区域横断するからだろ。これで討伐される魔物のほうが可哀想なんだけど。」




「いやいやいやいや、本当に危ないんですからねここ!あんまり気を抜いていると本当に怪我してしまいますよ!」



「クレアさんはクレアさんで気を張りすぎです。ここの魔物程度にエミリアが苦戦することもないくらいあ クレアさんも知っているでしょう?」




「エミリアさんじゃなくて私が危ないんです!」





時刻は昼過ぎ。

一行は通常の道程ではなく、集合ポイントへ一直線で向かうことのできる魔の森を躊躇いなく直進していた。




通常、人が住む街やそれに通ずる道は魔物が入ってこられないように結界が施されているが、結界を張るにもコストがかかる。

したがってこの世界は結界内で安全が保証されている区域とそうでない魔物が存在する区域で分かれており、その安全な区域のことを保護指定区域、そうでない区域を保護指定外区域と呼ばれている。



ただし、たとえ保護指定区域だったとしても近くに魔物が存在していたり、近くが魔物の縄張りだったりすると安全確保のために定期的な魔物討伐が必要になる。




こういった魔物討伐を生業としているのが冒険者である。




魔物は精霊と同様にランク分けされておりそのランクによって討伐報奨金が出る。

高ランクであればあるほど金額は上がっていくがその分危険も付き纏う。ハイリスクハイリターンの極みの職業である。



そして現在レイ達が歩いている魔の森は出現するとされている魔物が比較的強いことで有名で高ランクの冒険者パーティーでもわざわざ近道のために通るような場所ではない。





「別にお前だってここの魔物に遅れを取るようなことはないだろ?」




「適切な状況判断をしてくださいと言っているんです!

あなた方と違って遅れをとることはなくてもそれなりに出力あげて対処しなきゃいけないんです!

本番前に必要の無い戦闘を避けてくださいと言っているんです!!!!」




「そんなことないと思いますけどね。確かにここはそこそこの魔物も出てきますけど、それでもそこそこ止まりです。」




「それっぽい理屈言ってるだけでなんでここまで言うかわかってるよ。クレアは蛇系の魔物が大の苦手なんだ。ここはバジリスクが多いからな。

正論を並べてるだけで心の内は身勝手の塊だろ。」





「ぎくっ……」




「クレアは外面だけはいいからな。内面まあまあ終わってるぞ。

なんせ小さい頃のお前に興ふ…「あーあーあーあー!!」…なんだ?」





「わかりました!わかりましたよ!文句言わずに進みます!進めばいいんですよね!」




それだけ言うとクレアは1人でどんどん奥に進んでいく。



「クレアさんどうしたんだ?」



「世の中なんでも知ってればいいって分けじゃないのさ。」




2人も逸れないようにすぐさま後に続いていく。










「アクアリウス!ハイドロエクスプロージョン!」



ドオォォォォオオオオオオオン!!!!!!



至る所から爆発音が聞こえる魔の森。



水の大精霊アクアリウスを使役し、だれも超えることのできない適応率100から連続して繰り出される水素爆発はエミリアが無限の水源と言われる所以だ。




「俺たち出番ないですね。」



「1匹も漏れがないのがすごいですね。あれだけ大きな術を行使してるのにも関わらず物凄い精度です。」




念のためレイはミカエルによる防御結界でクレアとレイ自身を囲っているが、保険が保険のまま終わりそうな勢いである。




「このペースなら、今日中に合流地点の街とは言わなくても野営にはならなくて済みそうですね。」



「そのための近道ですからね。天下の理事長自ら前にでて戦ってるのを見ると色々たまってんだと思いますよ。俺が知ってるエミリアはこっちだからいっそ懐かしさを感じます。」



「鈍った身体を元に戻す意味でもこのルートはある意味正解だったのかもしれません。

私も魔の森でなければ前に出て身体を動かしたかったのですが。」



「今回のクレアさんの1番の役割はエンシェントドラゴンの封印解除です。戦闘面は俺とエミリアに任せてくれたら大丈夫ですよ。」



「もう1人のメンバーも気になるところですしね。お言葉に甘えて私は自分の仕事に集中したいと思います。」




(正直、エンシェントドラゴン程度の討伐であればエミリアだけでも十分なはず。わざわざパーティー編成をしてまで準備をしてるってことはなにか腑に落ちないことでもあるのか?)




今回のクエストはレイにとってすんなり受け入れられるものではなかった。

レイが考えているとおり古龍エンシェントドラゴンは強大な魔物で暴れどころが悪ければ1国が滅びかねない災厄だ。

それでもエミリアという冒険者の中でも『ランカー』、所謂世界ランキングにも数えられる冒険者の最高格が負けるような相手ではない。

さらにエミリア自身、昔から足手纏いになるくらいならソロでいいという考えの持ち主のため、レイやクレアに対して今更そのようなことは思わないだろうが、自分1人で達成できるクエストにわざわざ他の人物を巻き込んだりしないだろう。



それすなわちなにか裏がある。



そう踏んでいるレイは今回のクエストの黒幕について様々思考を巡らせるが正解には辿り着かない。



(わからないことをいつまでも考えていても時間の無駄か。

そんなこと考えるくらいならエリスとウンディーネにつける稽古のメニューでも考えた方が有意義だな。)





レイは演習時に決まってしまったピエルとの戦いに思考を切り替える。

正直勝負はついているようなもののため、レイの中では勝ち負けではなく、どのように勝つか。エリスを育てられるかに考えを寄せているのだった。


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